【編集部より】
読書の秋ですね。本を読むのにぴったりな季節、「何かオススメはないかな~」と探している人もいるのではないでしょうか。
そこで、本企画では、学者・実務家などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「読書の秋の課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載します・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、大野修平先生(公認会計士・税理士)に課題図書をお薦めいただきました!
職業会計人や、それを目指す皆さんは、日頃から仕事に必要な様々な書籍を読んでいらっしゃると思います。
暑さが落ち着き過ごしやすくなる秋は、集中力も高まり読書にも適した季節ですから、必要に迫られた読書以外にも、様々な読書を楽しみたいですね。
今回は「視野を広げる読書」という企画ですので、みなさんの仕事の幅を広げ、品質を高めるための本をご紹介したいと思います。
さて、なにか新しい分野を学ぼうとするときに、いきなり本格的な書籍を手に取ることはおすすめしません。
まずは入門書などで全体像を把握し、それから徐々に本格的な書籍に取り組んだほうが理解しやすいでしょうし、なにより途中で挫けずにすみますよね。
馴染みやすい、わかりやすい、という観点で作られた書籍はたくさんありますが、マンガという表現手法はその点で頭一つ抜き出ているのではないでしょうか。
ですので、今回は「マンガで学べる」というのを共通軸として「クリティカル・シンキング」「経営戦略」という少し難解だけれども、仕事に有用な2つの分野の良書をご紹介します。
「マンガで学べる」といっても、内容は本格的で、今後さらに深く学ぶ際の基礎固めに適したものを厳選しました。
オススメ書籍①『クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法』(道田 泰司・宮元 博章 (著)・秋月りす (イラスト)、北大路書房)
まず紹介したいのが、秋月りすさんの『OL進化論』を題材にクリティカル・シンキングについて学ぶこちらの書籍です。
クリティカル・シンキングとは、ものごとをきちんと考え判断する思考法のことですが、「きちんと考える」ということをいざやってみようとするととても難しいですよね。
どんなことも、そのやり方を知らなければ難しく感じるものですが、それはクリティカル・シンキングでも同じだと思います。
著者たちが「クリティカル思考は技術だ」というように、やみくもに考えるのではなく、先人たちの教えを学びながら技術を身につけることで「きちんと考える」手がかりを得ることができます。
題材となっているのは「OL進化論」で実際に掲載されていた四コママンガなので、その楽しさは折り紙付きですし、それをクリティカル・シンキングで読み解くことで、きちんと考える技術が自然と身につく構成になっています。
オススメ書籍②『マンガ 経営戦略全史〔新装合本版〕』(三谷 宏治(著)・星井博文(シナリオ)・飛高 翔(画)、日経BP 日本経済新聞出版)
経営学というのは、公認会計士試験では選択科目の扱いですし、税理士試験ではそもそも科目自体が存在しません。
つまり、職業会計人の全員がそれを体系的に学んだことがあるわけではないのが実情です。
それにも関わらず社会一般には、職業会計人は経営学に詳しいと思われていて、実際にそのような相談も数多く受けます。
また、職業会計人でなくともビジネスマンであれば、どの職能においてもある程度の経営学的な知識が要求され、職位が上がるほどその重要度が高まります。
とはいえ、経営学というのは長い年月の間に様々に発展し、様々な立場・歴史的背景から様々な学説・学派が生まれ、非常に複雑になってしまっています。
本書ではその長い歴史を「ポジションニング派」と「ケイパビリティ派」という観点から整理した上で、現代でも使われている経営学の理論やフレームワークがどのような文脈で生み出されたのかが分かりやすく解説されています。
理論やフレームワークが生み出された背景を知ることで、それらをどの様に用いて現実世界の問題を解決すべきかも自然とわかるようになっています。
なお、本書は「経営戦略全史」という同じタイトルの書籍をマンガにしたものです。
マンガにすることによって、経営学の偉人たちの苦悩とひらめきがありありと感じられ、読み物としても完成度が高いです。
同シリーズで「マンガ ビジネスモデル全史〔新装合本版〕」というビジネスモデルにフォーカスした本もあり、こちらもおすすめです。
知識を深堀りできるマンガ
以上、視野を広げるための書籍について「マンガで学べる」を軸にして2冊ご紹介いたしました。
「マンガで分かりやすく」を謳った入門書はたくさんありますが、ここで挙げた2冊に共通するのは「マンガであっても本格的」ということです。
マンガで馴染みやすく、分かりやすくはなっていますが、内容は決して稚拙ではなく、これから更にその分野を深掘りしていくのに十分なクオリティになっています。
読書の秋、ぜひ手にとってみていただきたいと思います。
<執筆者紹介>
大野修平(おおの・しゅうへい)
公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験がある。また、スタートアップ企業の育成・支援にも力を入れており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。
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