【編集部より】
夏休み明けから秋にかけてのこの季節、公認会計士試験の受験に挑戦しようと考える高校生・学生も多いのではないでしょうか。
気合十分な今こそ知っておきたい、スタートの段階で大切にしておきたい姿勢とは?
そこで、CPA会計学院を運営する国見健介先生(CPAエクセレントパートナーズ・公認会計士)にお話を伺いました。
前編は、受験勉強における「はじめの心構え」についてです。
‟はじめて”のことに挑戦するとき
―公認会計士受験のスタートラインに立つ高校生・学生が、はじめに大切にすべきことは何でしょうか。
国見先生 全く新しいチャレンジが始まるので、まずは「先人のアドバイスをきちんと聞くこと」ですね。
たとえば、はじめて富士山に登るときには、経験者に一通りアドバイスを聞いたほうがいいですよね。
公認会計士の受験勉強であっても、それは同じです。
CPA会計学院の場合でしたら、最初の入学ガイダンスや学習ガイダンスで詳しくお話をしているので、まずはそういったものからしっかりと情報を得て、それに適応して、「逆算思考」で勉強することが非常に大事です。
―具体的なポイントはありますか。
国見先生 公認会計士試験は膨大な範囲から問題が出される一発勝負の試験です。かつ、「専門家として活躍できる人」を合格させたい試験でもあります。
そうすると、表面上、専門知識をすべて覚えましたという人ではなくて、「理屈を理解している人」を合格できるようにしたいのです。
その上でまず大事になるのが、「ペースを守る」ということですね。たとえば、フルマラソンの途中で100m走のようなダッシュを入れてしまったら、後で息切れが起きてしまいます。先頭集団から遅れたときに後から追いつくのは大変ですよね。
専門学校ごとに標準的なカリキュラムが提示されているので、その「カリキュラムのペースを絶対に守る」ことですね。
講義は勉強全体の1~2割、復習までが1セット
―予定通りに授業を受けるということでしょうか。
国見先生 「カリキュラムのペースを守る」というと、「授業だけ受けてればいい」と誤解してしまう人が結構います。
しかし、受講するコースによっても授業回数は違いますが、「講義を見ること」は、勉強全体の1~2割でしかありません。
「講義を受けて、復習するまで」が1セットということを踏まえて、カリキュラムのペースを守るようにしましょう。
―ペースを守るときには何を大切にするとよいですか。
国見先生 「理解」と「反復」。この2要素をしっかりイメージすることが大切です。
「理解」とは1つひとつについて「なぜ」を言えることですね。
たとえば、新種のウイルスが出てきたときに表面上の知識しかないと「それは医学書に載っていないのでわかりません」という医者になってしまい、専門家としての対応力を発揮できません。
公認会計士も、専門家として、理屈をしっかり理解することが大事です。
「理解する」ということをあいまいに捉えている人も多いですが、書籍『一生モノの「学ぶ力」を身につける』でも詳しく説明しているので、できるだけ具体的にイメージをして勉強していただきたいと思います。
もう一つは「反復」ですね。たとえば自転車の乗り方でも、「乗り方の理屈がわかった」というのと、「いつでもスラスラ乗れる」というのは違います。何十回も練習をするからこそ、自分の体に習得できます。
勉強でも、理解ができた後に、本試験までに何十回と反復をしないといけません。
―復習の目安はありますか。
国見先生 授業を受けたら「最初の1ヵ月間で3回」を1つの目安にするといいでしょう。1回目は、授業のすぐ後、当日~翌日に、2回目は1週間後、3回目は1ヵ月後といったイメージです。
これ以降は、CPA会計学院の場合であればテストが頻繁にあるので、それに向けて復習すれば、おのずと本試験までに20回、30回と反復できるようになっています。
本試験は初めて見る問題で点数が取れるかどうかなので、その疑似体験としてテストがあります。テストで点数が取れていれば学習は順調ですし、取れていなければ何かを変えなければいけません。
その際には、「理解が弱いのか」、「暗記が弱いのか」、「単なるケアレスミスなのか」という3つの視点から考えていくとよいでしょう。
結果が出ない人の典型例
―逆に、合格しない人のパターンというのはありますか。
国見先生 まず「ペースから遅れる人」です。マラソンで例えると、最初の5㎞は順調でも途中の5㎞をサボると巻き返すことが厳しくなるのと一緒です。
次に、講義だけ受けていて、「復習を全然しない人」です。その典型例としては、答練を受けなくなります。
そして、答練を受けていても「点数が悪い」と勉強を続けることが厳しくなってきますね。
―講義もカリキュラムどおり受けて、復習もして頑張っているけど結果が出ない人はどうすればよいでしょうか。
国見先生 そういう人は、根本的に「理解」が全然足りてないことが多いです。
ひたすら反復して覚えているだけになっていて、解いたことのある問題は対応できるかもしれないけど、少しひねられたら解けなくなります。答練でも点数が伸びません。
いたって当たり前のことですけれども、ペースを守って、理解と反復にしっかり向き合うことで合格に近づきます。
―うまくいっていないポイントに気づくためのコツはありますか?
国見先生 はじめてのことなので、うまくいかないことは当然たくさんあるはずです。疑問が生じたり、このままではうまくいかなさそうだな、やり方がわからないなといったりする時には、必ず先人に「質問・相談」をしましょう。
富士山の山頂を目指す道中で、誰にも一度も相談せずに登るよりも、わかっている人に定期的に確認をとるほうがいいですよね。受験勉強においても、質問・相談という姿勢を大事にするとよいと思います。
(後編につづく)
【お話を聞いた人】
国見 健介(くにみ・けんすけ)
公認会計士/CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役
1978年東京都生まれ。1999年公認会計士試験合格、2001年慶應義塾大学経済学部卒業。2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立し、代表取締役就任。2003年1月公認会計士登録。CPAエクセレントパートナーズが運営するCPA会計学院は、2022年公認会計士試験において合格者数606名を輩出し、全合格者1,456名の内、合格者シェア41.6%を達成している。これまで20数年にわたり、1万人以上の会計士受験生から相談を受けた経験に基づいて確立されたメソッドとその実績には、多くの受験生から厚い信頼が寄せられている。
主な著書に『公認会計士の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本』(秀和システム)、『親子で目指す公認会計士受験ガイド』、『一生モノの「学ぶ力」を身につける』(ともに中央経済社)がある。