2021年11月21日、第159回日商簿記検定試験が実施されました。
受験された皆さん、手ごたえはいかがでしょうか。
会計人コースWebでは本日から全3回にわたり、千葉商科大学「瑞穂会」の指導をされている渡邉 圭先生と学生の方々による、「日商簿記1級」をテーマとした座談会の内容をお届けします。
第1回は、先日の第159回で1級をはじめて受験した学生2名にご登場いただき、その感想をお話しいただきました。
第1回にご協力いただいたメンバー
司会進行:渡邉 圭先生 第159回1級受験者:晴山 美来さん(2年生)、佐藤 凌央さん(1年生) |
なお、第159回1級の試験問題は、日本商工会議所ホームページで公開されています。本記事とあわせてご覧ください。
商業簿記・会計学
第159回簿記検定試験1級 商業簿記・会計学 問題用紙 (日本商工会議所ホームページから)
渡邉先生 第1回の座談会は、先日の第159回を受験した佐藤さん・晴山さんに試験の感想を聞いていきたいと思います。それでは、よろしくお願いします。
一同 お願いします!
渡邉先生 まずは商業簿記の感想から聞いていきます。今回の商業簿記には「在外支店」が登場しました。日商簿記1級の場合、「本支店会計」は定期的に問われる論点ですが、佐藤さん・晴山さんは、実際に問題を解いてみて、どのような印象を受けましたか? また、どれくらいの点数が取れているといいと思いますか?
佐藤さん 今回の問題では、特に「為替差損益」の計算が内容的にも時間的にも難しいと感じました。そのため、そのような問題はみんなも解けないと割り切って、まずは「有価証券」などといった基本的な問題から確実に解いていくように心がけました。全体としては、はじめは難しくみえたのですが、比較的解くことができたので、22点くらいを取れているといいなと思います。
晴山さん 今回の論点の「本支店会計」は、いつの時点の為替レートで換算するのかがポイントになると思います。ただ、実際に試験問題を解いて、それが曖昧になっていたことを実感したので、もっと勉強しておけばよかったと反省しています。自分のなかでの予想点数は18点くらいです。
渡邉先生 目安となる目標点数は17点~18点で、20点以上を取れていたら安心といったところでしょうか。それでは、会計学はどうでしたか? 今回の会計学では理論問題が多く出されましたが、同じくらい計算問題も出たので、比較的得点しやすかったように思います。ただ、瑞穂会でも「いつ来るか、いつ来るか」と言っていた「組織再編の共同新設分割」に関する問題が登場しました。これは難易度が高かったので苦労したかもしれませんね。
佐藤さん まずは解く前にすべての問題を確認し、「組織再編の共同新設分割」に関する問題は解けないと思ったので後に回し、学習内容を覚えていた「ソフトウェア」に関する問題や「分配可能額」に関する問題から解きました。後回しにした「組織再編の共同新設分割」は、考える時間もなく、正直なところカン頼りです。ただ、商業簿記もそうでしたが、「難しい問題が登場する」と普段から認識しておいて、実際に登場したら「できるものから解く」と、気持ちをすぐに切り替えることが大切だと思います。会計学では、18点くらいは取れているといいです。
晴山さん 私も佐藤さんと同じく、「組織再編の共同新設分割」に関する問題はカンで解いてしまいました。一方で「分配可能額」に関する問題は、計算過程が複雑ではあったのですが、「出るかもしれない」と思って学習内容を覚えていたので、解くことができました。会計学の予想点数は17点です。
渡邉先生 商業簿記と会計学を合わせると35点~40点といったところでしょうか。2人はこれから税理士試験の勉強を始める予定ですが、簿記論・財務諸表論の合格を目指すのであれば、日商簿記1級の商業簿記・会計学では取っておきたい点数ですね。
工業簿記・原価計算
第159回簿記検定試験1級 工業簿記・原価計算 問題用紙(日本商工会議所ホームページから)
渡邉先生 続いては、工業簿記・原価計算について聞いていきます。まずは工業簿記ですが、問題をパッと見てボリュームが多いと感じました。商業簿記・会計学の後に解くということもあり、時間や内容だけではなく体力的にも大変だったのではないかと思います。佐藤さん・晴山さんはどうでしたか?
佐藤さん たしかに最初、ページを開いたときに「文字が多い」と感じました。一つひとつの情報を丁寧に整理していけば解ける問題だったと思いますが、問題文の読み取りが日本語的に難しく、ミスをしてしまった部分もあります。具体的に気をつけたこととしては、製品の製造が第1工程と第2工程に分かれて行われていることが前提の問題でしたが、第2工程の計算は第1工程の計算が正しくないと合わなくなると思ったので、まずは第1工程からしっかり考えるように心がけました。工業簿記では、14点~15点くらいは取れているといいなと思います。
晴山さん 私も最初に問題を見たときは文字が多くて焦りました。ただ、佐藤さんと同じく、だからこそ丁寧に解くことを忘れないように心がけました。工業簿記では15点くらいが予想点数です。
渡邉先生 ボリュームのある問題が出されても、基礎的な部分から積み上げるイメージで解いていくことが大切ですね。最後に原価計算です。最近の出題傾向を見ると、工業簿記・原価計算ともに理論問題が増えているように思います。佐藤さん・晴山さんは、実際に解いてみてどうでしたか?
佐藤さん 僕は以前、全経簿記上級を受験したのですが、今回の日商簿記1級では理論問題も多く、どことなく全経簿記上級のような雰囲気もあったと思います。そのため、理論を強化したい場合には、日商簿記1級の勉強がある程度終わった後に、プラスアルファで全経簿記上級のテキストや問題集を見るのも効果的なように思いました。原価計算は20点~22点が予想点数です。
晴山さん 第2問の「歩留差異・配合差異」に関する問題は、今回は基本的だと感じたので、解くことができました。ただ、第3問の「事業部制」に関する問題は、工業簿記に時間をかけてしまったこともあり、思うように解くことができませんでした。私も20点くらいが予想点数です。
渡邉先生 商業簿記・会計学と合わせると70点を超えているかどうか……といったところでしょうか。74点を超えているなら合格確実ラインかもしれませんね。あとは合格発表を待つだけで不安もあると思いますが、次のステップに向けて勉強を始めていきましょう!
今回ご協力いただいた、千葉商科大学「瑞穂会」とは?
会計教育の実践の場として、千葉商科大学の学生を対象に、日商簿記検定、税理士試験科目(簿記論・財務諸表論)の講座を開講し、無料で受験指導を行っている。専用の教室を有し、専任教員が常駐して学生の受験指導にあたる。現在、多くの合格者を輩出しており、毎回の合格率は全国平均を大きく上回る。また、大学の授業と資格試験の両立に悩む学生に効率的な学習方法をアドバイスするなど、個々の学生の状況に応じた細やかな指導を行っている。
HP:https://www.cuc.ac.jp/iaer/mizuho/index.html