【受験生が“勉強の秋”に読みたい本】②『会計事務所の経営支援』-今後注力すべき仕事はこれだ!


勉強の秋ですね~。
9月から新たに学習のスタートを切った税理士受験生の皆さん、順調に勉強は進んでいるでしょうか?
来年の本試験までちょっと時間があるこの時期、苦しい受験勉強を乗り越えるには、「絶対に税理士になる!」というモチベーションを持続させることが不可欠です。
そこで、将来の仕事をイメージし、またモチベーションがアップする書籍を紹介します。

第2回目は、『会計事務所の経営支援―経営会計専門家の仕事』(澤邉紀生・吉永茂著、中央経済社)です。

なぜ会計事務所による「経営支援」が必要なの?

今日、日本の中小企業の多くは、

① 円滑な事業承継
② 企業の収益性の向上
③ 自社に合った経営管理の仕組み作り

の3つの大きな経営課題に直面しています。

経営管理の仕組みが構築され、トップの強いリーダーシップの下で全社員が共同体意識を持って日々の業務に励めば、自ずと企業の収益性は向上し、その結果、親族内承継やM&Aによる承継も進むでしょう。

しかし、大企業と異なり、経営資源に限りのある中小企業がこれらを自社だけで完結させるのは容易ではありません。経営者の最も身近な専門家である税理士、公認会計士(経営会計専門家)の支援が不可欠です。

今こそ、すべての経営会計専門家は、「税務」、「監査」といった独占業務の専業から経営支援業務へも軸足を拡張し、中小企業の発展、ひいては地域経済の活性化に貢献すべきといえるでしょう。

本書は、実務家と研究者によるコラボレーションにより、企業のわかりやすい実例を通じて、実践的なノウハウだけでなく理論的な考え方の基礎も学べる構成になっています。

会計事務所による「経営支援」って何をするの?

本書の第2章から第10章では、以下のようなさまざまな事例について、会計事務所の担当者がどのように経営者をサポートしたのか、またすべきだったのかが解説されています。

<目次>
第1章 経営者に寄り添う経営会計専門家という職業
第2章 経営計画策定能力の向上による中小企業の成長:建設業の事例
第3章 外部環境の変化を捉えた企業の自己変革:食肉加工卸売業の事例
第4章 任せる経営:フランチャイジーの事例
第5章 努力と成果の「見える化」:食肉冷凍加工食品卸・小売業N社の事例
第6章 中小企業のブランディング:美容室の事例
第7章 企業再生(オーナーシップの交代):スポーツクラブの事例
第8章 事業承継の準備:診療所の事例
第9章 経営者の突然の逝去に対応したダメージコントロール:造園業の事例
第10章 中小企業のガバナンス:建築業の事例

いずれも会計事務所がよく直面する問題がベースになっていますね。

各事例のなかで、「会計事務所の担当者として、この状況でどのように経営者に助言すべきか」という「問い」が投げかけられる体裁となっており、自分ならばどうしたかを考えながら読むスタイルです。

なお、「問い」に対しては「答え」が記載されている場合と、「答え」がない場合がありますが、「答え」が書かれている場合でも、1つの考え方として受け取ってください。

つまり本書で本当に伝えたいメッセージは、経営の悩みに対応するという会計人としての「心構え」です。

前記事でご紹介した『税理士の未来』でも経営コンサルタントの役割が大きいことが示されていますが、本書はこの実践バージョンといえるでしょう。

「経営支援」は、会計事務所が今後注力すべき仕事!

将来の仕事をイメージするため、ぜひぜひご覧ください!

【著者紹介】
澤邉 紀生(さわべ のりお)
京都大学大学院経済学研究科・経営管理大学院教授 博士(経済学)

1990年京都大学経済学部卒業。立命館大学経営学部専任講師、九州大学経済学部助教授を経て、2007年より現職。

主な著作
Management Controls and Pressure Groups: The Mediation of Overflows, Accounting, Auditing & Accountability Journal, 31(6), 2018, pp. 1644-1667, co-authored with Stephen Jollands and Chris Akroyd.
Core Values as a Management Control in the Construction of ‘Sustainable Development,’ Qualitative Research in Accounting & Management, 12(2), 2015, pp. 127 – 152, co-authored with Stephen Jollands and Chris Akroyd等.

『アメーバ経営学―理論と実証』(共編著、KCCSマネジメントコンサルティング、2010年)
『次世代管理会計の礎石』(共編著、中央経済社、2015年)
『アメーバ経営の進化―理論と実践』(共編著、中央経済社、2017年)
『計算と経営実践―経営学と会計学の邂逅』(共編著、有斐閣、2017年)

吉永 茂(よしなが しげる)
公認会計士・税理士 京都大学経営管理大学院特命教授

1967年中央大学第一商学部会計学科卒業。2009年より熊本学園大学会計専門職大学院専任教授(2012年まで)。現在、一般社団法人コンサル技連代表理事を務める。

主な著作
『中小建設業これで会社は立ち直る-経営再建の基礎知識』(日刊建設工業新聞社、2003年)
『改正経営事項審査のポイントと対策』(日刊建設工業新聞社、2008年)


本記事で紹介した本

『会計事務所の経営支援―経営会計専門家の仕事』

【書誌情報】
著者:澤邉 紀生・吉永 茂
定価:2,860円円(税込)
発行日:2020/10/29
A5判 /256頁
ISBN:978-4-502-35701-5
ご購入はこちらから


関連記事

【広告企画】会計大学院(アカウンティングスクール)12校の魅力を探る!

重版出来✨『わかる! 使える! うまくいく! 内部監査 現場の教科書』

【広告のご案内】掲載要領(PDF資料)

ページ上部へ戻る