全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
まずは問題にチャレンジ!
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券[( ① )]については,( ② )にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での( ③ )に求められると考えられる。したがって,( ③ )をもって貸借対照表価額とすることとした。また,( ① )は,売却することについて事業遂行上等の制約がなく,時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての( ④ )と考えられることから,その評価差額は( ⑤ )として処理することとした。
その他有価証券の( ③ )は( ② )にとって有用な投資情報であるが,その他有価証券については,事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり,評価差額を直ちに( ⑤ )として処理することは適切ではないと考えられる。
問題1
文中の空欄( ① )から( ⑤ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
問題2
その他有価証券の評価差額の取扱いについて,2通りの方法を説明しなさい。
解答
問題1
① 売買目的有価証券
② 投資者
③ 時価
④ 財務活動の成果
⑤ 当期の損益
問題2
(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。
(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。
基本的な考え方
・満期保有目的の債券は、取得原価で評価することを原則とするが、一定の条件のもとで償却原価法に基づいて算定された価額をもって評価する。
・子会社株式及び関連会社株式は、取得原価をもって評価する。
・その他有価証券の時価評価差額の処理法には、全部純資産直入法と部分純資産直入法がある。
・時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって評価しなければならない。
論述問題にチャレンジ!
満期保有目的の債券は、なぜ時価評価せずに償却原価法で評価するのか?
時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がないから。
子会社株式は、なぜ時価評価せずに取得原価で評価するのか?
子会社株式については、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づいているから。
その他有価証券は直ちに売却しないのに、なぜ時価評価するのか?
投資情報
企業の財務活動の実態を適切に財務諸表に反映させ、投資者に対して的確な財務情報を提供することが必要であるから。
財務認識
企業の側においても、取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要であるから。
国際的調和化
国際的視点からの同質性や比較可能性が強く求められており、金融取引の国際的レベルでの活性化を促すためにも、金融商品に係る我が国の会計基準の国際的調和化が重要な課題となっているから。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①