【新連載】経理のための実践的勉強法~①スキルアップを目指そう!


葛西一成@元上場企業経理部長(経理部IS)

【編集部より】
経理部に配属され、会計のことを勉強しないといけなくなったけど、仕事に直結する勉強法ってどうすればよいの? 担当することになった業務について知りたいとき、どのようにアプローチして、どんな本を読めばいい? そんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
そこで、複数の上場企業で経理の実務経験のある、経理部ISこと葛西一成氏に、経理のための実践的な勉強法についてアドバイスをいただきます。ぜひ、スキルアップにお役立てください!(月1回掲載予定)

実務をこなすために必要なこと

初めて経理業務を担当する人も、新たな経理業務を担当することになった人も、「初めて経験する業務」に対して不安になることが多いでしょう。

また、初めての担当業務に慣れてきたものの、もっと業務についての理解を深めたいと考えている人もいるのではないでしょうか。

本連載では、経理業務に対して不安を抱える経理パーソンに向けて、実務で作業をこなすために必要な「実践的勉強法」について解説していきます。

勉強法といっても簿記の問題の解き方を覚えるようなものではなく、実際に行われている実務に必要な知識やスキルを得る方法を取り上げます。

ぜひご一読いただき、経理の実務に対する理解を深め、スキルアップに役立ていただければ幸いです。

経理実務の現状は?

経理経験者であれ未経験者であれ、初めての業務を担当するときはやはり不安なことばかりです。

・難しいかな?

・いきなりミスしたらイヤだな…。

・期限内に終わらせることができるかな?

・そもそも業務の内容を理解できる?

こうした不安を抱えていても、業務を任せられた以上やり遂げなければなりません。

しかし、業務をやり遂げるためには何を勉強すればよいのか? どうやって実務作業の内容を覚えなければならないのか? そんな不安もあります。

業務に関して、十分な引継ぎやわかりやすいマニュアルが用意されていれば実務でも作業を進めやすいのですが、実際のところ、そこまで至れり尽くせり準備してくれている企業は少ないのが実情です。

そのため、自分から進んで勉強しないと実務をこなすことが難しいのですが、「そもそも何から勉強すればよいのか」がわからずに悩んでしまいます。

そこで必要になるのが、「実務をこなすための勉強法」の実例を知ることです。

経理実務をこなすための勉強法【実例】

経理業務の種類によって実務上の作業を覚えるための勉強法は異なります。また、人によっても実務のこなしかた、必要なスキルを身につける勉強法は変わりますが、共通点もあります。

それは、業務全体における実務作業の実態把握、その業務の根拠となる基準や法律等の理解、実際に行われている実務作業のシミュレーションを行うことです。

実務作業の実態把握

まずは、経理業務の中でも実際に手を動かして行う実務作業の実態を把握していきます。

実務作業の中で作成されているExcelなどの資料構成を解き明かす
(なぜこの資料が作成されているのか? 資料ではどのような計算が行われているのか? など、資料の内容や作成する目的を明らかにしていく)

資料作成に必要な元資料の存在や入手先を調べる

どのような関係者が実務作業に関わっているかを明らかにする
(例えば、未払残業代集計の実務では、人事部のXXさんから情報をもらうといったように、実務に関わる人が誰なのかを理解する)

実務の根拠となる基準、法律などの勉強

次に、実務作業で行われている処理の根拠を調べて勉強します。

会計監査六法や法人税基本通達を読んで、その実務作業で行われている処理の根拠や理由を知る

書籍や雑誌、ネットの解説記事も参考に実務の理解を深める

実務と関係する社内規程を読み、その内容に従って実務が行われているか確認する

実務上の作業シミュレーション

実際に作業をする前に、過去に行った作業と同じことができるかを確認していきます。

過去に作成した資料のコピーを使って、実務上の作業をシミュレーションする

シミュレーション結果(仕訳起票など)と、過去に行われた実務上の作業結果と比較・検証してみる。

今回解説する勉強法は、実態調査をしたり実務作業を再現したりと手を動かすことも多いため、机に向かって参考書を読んで問題を解くといった一般的な勉強とは内容が異なります。

連載で解説する実務の勉強法

今回の連載ではどの企業でも行っている経理実務のほか、経理パーソンが覚えるのに苦労する実務をピックアップして、その勉強法を解説していきます。

●今後、本連載で解説予定の実務の勉強法

・前払費用
・賞与引当金
・固定資産(減価償却)
・税金計算基礎(法人税、住民税及び事業税)
・税効果会計基礎

経理パーソンの中でも、これらの実務を担当する可能性がある人、すでに業務を担当しているがまだ内容を理解しきれていない人はぜひ参考にしていただければと思います。

また、これから経理の仕事に携わる人も、簿記の勉強とは別に経理の実務をこなすために必要な勉強法があることを知ってもらえたら幸いです。

まとめ

今回は、経理のための実践的勉強法の連載初回として、経理業務の現状や実務をこなすための勉強法の実例について解説してきました。

初めての業務、新たな業務を担当するとき、業務をしっかり遂行できるか不安に思います。その不安を解消し、実際に手を動かして実務をこなしていくためには、「実践的な勉強」が必要になります。

この勉強は、

1.実務上の作業についての実態把握

2.実務における根拠の理解

3.実務上の作業シミュレーション

といったことを繰り返すことで、実務がこなせるようになります。

次回からは、経理業務ごとに実践的な勉強方法を解説していきます。ぜひ、次回以降の記事も参考にしていただければと思います。

<執筆者紹介>

葛西一成@元上場企業経理部長

東証プライム・グロース上場2社で経理部長を経験後、独立開業。独立後は経理パーソン向けキャリアサポート・会計関連システム開発導入サポート・決算業務フォローや執筆活動に注力。X(旧Twitter)では、フォロワー1.5万人超の「経理部IS」アカウントにて、経理の仕事に関する情報を発信中。
著書に『経理のExcelベーシックスキル』(中央経済社)がある。
経理部IS(@keiri_IS

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【連載バックナンバー(全10回)】
第1回:現役経理部長が教える! 経理の仕事でExcelがマストな3つの理由
第2回:現役経理部長が教える! 経理に必要な4つのExcelスキル~ミス削減&作業効率化にマスト!
第3回:現役経理部長が教える! 仕事が効率化するExcelを‟見やすくする”スキル
第4回:現役経理部長が教える! 今すぐやるべき‟Excelでミスを防ぐ”方法
第5回:現役経理部長が教える! 仕事で評価される‟わかりやすいExcelの表”を作成する方法
第6回:現役経理部長が教える! Excelを使いやすくする5つの方法(前編)(後編)
第7回:現役経理部長が教える! 経理業務の効率化に役立つ! 使いやすいExcelファイルの管理方法(前編)(後編)
第8回:現役経理部長が教える! 仕事スピードを速くするExcel関数とショートカットキー
第9回:現役経理部長が教える! Excelピボットテーブル活用術
第10回:現役経理部長が教える!  作業効率化に役立つExcel機能3選

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