長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)
*連載のねらいはこちら!
Q6 「経理自由の原則」の意義を説明しなさい。
A
経理自由の原則とは,企業会計上,1つの会計事実に対して2つ以上の会計処理の原則または手続が存在する場合,企業の適合条件に照らして,その中から最も合理的な唯一の会計処理方法を特定できず,少なくとも2つ以上の方法間に優劣がなく同程度に合理性が認められるならば,そのうちからいずれの方法を選択適用するかは,企業の自由な主体的判断に委ねることを認める会計思考である。
*企業会計原則第一・五
『もしも最も合理的な会計処理方法を特定できた場合は,その方法を最初から選択適用しなければならないということになる!』
Q7(空欄補充)
企業会計は,その処理の原則及び手続を( ① )して適用し,みだりにこれを( ② )してはならない。企業会計上継続性が問題とされるのは,一つの( ③ )について二つ以上の会計処理の原則又は手続の( ④ )が認められている場合である。このような場合に,企業が選択した会計処理の原則及び手続を( ① )して適用しないときは,同一の( ③ )について異なる利益額が算出されることになり,( ⑤ )の期間比較を困難ならしめ,この結果,企業の財務内容に関する( ⑥ )の判断を誤らしめることになる。 従って,いったん採用した会計処理の原則又は手続は,( ⑦ )により( ② )を行う場合を除き,( ⑤ )を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。
A
① 毎期継続
② 変更
③ 会計事実
④ 選択適用
⑤ 財務諸表
⑥ 利害関係者
⑦ 正当な理由
*企業会計原則注解【注3】
『もともと合理的な会計処理方法を採用しているならば,より合理的な会計処理方法に変更する場合に限り「継続性」の問題が生じるのである!』
Q8(空欄補充)
企業の財政に( ① )を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に( ② ) をしなければならない。企業会計は,予測される将来の危険に備えて( ③ )に基づく会計処理を行わなければならないが,過度に保守的な会計処理を行うことにより,企業の( ④ )及び( ⑤ )の( ⑥ )をゆがめてはならない。
A
① 不利な影響
② 健全な会計処理
③ 慎重な判断
④ 財政状態
⑤ 経営成績
⑥ 真実な報告
*企業会計原則第一・六,注解【注4】
『「過度な保守主義」→「真実性の原則違反」,すなわち「健全な」≒「真実な」かな?』(桜井23版,67頁)
Q9 会計処理の原則又は手続の変更が認められる正当な理由とは,どのような場合か。
A
(1) 大規模な経営方針の変更
(2) 急激な経済環境の変化
(3) 会計関連法令の制定改廃 等
*企業会計原則注解【注3】
『企業を取り巻く外部環境の変化か,企業内部の組織・経営方針の変化が起きた場合!』
Q10 継続性の原則はなぜ必要なのか?
A
企業がいったん選択し採用した会計処理方法を毎期継続して適用しないときには,同一の会計事実に対して異なる測定値が生み出され,財務諸表の期間比較による企業の趨勢を洞察することが困難となり,企業の利害関係者の判断や意思決定を阻害することになる。継続性の原則は,このような阻害要因を排除し,財務諸表の期間比較を可能とし,同時に企業会計の有用性を高めることになるから。
*企業会計原則注解【注3】
『「なぜ必要?」→(もしなかったら)→「企業の都合で変更」→(異なる数値が出る)→「期間比較が不能」→(関係者の判断の誤り)→「原則は必要である」』
◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
20.事業分離会計①‐⑤
21.連結会計①‐⑥
22.外貨換算会計①‐⑤
23.過年度遡及会計①‐⑥
24.包括利益①‐⑤
25.概念FW①‐⑧
26-1.企業会計原則・一般原則①‐⑤
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。