連載 『会計士・税理士・簿記検定 財務会計のセンスが身につくプチドリル』(第226回)ー 企業会計原則・一般原則①‐⑤の復習


長島 正浩(茨城キリスト教大学教授)

*連載のねらいはこちら!

Q1(空欄補充)
企業会計は,企業の(  ①  )及び(  ②  )に関して,真実な(  ③  )を提供するものでなければならない。
企業会計は,(  ④  )につき,正規の簿記の原則に従って,正確な(  ⑤  )を作成しなければならない。

A
① 財政状態
② 経営成績
③ 報告
④ すべての取引
⑤ 会計帳簿
*企業会計原則第一・一,二
『真実な報告をするためには正確な会計帳簿が必要。すなわち「真実な」≒「正確な」かな?』

Q2 企業会計原則・一般原則で示されている「真実な報告」の意味を簡潔に答えなさい。


絶対的真実性でなく,相対的真実性を意味する。
*真実性の原則は,測定,記録および報告(伝達)という会計行為全般の真実性を要請する包括原則であり,企業会計の最高規範ないし基本理念として位置づけられる。
*企業会計原則第一・一
『一般に公正妥当と認められる会計基準に従って会計が行われるとき,その結果は真実なものとみなされる!』(桜井23版,62頁)

Q3 正確な会計帳簿を作成するための要件を3つ箇条書きで列挙しなさい。


(1) すべての取引を網羅して記録すること。
(2) 検証可能な証拠に基づいて記録すること。
(3) 秩序よく組織的に記録すること。
*正確な会計帳簿とは,会計事象を信頼できる客観的な証拠に基づいて記録し,財務諸表作成に必要な記録を保存する帳簿を意味する(仕訳帳と元帳)。
正規の簿記の原則は,記録原則とみることができる。ただし,記録の前提となる会計処理(認識・測定)をも含む包括原則とみる見解もある。
*企業会計原則第一・二
『網羅性・検証可能性・秩序性!』(桜井23版,62頁)

Q4 真実性の原則がいう真実が相対的真実性を意味するのはなぜ?


相対的真実性の意味を語るには,その対立概念である「絶対的真実性」の意味から考えるのがよい。絶対的真実性とは,旧ドイツ商法に由来し,ある一定時点における物的ないし法的観点から実在する資産および負債を完全に網羅して計上する「貸借対照表完全性の原則」と,その資産の評価は換価価値による「真正価値の原則」とを意味する。すなわち,1つの会計事実に対して1つの会計数値しか存在しえない。
絶対的真実性のもとでは,慣習や判断が介入せず,それらから独立しているが,今日の企業会計は,継続企業を前提とし,期間的に暫定的な計算を行わざるをえないことから,必然的に慣習や判断が介在する。また,取引について,複数の会計処理方法が認められている場合があり,採用する方法により,利益計算の結果は異なってくる。このため真実性の原則でいう「真実」とは,決して絶対的真実ではなく,会計基準の遵守によって達成される相対的真実を意味するのである。
*企業会計原則第一・一
『①多くの事項について主観的な見積りが含まれている。②複数の会計処理方法が認められる場合,採用する方法により利益計算の結果は異なってくる!』(桜井23版,61頁)

Q5 正規の簿記の原則はなぜ正確な会計帳簿の作成を要求するのか?


網羅性・検証可能性・秩序性を備えた「正確な会計帳簿」を作成した上で,その帳簿記録を集計した結果に基づいて,誘導法によって財務諸表を作成する必要があり,帳簿記録と無関係に実地調査を行うような棚卸法で財務諸表を作成してはならない。
*桜井23版,62頁
『「取引の発生」→(網羅性・検証可能性・秩序性)→「正確な会計帳簿」→(誘導法)→「適正な財務諸表」→(真実な報告)→「真実性の原則」』

◎復習しましょう!
1.CF計算書
2.一株当たり当期純利益
3₋1.金融商品会計①‐⑦
3₋2.金融商品会計⑧‐⑭
3‐3.金融商品会計⑮‐⑳
4-1.棚卸資産会計①‐⑥
4-2. 棚卸資産会計⑦‐⑫
5‐1.収益認識会計①‐⑦
5₋2.収益認識会計⑧-⑫
6.リース会計①‐⑥
7.固定資産の減損①‐⑩
8.ソフトウェア会計①‐⑥
9.研究開発費会計①‐⑦
10.繰延資産①‐⑦
11.退職給付会計①‐⑥
12.資産除去債務①‐⑥
13.税効果会計①‐⑥
14.ストック・オプション会計と役員賞与(報酬)会計①‐⑧
15.自己株式①‐⑦
16.準備金の減少①‐⑥
17.純資産の部の表示①‐⑦
18.株主資本等変動計算書①‐⑤
19-1.企業結合会計①‐⑦
19-2.企業結合会計⑧‐⑫
20.事業分離会計①‐⑤
21.連結会計①‐⑥
22.外貨換算会計①‐⑤
23.過年度遡及会計①‐⑥
24.包括利益①‐⑤
25.概念FW①‐⑧

〈執筆者紹介〉
長島 正浩
(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師,会計事務所(監査法人),証券会社勤務を経て,専門学校,短大,大学,大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後,松本大学松商短期大学部准教授を経て,現在に至る。この間35年以上にわたり,簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

*本連載は,『会計人コース』2020年1月号付録『まいにち1問ポケット財表理論』に加筆修正したものです。


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