【論述に強くなる!財表理論講座】第11回:ソフトウェア会計



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

ソフトウェア制作費のうち,研究開発に該当する部分は( ① )として費用処理する。
受注制作のソフトウェアの制作費は,( ② )の会計処理に準じて処理する。
( ③ )のソフトウェアである製品マスターの制作費は,( ① )に該当する部分を除き,( ④ )として計上しなければならない。ただし,製品マスターの( ⑤ )に要した費用は,( ④ )として計上してはならない。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑤ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2 製品マスターの制作費で,( ① )に該当する部分とは,具体的にどのような費用か,答えなさい。

解答

問題1

① 研究開発費
② 請負工事
③ 市場販売目的
④ 資産
⑤ 機能維持

問題2

最初に製品化された製品マスターの完成までの費用及び製品マスター又は購入したソフトウェアに対する著しい改良に要した費用が研究開発費に該当する。

基本的な考え方

ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。

・市場販売目的のソフトウェア及び自社利用のソフトウェアを資産として計上する場合には、無形固定資産の区分に計上しなければならない。

制作途中のソフトウェアの制作費は、無形固定資産の仮勘定として計上する。

論述問題にチャレンジ!

会計基準では研究開発費に該当しないソフトウェア制作費をどのように分類するか?

ソフトウェアの制作費は、その制作目的により、将来の収益との対応関係が異なること等から、販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアとに区分し、販売目的のソフトウェアをさらに受注制作のソフトウェアと市場販売目的のソフトウェアに区分している。

研究開発終了後のソフトウェア制作費のうち、資産計上されるものは?

著しい改良
製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用で、著しい改良と認められないもの。

機能維持
ただし、バグ(プログラミング上の誤り)取り等、機能維持に要した費用は、機能の改良・強化を行う制作活動には該当しないため、発生時に費用として処理される。

研究開発終了後のソフトウェア制作費はなぜ資産計上されるのか?

製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではなく、機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成すること、製品マスターは法的権利(著作権)を有していること及び適正な原価計算により取得原価を明確化できることから、当該取得原価は無形固定資産として計上される。

資産計上したソフトウェアの取得原価はどのように償却されるか?

無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければならない。ただし、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②


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