働く税理士受験生が、繁忙期にムリしないで知識をキープする方法(簿・財)


藤木 広
(資格試験のFIN主任講師/公認会計士・税理士)

時間がないほうが集中力は増す!?

会計事務所勤務の方や法人の経理に携わっている方にとって、今は所得税の確定申告や3月決算と、1年で一番忙しい時期ではないでしょうか。受験生からしてみますと、学習時間を確保するのが難しくなりますが、繁忙期という特殊な環境が、かえって学習の効率性を向上させることがあります。

普段の学習でも、通勤時間のほうが暗記力が上がったりするのと同じです。人は、「時間がない」という切迫した状況や、ちょっとした環境の変化によって、「集中力」が増幅するようです。まさに、この1~2ヵ月間はそのような状況下におかれるので、まとまった時間がとれないなかでの学習方法について、一緒に考えていきましよう。

【簿・財】知識をキープするための学習法

計算力をキープするためには!?

毎日計算問題を解かないと計算力が落ちてしまう、というのはよく言われることです。たしかにそのとおりですが、時間のない繁忙期には、どのような計算問題を解くかが重要になってきます。

まず、一通り計算するだけで30分以上かかるような総合問題は、答え合わせまで含めると1~2時間は平気で必要になりますから、繁忙期はあきらめてしまいましょう。また、問題を解いてみてわからないことが出てきたとき、じっくり調べる時間がないからといって放置してしまうのは避けたいところです。

そこで、おすすめするのは、一度は解いたことのある小問を同じ分野から2~3問ずつ解くことです。

難易度は標準的な、基本的な処理で解答できる問題で、分量は答え合わせまで含めて10~15 分程度の小問がよいと思います。分野ごとに整理されている問題集が手もとにあれば利用できるでしょうし、資料がまとめて与えられているなら総合問題の該当箇所だけ解くこともできるはずです。

理論対策のためには!?

まとまった時間がとれないときにスキマ時間でできる勉強といえば、市販の理論集を読んだり、赤を入れた会計基準を読んでみたりといったことが思いつきます。しかし、ただ黙々と読んでいても、案外頭に残らないのもよくある話です。音読する、書いて覚えるのも1つの方法ですが、移動中やスキマ時間の勉強には不向きです。

そんなとき、アウトプットの要素を少しだけ取り入れるQ&A方式がおすすめです。

具体的には、1問5分程度で消化できる問題と解答を用意して、

① 問題を読む

② 答案を考える

③ 解答を確認する


の3ステップで取り組みます。

ただ、場合によっては、以下のように③から抜き出したキーワードやキーフレーズを②として用意し、①を読んで②が思い出せるか、という勉強もおすすめです。

① 問題を読む

Q 1.減損処理の必要性とは

② 答案を考える

ⅰ 収益性の低下を反映した週大な帳簿価額を減額
ⅱ 将来に損失を繰り延べない
ⅲ 時価基準でなく取得原価基準の範囲内

③ 解答を確認する

A1.「事業用の固定資産であってもその収益性が当初の予想よりも低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合がある。このような場合における固定資産の減損処理は、棚卸資産の評価減、固定資産の物理的な滅失による臨時損失や耐用年数の短縮に伴う臨時償却などと同様に、事業用資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理と考えることが適当である。これは、金融商品に適用されている時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書三.1)」

すぐに解答を確認するのではなく、ひと呼吸おいて思い出してみることで、知識の定着度がぐっとアップします。

問題・解答形式の教材が手もとにある、あるいは自作のノートがあるなら、それを利用すればよいですし、市販の理論集にアンダーラインを引く、マーカーを引くなどしてアレンジすることもできるはずです。

実は、文章中からキーワードやキーフレーズを抜き出すという作業自体が、その理論のポイントは何かを考えるよい機会となるので、1巡目は、マーカー片手にキーワードやキーフレーズを抜き出す作業、2巡目から①~③の3ステップで、とするのが理想的です。

〈執筆者紹介〉
藤木 広 (ふじき・ひろし)
資格試験のFIN主任講師/公認会計士・税理士
1987年に慶應義塾大学商学部を卒業後、当時の6大監査法人の1つ、センチュリー監査法人に就職。同法人に勤務しながら、大手専門学校で公認会計士講座の専任講師を務め、管理会計論、2006年からは租税法も兼任した(監査法人は5年で退所)。大手専門学校を2013年に退社し、資格試験のFINを設立。

※ 本記事は、会計人コース2018年3月号「ムリしないで合格る勉強術 ムリしないで知識をキープする方法」を編集部で再編集したものです。


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