【論述に強くなる!財表理論講座】第26回:外貨換算会計


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

外国通貨については,( ① )の為替相場による円換算額を付する。外貨建金銭債権債務については,( ① )の為替相場による円換算額を付する。満期保有目的の外貨建債券については,( ① )の為替相場による円換算額を付する。( ② )及びその他有価証券については,外国通貨による( ③ )を( ① )の為替相場により円換算した額を付する。子会社株式及び関連会社株式については,( ④ )の為替相場による円換算額を付する。( ① )における換算によって生じた換算差額は,原則として,当期の( ⑤ )として処理する。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑤ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
決算時における外貨建資産負債等の円貨額への換算方法について,代表的なものを4つ挙げなさい。

解答

問題1

① 決算時
② 売買目的有価証券
③ 時価
④ 取得時
⑤ 為替差損益

問題2

(1) 流動・非流動法
(2) 貨幣・非貨幣法
(3) テンポラル法
(4) 決算日レート法

基本的な考え方

外貨建取引とは、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引をいう。

論述問題にチャレンジ!

外貨建取引の発生日から当該取引に係る外貨建金銭債権債務の決済日に至るまでの間の為替相場の変動による為替差異すなわち為替換算差額及び為替決済損益の処理にあたり、考えられる二つの基準とは何か?

一取引基準
一取引基準とは、決済日基準ともいい、外貨建取引から当該取引に係る外貨建債権債務の円決済取引までを一つの取引とみて換算処理を行う方法である。すなわち、外貨建取引と為替決済取引とを一体とみる換算処理方法である。

二取引基準
二取引基準とは、取引日基準ともいい、外貨建取引と当該取引に係る外貨建債権債務の円換算(決済以前の決算日に行う換算)や円決済取引を別個独立した取引とみて換算処理を行う方法である。すなわち、外貨建取引と為替決済取引とを区別する換算処理方法である。

外貨建金銭債権債務はなぜ決算時の為替相場により換算替えするのか?

外貨建金銭債権債務については、外貨額では時価の変動リスクを負わず、したがって時価評価の対象とならないものであっても、円貨額では為替相場の変動リスクを負っていることを重視し、流動・非流動法による区分は設けずに決算時の為替相場により換算することを原則とするからである。

為替予約が付された外貨建取引の会計処理にはどのような方法があるか?

為替予約が付された外貨建取引の会計処理には、独立処理と振当処理がある。独立処理は外貨建取引と為替予約を別個の取引とみなし、それぞれについて会計処理を行う方法である。振当処理は為替予約によって確定した日本円の金額を、外貨建取引に振り当てて記録する方法である。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計
第18回:自己株式
第19回:準備金の減少
第20回:純資産の部の表示
第21回:株主資本等変動計算書
第22回:企業結合会計①
第23回:企業結合会計②
第24回:事業分離会計
第25回:連結会計


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