私の独立開業日誌~税理士 猪田昭一


自己紹介

 皆様はじめまして、スカイツリーのある東京都墨田区で税理士をしています、猪田昭一と申します。

 事務所ではスタッフを雇用することはせず、自分1人だけで仕事をしています。

受験時代

 普通の商業高校を卒業し、しっかりした会計の勉強をしようと思い、東京都の中野にある東京CPA会計学院の2年制へ入学しました。

 入学当初、学生は2年間だけにして、その間に会計の能力を身につけて、就職しようと思っていましたが、クラスでみんな勉強するという雰囲気もあり、入学して2ヵ月で日商1級に合格できました。そのあとは『会計士』か『税理士』に進む選択を提示され、沢山のチームでやる会計士的なことより、一人でも出来そうなことの方が自分に合いそうだなという理由で、税理士を選択しました。

 当初の「学生は2年間」ということを意識していたため、親からの支援もあり、バイトもせず毎日猛烈に勉強しました。その結果、1年目に簿記論・財務諸表論・法人税法・相続税法の4科目に合格し、2年目で所得税法と消費税法に合格したことで、20歳で税理士試験に合格出来ました。

 税理士業務でも頻繁に使う、主要な国税を中心に勉強していたことは、お客様からの質問に対して、複数の法律の側面から答えるケースが多いため、現場での仕事に役立っています。できれば受験科目は、仕事してからも役立ちそうなものを選んで、学生の時に苦労した方が、後がラクチンです。

勤務時代

 20歳で国税4法を持っていたこともあって、様々な会計事務所を見学させてもらいましたが、就職したのは自宅から歩いて行けるところにある職員さん15名くらいの中規模事務所でした。

 家族だけのところではやりにくいだろうし、もしも独立したら、大きい事務所でやっているようなことはできないかも、という視点から選びました。

 4年くらい勤務した後に、環境を変えてみたくなり、千葉県にある同規模程度の税理士法人へ転職し、医師や歯科医師など、お客様の職種が違うところで1年半くらいの勤務をしていました。使っていたシステムが違うばかりか、社内の管理が違うこともあって、ここでもいい経験をさせてもらいました。

独立のこと

 26歳の時に独立開業をしました。きっかけは、勤務先の方針と自分のやりたいことが違ってきたことです。なので、独立した時は勤務していた事務所のお客様には一切営業せず、顧問先は0件でした。開業して7年たち、振り返ってみると、当初の売上はあまりあがらずに結構大変だったなと思います。

 最初の営業は、様々なところにとにかく顔を出しました。勤務している頃も顧問先の廃業や顧問報酬の低下を受けて、新規の顧客開拓の指示はあったことやmixiというSNSが流行っていたこともあり、いろんな交流会に出ていきました。

 誰でも参加できる交流会にも行きましたが、営業としては正直厳しかったです。交流して遊ぶだけのところは遊ぶだけで、年代の違う新しいアクティブな交友関係はできました。でも、すぐに売上につながることはなく、勤務時代も独立してからも、営業というものの厳しさを痛感しました。

 なんとかなるだろうというプライドもあったものの、1つ決めていたこととして、『仕事ください』ということを口にすることはしませんでした。だって仕事がほしいという営業をしたら、単価の低く手間がかかる仕事をもらうことになるからです。

 そんな経験から、地元の自治体がやっている起業塾に通いました。そこでは、起業する人が何を考えているのか、基本的なマーケティング等を学び、自分の税理士事務所がやることをどう絞るかを考えさせてもらいました。次に意識した営業は『墨田区内で起業しようと思っていてと、先輩やカフェなどで相談したら、税理士している猪田って人に電話かメールすればいいよって、頭の中の一番に思い浮かぶ人を10人作ること』です。時間はかかりますが、地域の中で少しお節介な人を作り出すことができれば営業! 営業! って外に歩き続けなくても、誰かが紹介してくれる環境になるのかなと思っています。

 勤務時代はそれなりに忙しく、賞与も含めて貯金ばかりしており、500万くらい貯めていたので、独立しても当面の生活費に不安にならない状況だったのは、いいことだったかなと思います。なので、独立の準備として一番することは貯金なのかなと。

 社長になってみて売上が上がらずに、経費がかかって通帳の残高が減るという経験、今では笑い話にしていますが、社長にとっての不安を自分も経験しておくのは大事ですよ。

税理士が活躍する場所へ

 事務所の運営方針は、スタッフを雇用しないで、一人でも出来ることに徹底的に絞ることを選択しています。

 10年単位で税理士業界が変わってきたことはすごく感じています。1990年代までは会計システムが高額で、2000年代は安価な会計ソフトの販売が始まって各社で会計管理することが増えてきた、2010年代はクラウド化や無料の会計ソフト、RPAや銀行のデータを自動的に会計ソフトに取り込んでいく、という流れが出てきました。

 会計を記帳代行すれば高い単価が取れていた時代から、自分たちで帳簿処理をして外注コストを削減する流れもあり、税理士の資格だけでは厳しいということは否定できません。

 これからのAIの発達や自動化に対抗する方法は、機械的に判断できないこと・マニュアル通りに判断できないようなことに対応できる体制を作ることが大事なのかなと思っています。

 どうしても人間の手や目、頭がかかわらないといけない部分であれば、これからの時代でも役立つことがあると思って、起業する人に会って話を聞くなど、実際に目で見たり触ったりすることを大事にしています。

 僕は尖りすぎていると言われることが多いのですが、いい意味でも独立してからは尖った形にしていくことが大事だと思います。ですから、どうしても自動化できない・機械化できない部分がこれからの税理士が活躍する場所であるならば、その中で自分にあう仕事の仕方を見つけてくださいね。

私の事務所
猪田昭一税理士事務所
所在地:〒131-0032 東京都墨田区東向島5-3-2

私の略歴
1985年 東京都墨田区 生まれ
2006年 税理士試験合格・税理士事務所就職
2012年 税理士独立開業
2015年 合同会社SSN 設立

本稿は、『会計人コース』2020年4月号に掲載したコラムです。

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