私の独立開業日誌~税理士 小山僚子


自己紹介

はじめまして。私は札幌で税理士をしている、小山僚子と申します。今、この原稿を書いているとき、世界的にコロナウイルスの感染が広がり、札幌でも外出は自粛、仕事も在宅推奨となっています。雑誌になって皆さんのお手元に届くときには、収束に向かっているようにと祈るばかりです。

遠回りして、ようやく独立開業

私は現在独立して3年半を過ぎました。実は官報合格したのは平成7年なので、ちょうど25年前になります。若くして有資格者になり会計事務所に勤めたものの、原因不明の難病を患い退職、その後も人生いろいろ(以下略)あり未婚の母の道を選び、税理士事務所を渡り歩き、母校の大学に勤務した時期もありました。10年の契約期間満了の後、再び会計事務所に就職という、かな~り遠回りをして、平成28年10月に独立開業しました。

『私たちは皆、他人の不幸ではなく幸福を糧にして生きていきたいと願っている』『人生は自由で美しいものたり得るのだ』
(映画チャップリンの「独裁者」より)

資格があれば生きていける

新卒でバブルがはじけ就職戦線離脱したとき、難病で何度も入院したとき、未婚の母を選んだとき…うーんこれからどうしようと思いました。お金の心配もしました(これは今もですが)。でも、世間のレールから外れても、資格と好きなことがあれば、なんとかなるもんです。ただ、私1人だったら心が折れていたかもしれません。大学や会計事務所時代の同僚や先輩には心配していただき、前職の法人代表の中野幸一先生(現在御年90歳)には「守破離の離、ですね」と快く送り出してもらいました。

娘と仲間がいるから頑張れる

勉強中の皆さんも、今もしかしたらこの先の人生に深く関わる人に巡り会っているかもしれませんね。大原簿記専門学校で一緒に学んだ友人たちとは今でも親交が続いています。また、女性税理士連盟や税理士仲間とも情報交換をしていますし、私を選んでくれたお客さまやご縁のあったすべての方の優しさに感謝です。

そして、一番の励みはやはり娘の成長でしょうか。他愛もない話で毎日笑う。時々は怒ったりしますが、あるとき娘が寝た後に冷蔵庫を開けると、残りもののハンバーグに「お母さんへ すみま千円二千円」と書かれたメモが。得意技はお笑いネタの完コピという娘、私のどこからこんな子が生まれたのか? そしてなぜその記憶力を勉学に生かせないのか? ぜひ知りたいものです。ちなみに将来の進路は、税理士、ではなくマンガ家ですが。

♪『色とりどりに光る世界を作ってく 僕らはそれぞれに輝くcolor』(ゆず イロトリドリより)

短所を長所に変えて

実は数学が苦手、集団行動も苦手、空気が読めないのにええかっこしいなので初対面では緊張しまくり、人に教えるより教わるほうが好き~普通に考えたら税理士の適性まるでなし!? の私でも、開業税理士なんとか務まっています。独立するとき、娘に聞きました。「他の税理士事務所にないような、うちの売りって何かないかな?」。う~んと考えた後の一つの答えが、「計算できない税理士!」…そんな税理士ダメじゃん、と思いました。そのときは。

でも適性がないならないで、短所を長所に変えることはできます。数字の羅列ではない資料を作ったり、自分が喋るよりお客様の話を聞くほうに回ったほうが喜ばれたり。特に相続税申告の打ち合わせでは、故人やご家族の来歴を聞くのですが、長編映画よりドラマチックなときもあります。まさに事実は小説より奇なり。自然と聞き入ってしまい、またそういうときはお客様も熱心に話してくださいます。

そして、税理士といっても経営者としてはまだ3年ちょっとのひよっこ、子育ての悩みも尽きません。時に、その道の先輩であるお客様から、経営や子育てのアドバイスをいただくこともあります。固定観念を捨てれば、道は目の前に広がるかもしれません。自分だからこそのニーズは必ずあると思っています。

「明日が人生最後」と思って独立を決意

未婚の母の前途多難はわかっていましたが、それより可愛さが勝って、どんなに大変なときでも娘を産んだことを後悔した日はありません。それからずっと、シングル家庭で、仕事も! 育児も! 家事も! 頑張ってきたつもりですが、ワンオペどころでなく両立なんて無理無理全然無理。子供が小さいときの記憶は飛んでしまっているくらいです。

でもそういったことから、弱い立場の人に攻撃的な言動をとる人こそ、実は切羽詰まっている場合があるのかも、というようなことも、自身の経験から学びました。そういう経緯もあり時間と心の余裕を持ちたくて独立しました。

以前は、営業なんて苦手だし、自分にできるだろうか、と思っていました。でも、「もし明日人生最後だとしたら独立しなかったことをきっと後悔する!」と思って、踏み切ったのです。やってみたら、なんとかなるものですね。お金の心配は尽きませんが、それも社長の気持ちを理屈でなく理解できると思って、仕事の糧に(無理やり)しています。

仕事も楽しむことが大事

税理士のイメージって、真面目で地味? 

いえいえ、何事も『之を楽しむ者に如かず』。独立して考えたこと、そして楽しかったことの1つは、セミナーを面白くやることでしょうか。

コスプレ、替え歌、クイズ、効果音、軽減税率のセミナーでドンキで小道具を仕入れて主催者と演じた寸劇は銀行員の相方がセリフを完璧に憶えて臨んでくださりびっくりでした。そのノリで、昨年札幌で行われた日税連の公開研究討論会も拍手喝采! とても楽しかったです。

♪『世界で一つの輝く光になれ 私でいい 私を信じてゆくのさ』(Superfly Beautifulより)

人生、先のことはわかりません。独立して3年経っても、税理士試験を受けていたときと変わらず不安はあります。そしてコロナ禍でこの先どうなるかもっと不透明な世の中になってしまいました。でも不安に負けないように深呼吸をして、自分ができることをやっていくしかない。あとはなるようになります。そう信じて、勉強も仕事も楽しんでいきましょう♡

私の事務所
小山僚子税理士事務所
所在地:〒064-0944  札幌市中央区円山西町8丁目2-1 106
窓から森が見える、静かなところにあります。

私の略歴
1971年 福岡県北九州市生まれ
1994年 税理士事務所就職
1995年 税理士試験合格
2016年 独立開業

本稿は、『会計人コース』2020年7月号に掲載したコラムです。

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