並木秀明
会計人コースも2020年2月号となった。実際には、お正月気分の抜けない1月であるが、あっという間に3月になる。「一月は往く、二月は逃げる、三月は去る。」昔の人は上手いことを言ったものである。正確には、わたくしの好きなダジャレ風に言うと「一月(いちげつ)往(い)ぬる二月(にげつ)逃(に)げる三月(さんげつ)去(さ)る。」という。
読者である受験生にとってこの時期が正念場である。「時は流れる、しかし復習は終わっていない。」そして試験まで8か月となったのである。4月以降に四苦八苦とならないようにしたいものである。
冬の朝~黒と茶と靴とニュー・ファッション
今年度の冬至は12月22日であった。北半球では、太陽が一番低い位置を通過する日であり昼が一年中で一番短く逆に夜が長くなる日である。春分までは長く寒い夜が続いていく。
大学の1時限講義のある日は、午前4時に起床し、午前5時半頃の電車に乗る。家から駅までの道はまだ暗い。冬至に近いある日のことである。学生からの質問である。「先生、右の靴は黒、左の靴は茶ですが、どこで買ったんですか。」。わたくしの回答である。まず、足元をみた。確かに黒と茶の靴を履いていた。「まあなんだ、人生にはいろいろなことが起こるから面白い。つまり、この黒と茶は日本に四季があることが原因である。すなわち、早朝のこの時期の玄関は暗く、黒と茶の区別ができないことが原因である、ということだ。」「こんなことが原因で新しいファッションが誕生するかもよ。」
わたくしは、気に入る服、靴、筆記具などがあると同じものを色違いで買う。靴は、同時に色違いが履けてしまう。これからは気をつけなければ……。その日の帰宅は長かった。
4つの痛みと快感~頭痛と肩痛と腰痛と歯痛
生きているのは大変だ。生身の体、果物や野菜と同じである。いつも必ずどこかに支障が生じている。しかし、同時は困る。執筆中のいま、5つの痛みが同時進行中なのである。痛みは、一方の痛みを忘れさせてくれない。互いを相殺せずに痛みの大きさを2次関数の上昇中のように逓増させる。どこが一番痛いのだろう、痛みの神経の集中場所にも困っている。治療法は、医者と薬と趣味への没頭と愚痴なのである。痛み止めの薬は、一瞬痛みを和らげる。ある種の快感さえ覚える。痛みのおかげでこの快感が味わえる。しばらく経つと痛みで腹が立つ。ふー、次回に繰り越ししたくない話である。
覚える,忘れる,思い出す
「覚える」とは、「経験を脳みそに刻み込むことかな」と感じている。「覚える」という作業は、自然と不自然の2つに分けられるのではないか。自然とは、覚えようと思わなくても、自分史のように確実に刻み込まれる記憶である。不自然とは、趣味や勉強など能動的なものであると解釈している。趣味を覚えることは、朝から晩まで、そのことだけ考えてすごしているから苦労はいらない。勉強は、大変である。国語辞典では、勉強の意味を「努力をして困難に立ち向かうこと」とか「気がすすまないことを、仕方なしにすること」と書いてある。さらに厄介なのは、困難に立ち向かい、仕方なしに覚えたことをいとも簡単に忘れていくことである。しかし、努力して覚えたことをそんなに簡単に忘れるものではないはずである。
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年2月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス