【連載:第4回(完)】米国年次報告書(10-K)から学ぶ、実務で使える会計英語フレーズ~形容詞・副詞編


お絵描き会計士aki@USCPA

【編集部より】
将来は「会計×英語」を武器にキャリアを積みたいと考える人も多いのではないでしょうか。また、すでに実務で英語を使う仕事が増えてきたという受験生もいるかもしれません。
そこで、本連載では全4回にわたり、重工プラント大手企業で働くUSCPA(米国公認会計士)のakiさん(@zaku_accounting)に、米国年次報告書(10-K)を題材として「実務で使える会計英語フレーズ」を教えて頂きます。
<各回テーマ
・第1回:年次報告書(10-K)の概要
・第2回:頻出の会計英語フレーズ10選【動詞編】
・第3回:頻出の会計英語フレーズ10選【名詞編】
・第4回:頻出の会計英語フレーズ10選【形容詞・副詞編】

実務で使える会計英語フレーズ【形容詞・副詞編】10選

第3回では「実務で使える会計英語フレーズ【名詞編】10選」ということで、米国年次報告書(10-K)を参考に頻出名詞に関連するフレーズをご紹介しました。

最終回である第4回は形容詞・副詞編です。

さて本編に入る前にここまでのおさらいも兼ねて、連載各回の構成を簡単に図解しました。これまでの振り返りとして活用ください。

年次報告書→動詞→名詞と来て、形容詞と副詞で最終回です。

動詞と名詞を覚えるだけでも最低限の表現は可能ですが、形容詞と副詞を加えることで表現の幅が格段に広がりますよ。

それでは総仕上げの【形容詞・副詞編】スタートです。なお、各フレーズについては学習用に筆者にて原文を一部変更、簡略化しています。

①The consolidated financial statements are presented fairly in all material respects.

‟その連結財務諸表はすべての重要な点において正しく表示されている。”

「重要性の原則」は監査人、経理実務者のどちらにとっても重要な概念の1つ。この原則に基づいた「重要性」は「materiality」、「重要な」は「material」、「重要性が乏しい」は「immaterial」となります。監査報告書では頻出の単語になります!

material「(財務諸表上)重要な」

②The status of significant claims is summarized in Note 16.

‟重要な訴訟の状況は注記16に要約されている。”

「重要な」という意味の単語はいくつかあります。先ほどの「material」は「重要性の原則」に基づいた「重要な」という意味でしたが、「significant」はより広い意味での「重要な」として使われることが多いです。例えば「重要な会計方針」は「significant accounting policies」と表現されます。

significant「重要な、大きな影響を与える」

③The company has sufficient cash for the redemption of bonds due 2023.

‟当社は2023年満期の社債の償還に十分な現金を保有している。”

「十分な」という表現も会計上よく出てきますよね。反対の意味の「不十分な」は「insufficient」となります。こちらもあわせて覚えておくと便利です。

sufficient「十分な」

④We believe our valuation methods are appropriate.

‟当社の評価方法は適切だと考えている。”

会計処理が適切かどうかは重要な論点の1つですよね。「appropriate」は会計では必須の単語です。「適切に」という意味の副詞「appropriately」も頻出で、「appropriately record sales revenue」で「売上を適切に計上する」となります。

appropriate「適切な」

⑤A segment accounted for approximately 60% of our 2022 total sales revenue.

‟Aセグメントは当社2022年度売上合計の約60%を占める。”

数値や比率の報告の際は「約〜」と丸めますよね。「about」も同じ意味ですが、ビジネスでは「approximately」が使われることが多いです。

approximately「約」

⑥Interest expense decreased in 2021 primarily due to lower interest rates.

‟2021年度の支払利息は主に金利の低下により減少した。”

業績の増減理由の説明で頻出の単語です。「primarily due to〜」または「due primarily to〜」で「主に〜よって」となります。非常に便利なのでイディオムとしてセットで覚えましょう!

primarily「主に」

⑦Sales revenue increased due primarily to higher sales volume.

‟売上収益は主に販売量の増加により増加した。”

こちらも業績説明で頻出の単語です。「higher+名詞 」で「〇〇の増加」となり、増減理由の説明で非常に重宝します。一方「lower+名詞」で「〇〇の減少」となります。業績説明は前年度との比較を前提としているため、比較級となるわけですね。

higher+名詞「〇〇の増加」

⑧Operating profit was $1.5 billion and $1.0 billion during 2022 and 2021, respectively.

‟営業利益はそれぞれ2022年度が15億ドル、2021年度が10億ドルでした。”

業績説明シリーズの最後です。業績説明では年度ごとの数値を”それぞれ”並べて説明しますよね。その際に役立つのが「respectively」です。数字を並べた後で「〜, respectively.」として文末にくるのが一般的です。

respectively「それぞれ」

⑨We disposed of property, plant and equipment previously impaired.

‟当社は以前減損した有形固定資産を処分した。”

会計では期間や時系列を表現する単語は重宝します。
・previously「以前に」
・currently「今期に」
・subsequently「後に」
上記を使うことで時系列を踏まえた説明が可能になります。

previously「以前に」

⑩Other items have been omitted because they are not applicable.

‟その他の項目は該当なしのため記載を省略しています。”

「not applicable」は会計実務上、非常に便利なワードです! 例えば連結パッケージを海外子会社へ送付する際、入力対象外の項目もあると思います。その場合は「not applicable」を記載することで「対象外」と伝えることができます。

「該当ある場合」と伝えるには「if applicable」と記載してください。こちらもあわせて覚えておくと、資料の依頼や回答がスムーズになります。

not applicable「該当なし、対象外」

以上、会計実務で使える形容詞・副詞10選でした。

今回が連載の最後となります。はじめにも書きましたが、会計実務で使う英語表現はパターン化されたものが多いです。英語の勘定科目に加えて、この連載で紹介したフレーズ・単語を覚えることで実務上対応できる場面が格段に増えると思います。

また、会計英語力を上げるには米国年次報告書(10-K)を読むことが効果的。少しずつでいいので継続して読み進めていけば、間違いなく英語力がつきます。

会計ができて、英語もできると世界が広がり、チャンスが増えます。一緒にがんばっていきましょう!
私のブログやTwitterでは会計英語にも役立つ情報を発信していますので、ぜひご覧ください!

【参考】
ExxsonMobile, 10K, 2022
AT&T, 10K, 2022
Apple, 10K, 2022

【執筆者紹介】

お絵描き会計士aki@USCPA

米国公認会計士(ワシントン州)。
重工プラント大手経理にて連結決算(IFRS)、FP&A、M&Aなどに従事。「イラストの力で会計をもっと楽しく、わかりやすく」をモットーに、独自イラストを使って会計ファイナンスや英文会計を解説するブログを運営。プライベートでは3児のパパ。
・Twitter(@zaku_accounting
・ブログ「イラスト会計教室」


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