日商簿記1級、目指す価値はどのくらい?


平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)

【編集部より】

「日商簿記1級を目指す価値ってあるんでしょうか?」

編集部のTwitterに寄せられたコメントです。Twitterのタイムラインを見ても、こういった声をよく見かけます。

そこで、簿記検定や税理士試験などの指導キャリアがあり、実務にも詳しい平井孝道先生(株式会社M-Cass 代表取締役)に、「いま、日商簿記1級を目指す意味は何なのか」を教えていただきました。

合わせて、日商簿記1級に合格するための秘訣もお話しいただいたので、最後までぜひお読みください!

日商簿記1級を目指す価値はあるのか?

日商簿記1級を目指す価値なんてあるんだろうか。そんな疑問を感じながら勉強されている方は多いようです。

たしかに、日商簿記2級の出題範囲が改訂されたことで、「連結会計」や「税効果会計」といった論点が2級に組み込まれ、2級だけで十分じゃないか、といった気持ちもわかります。

しかし、私は「日商簿記1級を目指す価値は十分にある」と断言できます。

なぜなら、これからは「管理会計」(日商簿記検定でいう工業簿記・原価計算)の知識が求められていくからです。

「管理会計」を理解している経営者が少ない

私は現在、ベンチャー企業や中小企業にアドバイザーとして助言させていただく機会が多くあります。そこで感じるのが、「管理会計」を理解している方が少ないということ。そのため、作成される財務諸表は製造原価報告書だけであり、全体の原価はわかっていても、製品種類ごとの原価が把握できておらず、どの製品が足を引っ張っているのか、といった情報を経営者が認知できていないのです。

昨今は、経済新聞やビジネス系のテレビ番組で、すばらしいアイディアや高い技術力をもつ企業が紹介されていますが、メディアで見る派手なイメージとは裏腹に、財務的に厳しい会社(たとえば、粗利率が1桁)は想像以上に多い、と私は感じています。

やはりビジネスの世界は、アイディアや想いだけでは厳しく、「数字」に基づく管理が絶対に不可欠。将来的に、日本からFacebookやAmazonのような世界的企業を生み出すためには、財務会計・管理会計・ファイナンスといった「数字」をしっかりと理解し、活かせる人材が必要なのです。

この点で考えると、日商簿記2級の「工業簿記」は、基礎的な内容しか勉強しませんが、1級の「工業簿記・原価計算」では、直接原価計算方式P/LからCVP分析、意思決定会計などを幅広く、そして深く学習できます。そのため、日商簿記1級は、よりビジネスの現場で活かせる資格といえます。

税理士試験や会計士試験の受験生にとっての意味とは?

日商簿記1級を受験するのはビジネスパーソンだけではありません。税理士試験や公認会計士試験を受験される方にとって、日商簿記1級はどのような意味をもつのでしょうか?

まず、税理士試験を受験される方にとっては、やはり「管理会計」の知識は武器になります。クライアントとなる企業には製造業も多いでしょうし、その他の業種でも「管理会計」の知識は使えます。日商簿記1級を学ぶことで、サービスに税務以外の付加価値をつけることが可能になると思います。

次に、公認会計士試験を受験される方にとっては、日商簿記1級に合格することが公認会計士試験合格に向けたメルクマールとなります。日商簿記1級の過去問と短答式試験の過去問を並行して解いてみてください。日商簿記1級レベルの知識があれば、公認会計士試験の問題も結構な割合で解けることが実感できると思います。

【次ページ】日商簿記1級に合格するには?


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