
【編集部より】
会計士試験に合格して、あるいは新しい年になって、今年こそ英語を身につけようという方も多いと思います。本連載では、4回にわたって、海外展開をする企業に英語研修等を行う江上徹先生に連載していただきます。
第1回 使える英語を身に付けるために私がやったこと
第2回 ディクテーション
第3回 シャドーイング・リプロダクション
第4回 他にもいろいろ一人でできる勉強法
はじめに
第2回では「聞く」の王道としてディクテーションおよびリアルディクテーションを紹介しましたが、今回は「話す」の王道、しかもリスニングの効果も絶大!というシャドーイングについてお話しします。また、シャドーイングの応用編としてリプロダクションという訓練方法についても話をします。
回数をこなすべし!こなすべし!
シャドーイングという練習法は非常によく知られているので、読者の皆さんも聞いたことがあると思います。英語の音源を聞いて、その英語を追いかけるように発声するアレですね。
ご存じない方のために、わかりやすい動画のリンクを貼っておきます。
シャドーイングの実演
実演は1:00から!
ちなみに私が初めてシャドーイングをしたのは、とある監査法人に勤務していた時でした。
1年にわたってみっちりと英語を仕込まれるプログラムで、研修の費用は全額会社持ちなのですが、それゆえに課題や学習への取り組み姿勢は会社に報告が行くため、真面目に練習する必要があったのです。
監査法人でそれなりに忙しく働いていたので、練習に使えるのは主に週末。
生まれたばかりの長女を抱っこひもであやしつつ(これは全く苦にならない)、洗濯物を干しながら(これは若干の苦)シャドーイングの練習(これは苦)をしていたことを懐かしく思い出します。
この時のシャドーイングの課題は、アメリカの第42代大統領Bill Clinton氏が来日した時に出演したTVの討論番組での挨拶でした(下方にリンクあります)。
おそらく数百回は練習したので、今でもスラスラとシャドーイングすることができます。
そう、結局は回数なんですよ。語学なんてそんなもんです。
シャドーイングを練習する素材はネット上でたくさん出回っているので、もしあなたが初心者なら「シャドーイング 初心者」などと検索すればいくらでも素材を見つけることができますが、私からのおすすめ教材は以下の通りです。
「初心者」「中級者」「上級者」にわけてご紹介しています。
なお、ネットで検索して「初心者向け」と書いてある動画でも、実際に聞いてみると「いやー、これは初心者にはキツイんじゃない?」というものがありますのでご注意を。

ここで、シャドーイングする際に「ここだけ気を付けて!」というポイントをいくつか。
1.大きい声で!芸人ばりに声を張って!
私は多くの人に「英語を上手に話す第一歩は大きな声で話すこと」と言い続けています(連載第1回でも同じ内容を書きました)。普段はボソボソしゃべっているのに会議本番でいきなり大きな声を出すなんてできません。練習の段階から声を張るようにしましょう。
2.モノマネ芸人と筋トレ芸人
純ジャパにはむずかしい「r」や「th」といった発音はもちろん、スピードの緩急、強弱のつけ方など、とにかくモノマネを意識しましょう。これが上手な人は上達も早いです。また、最初のうちはとくに「r」なんて上手に舌が動きません。普段使ってない筋肉の動きなので、動かないのが当たり前なのです。でも、根気強く取り組んでいるうちにだんだんと筋肉も追いついてきて、あら不思議、数か月もすると形になっていくものです。
3.とにかく簡単なレベルから
継続は力なり=継続できるものを選ぶなり!
例えば、先に紹介したBill Clintonの挨拶を、いきなり全部シャドーイングするのは不可能です。10秒からせいぜい20秒程度に区切ってシャドーイングの練習を重ねましょう。
4.文字起こしがあるもの
英語を学ぼうとする人にとっては、これがないとそもそも自分のシャドーイングが正しいのかわかりません。
ちなみに最初のうちは文字を読みながらシャドーイングしても構いません。
初心者がいきなり文字も見ないでシャドーイングしなさいと言われてもムリなものはムリなんですよ。
5.文字起こしを読んで意味が分かるものを選ぶ
これ、実は重要です。読んでも意味が分からないのに、シャドーイングで音だけまねても、何のためにシャドーイングしているの?ってなりますよね。
さてここで、シャドーイングに飽き足らない向上心満載の皆さんに「リプロダクション」という訓練法をお伝えしたいと思います。
リプロダクションってなんだ?
多くの日本人は英語を話すときに、
① 日本語で話すことを考える
② 頭の中で英文に翻訳する
③ 作った英文を発声する
というプロセスを踏むと思いますが、それで発した英語はあくまで「日本語を英語に置き換えたもの」という感覚であり、「自分の言葉として英語を話している」感覚を持つことはなかなか難しいものです。
シャドーイングをしていても、英語で「発声」はしているが、意味を理解しながら「言葉」として話している感覚がないという方は多いはずです。
その点、リプロダクションの訓練を重ねると、英語を「言葉」として話している感覚を早く身につけることができます。ただし…、シャドーイングより難易度は高いです。
やり方
シャドーイングのように、音源を聞いてからその英語を発声する点は同じ。
違いは、シャドーイングは音を聞くのとほぼ同時に発声する(なので、意味を理解しなくても反射神経が良ければ発声はできる)のに対し、リプロダクションは一文をいったんすべて聞いてから、その一文を再現します。
これをするためには、その文章を頭の中に一時的に保存しておく必要があります。これ、なかなか難しいですよー。
おすすめの素材
第2回「ディクテーションの極意」でご紹介したSpeechlingでリプロダクションの練習も可能です。

気を付けることはただ一つ!簡単なところから始めること!最初は短い文章で!
特に最初のうちはかなり難しく感じると思います。その場合、Speechlingは難易度のレベルを調整できるので、無理することなくレベルを下げましょう。

いかがでしたか?
シャドーイングにせよリプロダクションにせよ、言語習得は「質より量」なので、根気強く続けていきましょう。
私の研修受講生にも話すのですが、英語でもスポーツでも勉強でも、一直線には上達しませんよね。じわじわと伸びる期間が続き、ある臨界点に達すると急にグイっと伸びる時期があります。そこに達すると、「あ、言葉として使えるようになっているかも…」と感じられるのですが、そこに達するまではなかなか成果が見えず、「やーめた」ってなる人が多いのです。

ただし、その壁さえ超えれば非常に大きな強みになります(ある意味、参入障壁ですよね)。皆さんはすでに会計という武器を持っていますので、ぜひそこに使える英語を加えてください!
さて、次回は連載の最終回。他にもいろいろある英語勉強法をご紹介します。
<プロフィール>
江上 徹(えがみ・とおる)
Leapfrog合同会社 代表社員
公認会計士
大学卒業後、電機メーカー、監査法人、広告代理店でキャリアを積み、2021年に独立起業。Leapfrog合同会社を設立し、代表社員に就任。
「日本人のポテンシャルはとても高い。まだまだ飛躍できる」という固い信念のもと、海外展開している企業あるいは海外展開をもくろむ企業を主なクライアントとして、「普通の日本人」が海外で戦うための必携スキルである「英語・ファイナンス・文化理解」をパッケージ化した人材育成プログラム「Altus Leap」を提供している。
HP:https://altusleap.com/
Mail:contact@altusleap.com