昔は縦書きだった!? 『会計法規集』で原文を読もう!


新井良明(公認会計士・税理士)

【編集部より】
受験生の皆さんは『会計法規集』という書籍をご存じでしょうか。会計士・税理士受験に欠かせない法令や基準を掲載している学習にオススメの1冊です。独学合格された方にお話を聞くと、「財務諸表論の学習でかなり使い込んだ」という声が編集部に寄せられることも多いですが、初学者の方が学習スタート期から手に取る機会は限られているかもしれません。
そこで、受験時代、『会計法規集』を使っていたという新井良明先生(公認会計士・税理士)に、そもそもどんな書籍かをご紹介いただきました。歴史を感じつつ、本書を手に取るきっかけにしていただけると嬉しいです!

こんにちは。公認会計士・税理士の新井良明と申します。
受験生のみなさんは『会計法規集』を使ったことがありますか?

私の受験生当時、副教材の1つとして『会計法規集』(中央経済社)を購入して、会計基準の原文を読むのに活用していました。今回は、そんな会計法規集についてのちょっとしたお話を記事にしたいと思います。
受験生の皆様はもちろん、すでに合格した方々も当時を振り返りながら読んで頂けると幸いです。

父の実家から出てきた46年前の『会計法規集』

私の祖母が高齢になり、自宅を手放すために部屋を整理することになりました。かつて父が使っていた部屋を片付けていると、『会計法規集』が出てきたのです。

父が使っていた46年前の『会計法規集』

父は残念ながら合格には至らなかったようですが、私の父も学生当時は公認会計士の勉強をしていたようです。
父の『会計法規集』を見たときの第一印象は…「薄っ!!!」でした。

現在、『会計法規集』を使って勉強している方も、上の写真を見て同じ感想をもったのではないでしょうか?
それもそのはず。詳しくは後で説明しますが、現在私の手元にある3冊の『会計法規集』を見比べると・・・

刊行年の異なる3つの『会計法規集』

このように見た目も厚さもそれぞれ異なります。よく見るとタイトルも少しずつ異なっていますね。

46年前の『会計法規集』奥付

父が受験生時代に使っていたものは、『〔最新版〕会計法規集』という書名です。
昭和46(1971)年3月に初版が発行され、父のものは本記事執筆時点から46年前の昭和52(1977)年4月に発行されたもので、この時点で既に185版発行されています。

46年前の『会計法規集』インデックスを見てみると?

46年前の『会計法規集』インデックス内容

現在、『会計法規集』をお持ちの方も、上の写真のようにインデックスを貼っている方も多いと思います。
当時の父も几帳面にインデックスを貼って使っていたようです。

そして、気になるのは「インデックスの内容」です。
財務会計論で今でも見かける「企業会計原則」・「企業会計原則注解」、「財務諸表規則」・「連結財務諸表規則」等があります。
また、管理会計論や監査論で学習する「原価計算基準」や「監査基準」も収録されています。

法律関係でいうと、当時は会社法ではなく「商法」が収録されています。また、金融商品取引法も当時は「証券取引法」でした。

企業会計基準が…ない!?

すでにお気づきの方もいるかと思いますが、46年前の『会計法規集』には「企業会計基準」が1つも収録されていません。

それもそのはず、企業会計基準が整備されたのは1990年代から、いわゆる会計ビッグバンと呼ばれる時期に公表されました。つまり、企業会計基準が収録されるのはずっと後の話なのです。
46年前の『会計法規集』がなぜ薄いかわかりました。

46年前の『会計法規集』から勉強の跡を覗いてみる

父の『会計法規集』で原価計算基準を見てみた

「原価計算基準」は当時から内容は変わっていません。当時の父も原価計算基準の大事なところに線を引きながら勉強していたようです。

原価計算の目的の中に出てくる「真実の原価」「原価管理」「予算編成」などは、皆さんも同じ箇所にマーカーをしているのではないでしょうか?

私の受験時代に近い14年前の『会計法規集』

14年前の『会計法規集』

今度は私が受験生時代の頃の『会計法規集』を見てみましょう。書名は『会計法規集(最新増補)』となっています。

当時、私が実際に使っていた版を確認したかったのですが、受験が終わったタイミングで大学の後輩受験生に譲ってしまい、手元にありません。
そこで、この機会に当時の『会計法規集』を中古で探しました。入手したのは第31版で2009年10月に発行されたものです。
書き込みやマーカーの内容からすると、当時の会計士受験生が使っていたものだと思います。
ちなみに、私の合格年次は2009年なので、これより少し前の28版~29版あたりを私は使っていたようです。

14年前の『会計法規集』奥付

14年前の『会計法規集』インデックスを見てみると?

14年前の『会計法規集』インデックス内容

同じく、この14年前の『会計法規集』のインデックスを見てみましょう。
父の『会計法規集』には手書きのインデックスが貼られていましたが、最新増補の会計法規集はインデックスシールが付属しています。便利な法規集に進化していますね。

インデックスの大半は「リース」「減損基準」「退職給付」「金融商品」といったように企業会計基準の内容が占めています。
先ほど紹介した「企業会計原則」や「原価計算基準」、「監査基準」も変わらず掲載されています。
また、この頃すでに「会社法」が登場し、証券取引法も「金融商品取引法」に変わっています。

勉強の跡を覗いてみる

14年前の『会計法規集』で原価計算基準を見てみた

先ほどと同じ原価計算基準のページを開いてみました。私の父のものは赤いペン、こちらは黄色とオレンジのマーカーと使う文具は異なりますが、似たような箇所を強調して勉強していた様子が伺えます。

現在の『会計法規集』

現在の『会計法規集』

現在の最新版は、『新版 会計法規集』という書名となり、2023年4月に発行されています。
先ほど紹介した2冊とは異なり、少し背が高く、緑色で親しみのある今風のデザインに大きく変わっています。

「昔の重厚な感じも個人的には良いけどなぁ~」と思いながらカバーを外してみると、当時の『会計法規集』と同じ茶色の表紙が出てきました。なんだか安心感がありました。

カバーをとった最新の『会計法規集』

もう一つ大きな違いは、「縦書き」から「横書き」に変わったことです。
受験時代は縦書きの『会計法規集』で基準を見ていましたが、今では実務で使う『会計監査六法』(日本公認会計士協会出版局)で横書きに見慣れているせいか、横書きがしっくり来るかもしれません。

最新の『会計法規集』は横書き

最新版の『会計法規集』の収録内容については、やはり「企業会計基準」が大半です。私の受験当時にはなかった「収益認識」や「包括利益」など、すべての企業会計基準が収録されています。

もちろん、基準のインデックスシールも付属しています。また、シールだけでなく、ページの端には「会計諸基準」「会社法」「金商法」「関連法規」と色分けがされていて、より見たいページが探しやすくなっています。

最新の『会計法規集』を横から見た図

受験時代に基準の「原文」に触れる

公認会計士試験の論文式試験では『法令基準集』が配られます。そんな論文式試験だけでなく、短答式試験の勉強においても、日頃から基準の「原文」に目を触れる機会が多いと、理解に役に立つと思います。

会計士受験生の場合、普段は受験用の法令基準集を用いて勉強している人も多いと思いますが、辞書のつもりで『会計法規集』を使ってみるのはいかがでしょうか。

【執筆者紹介】

新井 良明(あらい・よしあき)

公認会計士・税理士
足立区生まれ足立区育ち
2009年会計士試験合格後、TAC公認会計士講座で講師、上場企業経理、会計コンサルティング会社での決算支援等を経て2016年に愛知県の豊橋市でIターン起業。その後2021年に独立して翌年地元足立区に戻って税理士登録。趣味はサッカーとベースギター、そして時々プロレスオタク。
Xアカウント(@yoshaking

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わたしの独立開業日誌 #会計士・新井良明

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