数字でみる税理士試験のトレンド――【前編】全体・新規登録者と会計科目の傾向


岸川 祐次
(税理士・東京青年税理士連盟組織部副部長)

はじめに
税理士試験を受ける受験生が年々減少していると言われています。昔に比べて稼げない、5科目合格まで相当の時間を必要とする、年1回の試験にかかわらず問題の不備に振り回される等、さまざまな理由がささやかれています。一方、税理士登録者数は令和3年度末に8万人を超えました。他の国家資格に比べ資格取得手段が多岐にわたるためこのような流れになっていると推測できます。
では、実際にはどうなっているのでしょうか? 本稿では2回にわたり、税理士登録者数等や試験科目別の受験者数・合格者数・合格率について、比較的長期での推移をもとにトレンドをみてみます。受験をするか否かの意思決定、数字から読み取れる傾向と対策をもとにした科目選択等の参考にしていただければ幸いです。
前編 全体登録者・新規登録者と会計科目の傾向
後編 税理士試験実受験者率と税法科目の傾向

全体登録者数の推移

令和3年度末現在の税理士登録者数は80,163名です。
登録人数構成として最多を占めるのは試験合格者で35,010名(占有率43.6%)、次いで試験免除者で31,340名(同39.0%)、公認会計士10,759名(同13.4%)となっています。
ちなみに試験免除者は主に税務署等に一定期間勤務した者(いわゆる国税OB)や大学院を卒業した者で、税理士試験の全部または一部を免除された者で構成されています。
また、特別試験合格者は税務職員に対する特別な税理士試験に合格した者をいい、現在特別試験制度は廃止されています。その他は税務代理士等で税理士法施行に合わせて従来の資格から税理士登録した者等です。

トレンドをみると試験合格者はほぼ横ばい、試験免除者が増加、公認会計士が微増という結果です。

出所:日本税理士会連合会会報「税理士界」より著者集計

新規登録者数の推移

令和3年度末の税理士新規登録者数は2,622名です。
登録人数構成として最多を占めるのは試験免除者で1,440名(占有率54.9%)、次いで試験合格者で628名(同23.9%)、その次に公認会計士520名(同19.8%)となっています。

こちらのトレンドとしては試験免除者と公認会計士がほぼ横ばい、試験合格者が減少、新規登録者全体でも微減となっています。

出所:日本税理士会連合会会報「税理士界」より著者集計

登録者のトレンドとして読めるのは、①税理士登録者数が減少に転じてきている、②登録者の割合は試験免除者が主流となっている、③公認会計士から税理士登録をする者も増加してきている、ということです。

税理士試験科目受験者の推移

次に、税理士試験科目のトレンドをみてみましょう。

全体の受験者総数と平均合格率の推移は以下のとおりです。
平成25年度以降、令和2年度まで減少数が著しくなっていますが、直近2年間では盛り返してきています。

減少傾向がはじまる前年あたりの状況としては、平成23年度は東日本大震災が起きた年、翌年平成24年度は簿記論の問題に理論が出たり、財務諸表論の理論もかなり難しく、専門学校での勉強方法では対策がしづらかったとの評もありました(問題を批判しているわけではありません。念のため)。

また、平成24年は12月に民主党政権から自民党に政権が移り、日経平均株価が平成24年は10,396.18円でしたが、翌25年は16,291.31円に跳ね上がっています(不況になると国家試験受験者が増えるといわれていますね)。

出所:国税庁ホームページより著者集計(以下グラフ同)

(1)簿記論

簿記論は令和2年度の受験者数をピークに少しずつ持ち直しています。
令和2年度はコロナ罹患リスクと受験直前に受験会場の変更があった影響も減少の要因として考えられます。
令和3年度以降の増加については、①令和元年度以降の合格率が上がってきたこと、②令和5年度以降に会計科目の受験要件が撤廃されることによる既存受験生の駆け込み受験、③日税連による租税教育推進のための租税教室の開催等による税理士業務の認知度向上等が増加影響の一因と思われます。

(2)財務諸表論

簿記論と同じく財務諸表論の受験者数は増加傾向です。
合格率は直近では14.8%と下がっていますが、それでも簿記論、固定資産税、住民税の次に高い合格率であり、例年のトレンドをみても他の科目と比べ合格率は高めの科目です。

以上、税理士登録者と税理士試験受験者と会計科目のトレンドをみてきました。
次回は、実受験者率の推移と税法科目受験者のトレンドをみていきます。

つづく

(著者略歴)
岸川 祐次
(きしかわ ゆうじ)
医療介護分野(主に病院と介護施設)に特化した税理士法人に勤務する傍ら、東京青年税理士連盟(任意団体)に所属し、納税者の権利擁護を目指した活動と、同組織部副部長として受験生向けの情報をtwitterへ積極的に発信している。
東京青年税理士連盟HP 
東京青年税理士連盟twitter  


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