【財務諸表論】「国語力」アップで1点でも多くとる! かえる先生が教える答案作成テクニック 


諸角 崇順

【編集部から】
「かえる先生に聞く これってアリ?ナシ? 答案の書き方Q&A5」にて、財務諸表論の答案作成に関する素朴なギモンに答えていただいた諸角崇順先生(@Sakura_Saku1218)。
今回は、実際の問題例を使って、問題の「読み方」・「答え方」という、具体的かつ実践的なテクニックをご紹介いただきます。
受験生のみなさんは今一度、自分自身の問題の「読み方」・「答え方」を確認してみましょう!

前回の記事で「マナー違反の答案を書く受験生が多い」とお伝えしましたが、25年以上にわたって財務諸表論を指導するなかで気づいたことがもう1つあります。

それは、「受験生の国語力のなさ」です。ここでいう国語力とは、理論問題の読み方・答え方のこと。

本来、国語力は一朝一夕で身につくものではありませんが、「試験問題」を前提とすれば、ある程度のテクニックでカバーできます。

今回は、このテクニックについて、実例を用いて解説します。

問題文には解答のキーワードが使われている!

出題者が問題を作成するにあたって気をつけていることはどんなことでしょうか? もちろん、難易度や解答量もありますが、最も気をつけるのが別解を出さないことです。

理論問題で2つも3つも解答がある、つまり別解が存在するとなると採点が非常に煩雑になってしまいます。「えっと、このタイプの解答だと、このキーワードは2点で…」というように、複数の模範解答を頭に思い浮かべながら採点するわけですから、本当に本当に大変な作業です。

それでは今から、出題者がどのように別解のない理論問題を作成するのか、その手順を具体的に紹介します。この手順を知れば、「理論問題は意外と簡単に解答できる」ことがわかると思います。

(例1)
 政治について述べなさい。

このような問題を出題すると、採点する側は大変です。ある人はアメリカの政治について書くかもしれませんし、ある人は会社などの組織における派閥力学について書くかもしれません。別解が多く出ることが予想されるので、一律の採点基準を作るのが大変です。

そこで、問題を次のようにしたとしましょう。

(例2)
 日本の政治について述べなさい。

このように問題を変えたとしても、まだまだ別解は出るでしょう。現代の日本の政治について書く方もいれば、江戸時代の日本の政治について書く方もいるかもしれません。

それでは、さらに次のように変えてみましょう。

(例3)
 岸田政権となってからの日本の政治について述べなさい。

まだ別解の出る余地は残っていますが、かなり解答範囲が絞られることになりました。

みなさんは、(例3)に対する答えをどのように書くでしょうか? 「岸田政権になってからの日本の政治は~」というように書くと思います。ここで、アメリカの政治や江戸時代の日本の政治について書けば、どう考えても点数はありません。

そして、ここで注目してほしいのは、解答のなかに問題文で使われている名詞が入っていることなのです。

(例3)
 岸田政権となってからの日本の政治について述べなさい。

と問われて、「1940年当時のアメリカの政治は~」などと書く方はいません。「岸田政権になってからの日本の政治は~」と書くはずなのです。

当たり前だと思うかもしれませんが、出題者は別解を出さないようにするために、言い換えれば、想定した模範解答に誘導するために、解答で使うことになる用語を問題文に使わざるをえないのです。このことは、ぜひとも知っておいてください。

財務諸表論の問題で考えてみよう!

それでは、ここから財務諸表論の問題を使って、理論問題の読み方・答え方を確認していきましょう!

(例4)
 動態論会計においては、損益計算書が貸借対照表に先行して作成される、とする考え方があります。そこで、貸借対照表はどのように作成されるのかを簡潔に説明しなさい。

みなさんは、この問題に対して、どのように答えますか?

〔よくない解答例〕
 貸借対照表は、正規の簿記の原則にしたがって作成される正確な会計帳簿から誘導的に作成、すなわち誘導法に基づき作成される。

この解答だと、配点の6割程度しか得点できていないことになります。出題者が上記のような解答を期待しているのであれば、問題文を次のように作成するからです。

(例4‘)
 動態論会計において貸借対照表はどのように作成されるのかを簡潔に説明しなさい。

(例4)と(例4‘)では明らかに問題文が異なります。当然ですが、赤字部分を無視した〔よくない解答例〕だと満点にはなりません。

(例4)
 動態論会計においては、損益計算書が貸借対照表に先行して作成される、とする考え方があります。そこで、貸借対照表はどのように作成されるのかを簡潔に説明しなさい。

よって、(例4)の模範解答は次のようになります。

〔模範解答例〕
 動態論会計においては、正規の簿記の原則にしたがって作成された正確な会計帳簿から誘導法により、まず収益と費用が損益計算書に誘導され損益計算書が作成される。その後、残った資産、負債、純資産が同じく誘導法により貸借対照表に誘導され、貸借対照表が作成されることとなる。

さて、このような〔模範解答例〕を書くために気をつけることは何でしょうか? 

それはとても簡単なことで、「問題文に使われている会計学上の名詞を使う」、ただそれだけです。

ちなみに(例4)で使われていた会計学上の名詞は、動態論損益計算書貸借対照表の3つです。

(例4)
 動態論会計においては、損益計算書貸借対照表に先行して作成される、とする考え方があります。そこで、貸借対照表はどのように作成されるのかを簡潔に説明しなさい。

自分が作成した解答のなかに、少なくともこの3つの会計学上の名詞が含まれていないと点数にはつながりません。そして、それら問題文で使われている会計学上の名詞+その問題を答えるうえでのメインキーワード「誘導法」が揃って満点に近づきます。

ここまで見てきたように、別解が出ないようにするためには、どうしても解答で必要とされる用語を問題文で使わざるをえません。財務諸表論の受験者は1万人前後いるので、どうしても効率的な採点ができるような問題となってしまうのです。

本試験問題を見てみよう!

それでは、本試験問題で実践してみましょう。

問題文の会計学上の名詞を探すと、次の5つが見つかります(実際の試験では、マーカーをひいてみてください)。

第69回〔第二問〕問1(3)
 (2)の会計の体系のもとにおいても時価基準(貸借対照表上の資産・負債について、常に期末時点の時価で評価することを求める考え方)が適用されることがあるが、時価評価差額が直ちに当該年度の損益として処理されないこともある。例えば、客観的な時価の測定が可能なその他有価証券には時価基準が適用されるが、その評価差額のすべてが直ちに当該年度の損益として処理されるわけではない。即時損益処理が行われないのはなぜか、国際的な動向(国際的な同質性・比較可能性を含む。)以外の理由を述べなさい。
(筆者注):(2)の会計 = 歴史的原価会計

この問題のメインキーワードは「事業遂行上等の必要性」となるので、このキーワードが思い浮かんだ方は高得点が狙えます。

〔模範解答例〕
 客観的な時価の測定が可能なその他有価証券の時価情報は、投資者が投資意思決定をする際に有用な情報ではあるが、その他有価証券は事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うには制約を伴うので、時価基準を適用した結果である時価評価差額即時損益処理することは原則として行われていない。

国語力アップで失点を防げる!

この時期ほとんどの受験生は、合格に必要な知識のインプットが終わり、その知識を得点につなげるアウトプットの訓練をしていると思います。

ただ、ある程度学習が進んだ段階での1点の上積み、つまり59点を60点に上げることは本当に大変です。

しかし、「1点を得るのも1点を失うことを防ぐのも効果は同じ」と考えるならば、前回と今回の記事で数点分の失点を防ぐことができるようになったはずで、得点力も数点分上がったはずです。

出題者・採点者の視点は非常に重要です。前回と今回の記事を通じて、解答の書き方・問題文の読み方を再確認し、合格につなげてほしいと心より願っています。

<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、一昨年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。また、今夏から規模を拡大した資格学校を開校する予定。


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