大学在学中に2年で官報合格! 効果的な「理論暗記」の方法とは?


後藤元哉(税理士試験合格者)

【編集部より】
国税庁公表の「令和5年度(第73回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)」によると、大学在学中の5科目達成者数は4名(実人員)とのこと。会計人コースWebに掲載した「税理士試験合格体験記2023」にも大学在学中合格者による体験談が掲載され、現役受験生に多くの刺激を与えています。
そこで、今回はそのうちのお一人である後藤元哉さんに、直前期の勉強法についてより詳しく教えていただきました(全2回)。学生受験生はもちろん、社会人受験生にとっても参考になるやり方が満載です!
・前編:効果的な「模試の解き直し」と「過去問演習」の方法とは?
・後編:効果的な「理論暗記」の方法とは?

現時点で暗記できていなくても焦らない

理論暗記には、覚えているか覚えていないか、つまり0か100しかありません。理論は本番で100になっていれば合格することができるので、現時点で0でも焦らないでください。

あくまで私の経験上(同じように感じている受験生も多いと思いますが)、暗記が完成するときは、少しずつ完成されるとか、完成される予兆があるわけではなく、ある日突然やってくるように感じました。

理論が覚えられていない状態では、暗記ができるようになっているイメージがわかず、終わりが見えないように感じますが、あきらめず継続することで必ず暗記できるようになると思います。

最も効果的な方法は「暗唱」

暗記させた理論を定着させるために最も有効な方法は「暗唱」だと思います。電車の中や予備校の休み時間で、他の受験生が理論暗記教材の『理論サブノート』(以下「理サブ」)を使っている姿を見ると、ほとんどの人がじっと読んでいるだけです。

私がオススメする方法は、まずは顔を上げてそのページに書いてあることを暗唱し、理サブは暗唱後の確認として使うことです。私は脳科学者ではないので断言はできませんが、記憶は情報のインプット(読む、聞く)よりもアウトプット(話す、思い浮かべる)のほうが定着しやすいと感じました。

しかし、暗唱をするためにはそのページの内容をある程度は暗記している必要があるので、すべての理論で実践することは難しいと思います。ある程度暗記している理論は暗唱、暗記中の理論は暗唱を目標に音読をするようにしていました。

この時期に理サブの冒頭にある1ー1の理論を暗記できていない受験生はほとんどいないと思うので、まずは1ー1から暗唱してみるとよいでしょう。

暗唱は普段の生活の中で行う

直前期になると模試の解き直し、過去問演習、計算の総合問題、新規理論の暗記などやるべきことがたくさんあります。そんな状況の中で、貴重な勉強時間を暗記した理論の定着に使ってしまうのは、非常にもったいないです。先ほど暗唱が最も効果的だと説明しましたが、その暗唱は勉強時間以外の時間で取り組むことがベストです。

私は、電車での移動時間はもちろん、自転車に乗りながら、風呂に入りながら、趣味の筋トレの休憩時間中など、日常生活のあらゆる時間を使って暗唱していました。また、電車での移動の際、あえて目的地の1駅前で降りて、理論を暗唱しながら歩くということもやっていました。

生活スタイルは人それぞれ異なると思いますが、生活の中に理論を暗唱する余地は必ずあるので、空いた時間で暗記済みの理論を定着させましょう。

模試出題の未学習理論と一部の通達も学習対象にする

私は直前期に入るときには理論暗記がほとんど終わっていたので、模試出題の未学習理論と一部の通達も一字一句ではありませんが覚えていました。そのおかげで本試験では法人税法で3点、消費税法で2点取れました。正直これをやっても2、3点レベルなので、比較的余裕があって確実に合格したい方にのみオススメします。

注意していただきたいのは、税理士試験の受験勉強としては、未学習項目は模試に出題されたもの、通達はテキストか模試の解説にあるものだけにすることです。税理士試験は相対評価なので、予備校の学習範囲を超えてしまうと正答率が低すぎて正解したとしても採点されない可能性があるからです。

現時点で暗記が進んでいない人は「選択と集中」

ここまである程度理論を覚えている方向けにオススメの方法を紹介しましたが、ここからは全く暗記が進んでいない方向けに少しでも合格確率を上げる方法を紹介します。おそらく全受験生の約半数は理サブをあまり暗記できていないと思います。

その状態から少しでも本試験で勝負できるようにするためには、暗記対象を絞るしかないと思います。ありがたいことに予備校は理論のランク表を提供してくれるので、Aランクだけ暗記の対象とするとよいでしょう。

さらに理サブには1題の理論にいくつかのタイトルがあるので、その中で重要なタイトルだけの暗記でも大丈夫です。具体的にどのタイトルを覚えればよいのかは学習する科目や理論暗記の状況によって変わってくるので、予備校の先生に質問したり、X(旧Twitter)でその科目の合格者または成績上位者に相談したりしてみるのもよいでしょう。

私が受験した回の本試験では、Aランクの重要理論のつまみ食いだけでもボーダーに達することは可能だったと思うので、問題によっては十分合格を狙えます。諦めるのはまだ早いです。

どうしても覚えられない人はAランク理論を音読

おそらく現時点で理論暗記が進んでいない方の多くが、自分の暗記方法を確立できていない、なかなか覚えられるようにならず理論暗記が億劫になっている、多忙で時間がとれないなどにあてはまると思います。

そのような方が本試験までに理論を暗記することはかなり難しいと思いますが、本試験で少しでも戦えるようにするために、上述した方法で、絞った理論を毎日音読(できなければ黙読)してみてください。音読をする際に暗記しようと思って読まなくてもよいので、すらすら噛まずに音読できる状態をまずは目指してみるとよいでしょう。

理サブを見開きページ読むだけだと3分程度しかかからないと思うので、30題やったとしても1日90分です。毎日の音読を6月から始めたとすると、約60回音読することができます。1つの理論を60回も音読できると思うと、何題かは暗記できるような気がしませんか?

おわりに〜本試験でのエピソード

最後に私の本試験でのエピソードを紹介したいと思います。

2年目の本試験前日、緊張のあまり全く寝ることができず、徹夜状態で試験会場に向かいました。試験が始まるまでは少しでも頭を休ませようと、周りが勉強している中、机に伏せてました。周りの受験生からは「あいつ落ちたな」と思われていたでしょうね(笑)。

ところが、試験本番では、全く寝ていないはずなのにしっかりと集中して2時間戦うことができました。

このエピソードから何を伝えたいかというと、人間1日くらい寝なくてもなんとかなるということと、試験当日は勉強をすることが正解とは限らず、リラックスして過ごしてみるのもよいかもしれないということです。

いよいよ本試験が近づいてきて、受験生の皆さんは緊張や不安を感じていると思います。

そんな方々に、前回の私の合格体験記を含めて、少しでも参考になる情報やモチベーションをアップさせる情報を提供できていれば幸いです。

ここまで合格体験記を読んでいただいて本当にありがとうございました。皆さんの合格を心から願っています!

<執筆者紹介>

後藤元哉(ごとう・もとや)

2024年3月愛知学院大学商学部卒業、現在は税理士法人に勤務。
大学在学中に2年で税理士試験官報合格。合格科目は、簿記論、財務諸表論、国税徴収法(2022年度合格)、法人税法、消費税法(2023年合格)。受験回数は全科目1回。
簿記論、財務諸表論は1月から資格の大原の通学講座「初学者短期合格コース」を受講し、国税徴収法は3月から資格の大原の通信講座「初学者短期合格コース(1月開講)」を受講。法人税法、消費税法は9月から資格の大原の通学講座「初学者一発合格コース」を受講。

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