【『財務会計講義』を読もう!】第7回(最終回):割引現在価値


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

【編集部より】

税理士試験の財務諸表論、公認会計士試験の財務会計論。
「計算は得意だけど理論はニガテ」という受験生の方は多いですよね。

理論が得意になるためには、個々の論点をただ暗記するのではなく、隣り合った論点を「総合的かつ横断的」に理解することが大事です! 
その1つの学習方法が、基本書を使って、キーワードをもとにさまざまな箇所で解説されている内容を横断的に押さえること。

本連載では、長島正浩先生(茨城キリスト教大学経営学部教授)に、代表的な基本書である『財務会計講義』(桜井久勝著)の索引を手がかりに、「総合的かつ横断的」な理解に不可欠な論点を解説していただきます。

ぜひ理論の得点アップにお役に立てください!

ジタバタしてみる・・・

 この連載も最終回となった。最後くらいマジメに書こうと思ったが、こう言うと今まではフマジメだったのかと誤解されそうなので、従来通りフマジメなことをマジメに書くことにした。

 本試験が迫ってくると、よく「今さらジタバタしてもしょうがない」という声が聞こえてくる。30年前の私なら「そうだよね。そんな見苦しいところ見せられないし」と素直に従った。でも今なら他人から言われたことに素直に従うことはないし、とりあえずは反抗してみせる。そうだ、いつの間にか第3反抗期に入っていたのだ。

 なぜそこまで反抗するのか、原因分析をしてみた。まずは「ジタバタ」とは何か、定義から調べるのが常套手段である。国語辞典には「切迫した事態に何とか対処しようとして見苦しい行動をとる様子」とある。なるほど、切迫した事態は自分に起きていることで、見苦しいと見える様子は他人からの目線なのだ。要するに「この事態を切り抜けるにはなりふり構ってられない」し、「こっちの事情も知らず無責任なアドバイスするなよ」ということなのである。

 ということで、この30年間、何かにつけ「ジタバタ」してきた私はあることに気づいた。この背水の陣を敷いたともいえる「ジタバタ」であるが、思わぬ集中力を発揮するということである。なので、あえて切迫した事態にもって行き、そして「ジタバタ」してみるのである。受験勉強なら、他人の目を気にして「ジタバタしても見苦しいだけ」と達観しているより、「なりふり構わずラストスパート」をかけた者が勝つのである。

 さて、本連載において7回目の「ジタバタ」がようやく終わりそうである。

索引を見てみよう

 本題に入ろう。

 これまでと同様、お手元に『財務会計講義』がある人は、該当ページを確認していただき、今は手元にないという人は、学習ポイントだけでも眺めていただければ十分である。

 「割引現在価値」は、p.84、p.143、p.189、p.194、p.242、p.247の6カ所にも及ぶ。よって、各ページの概要だけを、まずは確認していこう。

p.84

【概要】資産概念
 資産評価の基礎概念として、将来キャッシュ・フローの割引現在価値(discounted present value of future cash flow)が用いられることがあり、その場合当該資産の評価額は割引現在価値で測定される。

p.143

【概要】貸倒引当金
 貸倒引当金の算定方法として、貸倒懸念債権については、割引現在価値による方法(将来の見積キャッシュ・フローを約定利子率で割引いた現在価値と、帳簿価額との差額を引当金とする方法)がある。

p.189

【概要】減損会計
 減損処理における回収可能価額は、①売却による回収額としての正味売却価額と、②継続使用による回収額としての使用価値(将来キャッシュ・フローの割引現在価値)のうち、いずれか大きい方である。

p.194

【概要】リース会計
 リース資産の取得原価は、貸手の購入価額が不明の場合、借手の見積現金購入価額と、リース料総額の割引現在価値のいずれか低い方で決定される。

p.242

【概要】退職給付会計
 各期の退職給付の発生額は将来時点を基準とするから、これを所定の割引率と退職時までの期間により現在価値に割り引いて、現価方式での評価額を算定する。

p.247

【概要】資産除去債務会計
 資産除去債務を伴う固定資産を取得・建設・開発した企業は、その時点で予想される将来の除去のための支出額を見積って、その割引現在価値を算定し、これを資産除去債務として負債に計上する。

次ページ「資産評価の基準」


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