【税理士試験】「答練」「模試」120%活用術(前編)


税理士 堤 昭博

はじめまして、税理士の堤と申します。直前期となり答練も本格化する時期ですね。私は大学時代から税理士試験の勉強を始めて2科目合格後に税理士法人に就職し、働きながら3科目合格しました(だいぶ時間はかかりましたが…)。そのため、受験専念のときと働きながらのとき、それぞれの環境に応じて勉強方法を変えました。

今回はそのあたりも含めてお話させていただき、少しでも皆さんの今後の参考になればと思います。

答練・過去問・総合問題 何を解く?

直前期になると総合問題を解きたくなります。総合問題を解くと「やった感」が出て、なんだか満足して気分的にも安心しますよね。

専門学校からも総合問題集や過去問などが出版されていますが、私の長い受験歴のなかで最終的に効果的だったのは、そういった総合問題集や過去問には手をつけず、答練をひたすら解き直すことでした

専門学校の答練は、全部で月3回×3ヵ月+全国模試というのが一番オーソドックスだと思います。専門学校の答練は非常によくできていて、月3回×3ヵ月の答練で、テキストでの重要な論点はすべて網羅できるように作成されています。

そのため、まずは答練を集中的に解き直すことで、かなり特殊な問題以外は、問題文を読んだら瞬間的にどの計算式を使うのかわかるようになります。その結果、苦手分野がなくなり全体的な復習が完了したことになるのです。

イメージすると上の表の感じです。A~Rまで計算の項目を計9回の答練で網羅するようになっています。

答練を完璧にこなしていないのに、不安だからといって過去問や総合問題集などに手を出してしまうと、すべての学習内容の復習が完了できなくなってしまいます。

他校の答練も解く必要はある?

自分がTACに通っていたら、やはり大原の問題は気になるところです。気持ちはわかります。私も受験時代に自分が通っていた学校以外の専門学校の問題を解いていた時期もありました。

しかし、自分の通っている学校の答練が完璧ではないのに、他校の問題に手を出してしまうと、先ほどいったように網羅的な復習が完了していないことになります。

中途半端に他校の問題に手を出すよりは、まずは自分の通っている学校の問題をやり込みましょう。

受験勉強の環境に応じて答練の活用を考える

ここまで散々、自分の学校の答練を集中してやったほうがよいといいましたが、やはり他校の問題も気になると思います。そこで、ここからは皆さんご自身の受験勉強の環境に応じた答練の使い方を考えていきましょう。

受験勉強の環境は、主に「受験専念型」と「仕事と両立型」に分かれます。私は両方経験しているので、その経験をもとにお話します。

「受験専念型」の場合

受験専念型の方は、1~2科目なら他校の問題も解いて大丈夫です。受験専念型の方は、朝から夕方まで勉強できる環境にあります。この場合、だいたい直前期後半になってくると、答練を解き直しすぎて問題を覚えてしまい、解き方が雑になることがあります。そして、最終的に解く問題がなくなってきます。

何回も解き直して、復習自体はうまくいっているのであれば、少し表現や出題形式が違う他校の問題に触れておくものよいでしょう。

「仕事と両立型」の場合

仕事量にもよりますが、私は働きながら受験する方については、自分の通っている学校の問題だけで十分だと思っています。私も、働きはじめてからは他校の問題はほぼ解きませんでした。

働きながらですと、基本的に勉強時間は受験専念型に比べ大きく減ります。少ない時間で受験専念型の方たちに対抗するには、効率的に復習をしていかなければなりません。そのため、他校の問題のことはまず考えずに、自分の通っている学校の問題を完璧になるまで解き直しましょう。

全国模試は他校のも受けるべき?

答練は、ここまでお話したとおりですが、では全国模試はどうすべきでしょうか? これは、受験勉強の環境に加えて受験歴も考慮しましょう。

① 受験1年目は時間があれば受けたほうがよい

これは単なる試験慣れのためです。本試験の独特の緊張感でも実力が出せるように、普段テストを受けている場所とは違う場所で問題を解いて、慣れていない場所で緊張した状態でも普段の力が発揮できるようにします。

ただ、1年目でも勉強があまり順調に進んでいない方は、模試を受けるよりも、わからない箇所の復習に時間を充てたほうがよいでしょう。

② 「受験専念型」は両方受けるのもあり

受験専念型ですと、先ほどもお話しましたが、問題を解きすぎて解く問題がなくなってきます。私は、法人税法の2年目がこの状態でした。そのため、新しい問題を入手する必要があります。そうなると、他校の問題を自宅や自習室で解くよりは、環境も変えて緊張感も味わいながら解ける他校の全国模試は、受けておいて損はありません。

③ 「仕事と両立型」は受けなくてもよい

働きながら受験される方は、他校の模試は受ける必要はありません。これは単純に時間がないからです。働きながらで過去に何度か受験経験があるのでしたら、試験の緊張感もわかっていますし時間もありませんから、模試を受ける時間を今まで受けた答練の復習に充てて苦手な部分を減らしましょう。

④ 理論は気になるから情報を入手する

全国模試自体は他校のものを受けなくても、理論だけはどんな問題が出たのかは知っておきたいところです。今の時代は、理論丸暗記では点数が伸びない時代です。なるべく色々な理論の問題にあたっておきましょう。

▶次回(5月13日掲載)は、「答練の解き直し」についてお伝えします。

〈執筆者紹介〉
堤 昭博(つつみ・あきひろ)
大学在学中から税理士試験の勉強を始め、2科目合格後に名古屋の税理士法人へ就職。
働きながら残りの3科目に合格するも合格までに14年を費やし、2015年3月に税理士登録。
2018年9月に15年勤務した税理士法人を退職し、同年10月に愛知県岡崎市にて堤昭博税理士事務所を開業。現在、法人のお客様を中心に活動し、金融機関の職員の方へのセミナー講師などもしている。
自身の長い受験経験からの勉強法や趣味の空手のことなどを気ままに書いているブログ「笑じわブログ。」を運営中。

※ 本記事は、会計人コース2019年5月号掲載「「答練」「模試」120%活用術」を編集部で再編集したものです。バックナンバーはこちらからお買い求めください。


関連記事

ページ上部へ戻る