春からの会計系資格スタートガイド【税理士】前編


【編集部より】
新年度が目前のこの時期、「今春から資格取得を目指そう!」と考えている人も多いのではないでしょうか。とくに、就職や転職を念頭に会計系資格に興味を持つ人もいるはずです。
そこで、「税理士になりたい!」と考える人のために、「何」から始め、「どこ」を目指して学習スタートすればよいのか、資格の大原講師の野田朋代先生(簿記論・財務諸表論担当)にアドバイスを頂きました。
前編ではスケジュールと学習方法について、後編ではモチベーションについて伺います。

春から目指す場合の学習スケジュールはどうする?

編集部 税理士試験の場合、9月に勉強をスタートし、翌年8月の本試験受験を目指すのがスタンダードな学習期間と言えますが、「春から始める人」にはどのような特徴がありますか。

野田先生 私が担当している税理士講座では、社会人が中心ですが、春から受講を始める人には学生も増えてきました。社会人と学生で、ざっと半々くらいの印象です。

資格の大原では、5月開講として約1年半で合格を目指すコースがありますが、その受講生の中でも最近、目立つのは大学2~3年生ですね。

「これから就職に向けて役立つ力をつけたい」、「税理士を目指すんだ」という明確な意識でスタートする人が多いように思います。

税理士試験の会計科目については受験資格が撤廃されたこともあり、そういった情報をいち早くキャッチして、目指す人も出てきているようです。

編集部 社会人と学生では受験勉強に割ける時間が違いますが、それぞれで「学習スケジュール」も異なるのでしょうか。

野田先生 確かに、学生の場合は春休みや夏休みがあるといったとはありますが、“学生だから”、“社会人だから”ということは、実はあまり関係ありません。社会人でも繁忙期は皆さんそれぞれに違いますよね。なので、学生・社会人問わず、「皆が違う」というのが前提です。

「基礎期」「応用期」「直前期」、重点を置く時期は?

編集部 一般的には9月開講の1年で合格を目指すコースが定番ですが、5月開講の1年半コースでは学習スケジュールを少しゆったり組むのでしょうか。

野田先生 そうです。はっきり言えば、‟ゆっくり”ですね。9月開講では1週間に2回講義ですが、1年半コースは1週間に1回のペースで講義が進みます。その分、復習もしっかりでき、多科目も学習できます。つまり、社会人受験生でも簿記論と財務諸表論を同時に勉強することが可能になります。

編集部 税理士試験の学習スケジュールの場合、一般的には9~12月が基礎期、12~4月が応用期、4月以降が直前期と言われます。春から始める場合は少しゆっくりスケジュールを組めるということで、どの時期に重点を置くと合格により近づけるでしょうか。

野田先生 それは絶対に「基礎期」ですね! 家を建てるのと同じで、基礎がしっかりしていないと上にいくら積んでも崩れてしまいます。春から始めるのであれば、基礎期を長く取れるので、その点は有利です。なので、たとえば春から12月までの約半年ほどかけて、じっくりと基礎固めに時間をかけるといいですね。

基礎力をしっかり身につけるために必要なこと

編集部 基礎力が大切ということで、地道な勉強が続くことになると思いますが、効率的にかつしっかりと基礎が身につく方法はありますか。

野田先生 「中途半端にしない」ということです。知識の定着をはかるために問題演習をします。その際に、ちょっとした間違いや凡ミスなどを軽く考えず、「何が原因なのか」をしっかり追及していくことが重要です。

さらに言えば、「日々の積み重ね」がどれだけできるかということも大きいですね。まとまった時間よりも、スキマ時間をどれだけ有効活用できるか。一度問題が解けたからといって、2回目もできるとは思わず、コツコツと繰り返して取り組めるといいですね。

編集部 やはり、反復が重要なんですね。

野田先生 そうです。その反復も、問題演習を繰り返すということだけではなく、たとえば「まとめノート」などを繰り返し見るという勉強も含みます。

当然、基本的にはテキストに載っているのですが、間違ったところやどうしても覚えられないポイントは人それぞれです。なので、問題演習をした時に間違ったところはチャンスととらえて、まとめノートに書き加えるといいですよ。

ただテキストをノートに書き写すにしても、自分の中でしっかり理解ができていなければ、「単に書き写すだけ」になってしまうので、つらい作業です。

「なぜ、この仕訳をやらないといけないのか」、「なぜ、この表示科目・表示箇所になるのか」などを考えながらノートに書くと、主体的に勉強できるようになりますよ。

「手を動かす」というアナログの作業はすごく重要なことだと思います。

編集部 そうして作ったノートをスキマ時間に何回も何回も見て反復する、ということなんですね。

野田先生 あとから追加できるようにルーズリーフでもいいですし、手帳でも、あとは付せんを使うのもおすすめですね。

基礎期にこういった勉強がしっかりできていれば、直前期には基礎知識が定着しており、まとめノートを毎日毎日、定期的に見るということは必要なくなります。

簿・財同時に勉強するなら、「反復」が大事

編集部 基礎期の反復はそれほど重要なんですね。

野田先生 とくに初学者の場合、反復が必要になってきます。反復を基礎期にしっかりやれば応用期には面白いように問題が解けるようになりますよ。

とくに、5月から始める人のほうが、簿・財を同時に勉強する効果は高まりますね。

編集部 それはどうしてですか⁉

野田先生 簿・財を同時に勉強するのはメリットもある一方で、ストレスを感じるときが実はあるんです。それは、簿記論と同じ会計科目で同じ処理を勉強しているはずなのに、財務諸表論での出題傾向が違うからです。

そのため、問題を解くときに、簿記論の解き方をすると、ある段階から財務諸表論ではまったく点数が取れなくなってしまうことがあります。逆に、財務諸表論の解き方を簿記論で実践すると、簿記論では対応できない点があって点数が伸び悩みます。

簿・財を同時に勉強する人に比較的多い傾向として、どちらかは得意で、どちらかは不得意という人がいます。その一因には「復習時間が足りない」ということが考えられます。

しかし、5月スタートであれば、基礎期にゆっくり、じっくりと学習でき、復習時間もしっかり確保できるので、学習効果が高まりやすいですね。

つづく

【お話を聞いた人】
野田 朋代(のだ・ともよ)

資格の大原 税理士講座講師
税理士の先生と一緒に仕事をしたことをきっかけに、税理士試験の勉強を開始。働きながらの勉強で挫折しそうになったときに、熱心に励ましてアドバイスしてくれた先生のおかげで合格。自分と同じように困っている受験生に、合格の喜びを感じていただきたいとの思いから、簿記論・財務諸表論の講座を担当。「解けるようになったよ!」「合格したよ!」の笑顔が見たくて、現在も大原簿記学校で勤務中。
資格の大原 税理士講座ホームページ


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