【『財務会計講義』を読もう!】第5回:減損処理


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

【編集部より】

税理士試験の財務諸表論、公認会計士試験の財務会計論。
「計算は得意だけど理論はニガテ」という受験生の方は多いですよね。

理論が得意になるためには、個々の論点をただ暗記するのではなく、隣り合った論点を「総合的かつ横断的」に理解することが大事です! 
その1つの学習方法が、基本書を使って、キーワードをもとにさまざまな箇所で解説されている内容を横断的に押さえること。

本連載では、長島正浩先生(茨城キリスト教大学経営学部教授)に、代表的な基本書である『財務会計講義』(桜井久勝著)の索引を手がかりに、「総合的かつ横断的」な理解に不可欠な論点を解説していただきます。

ぜひ理論の得点アップにお役に立てください!

生まれて初めて

昨年来、ちょっと外出するときに、これは「不要不急の外出」なのか、どうしても行かなければならないのか、考える癖がついてしまった。普段の生活においては、「意外と火急の用事などないものだな…」と思った矢先、突然奥歯が疼きはじめた。「緊急事態発生!」(なぜかうれしい…)

あの緊急事態発生から1週間が過ぎた。明日はいよいよ右下奥の親知らずの抜歯手術である。本当に緊急事態になってしまった。ネットで調べてみると、下の親知らずを抜くのは結構大変なことらしい。家内に電話すると、「亡くなった方もいるらしいよ」と脅された。脅されることには慣れているが、親知らずを抜くのは「生まれて初めて」のことである。なぜか生まれた側に寄せていることが不思議である、もうすぐ還暦だというのに。

抜歯手術当日、ここ3日間「ゴッドファーザー」(3部作)のDVDを観て、気持ちを完全に作り上げてきた。手術が始まった。依然として冷静さを保っている。麻酔の注射がチクっとしたが、銃弾を浴びているシーンを思い浮かべ、難なくクリアする。

歯医者さん「はい、では抜きますね。」
私「・・・」(しばらく我慢だ)
歯医者さん「もうすぐですよ。はい、取れましたー」
私「・・・」(はやっ、全然痛くないじゃん。あの心の準備は何だったんだろ)
歯医者さん「では、止血しますので、軽く噛んでください。」
私「・・・」(えー、もう終わりかい。拍子抜けしたな)

(あれ?口が閉じない…どうした?あごに力が入らない…あれ?あれ?)

歯医者さん「あごが外れちゃってますね。」
私「ハ・フ・ハ・フ」(な、何それー!銃弾、銃弾、だめ効かない、パニック…)
歯医者さん「よくあご外れるんですか?」
私「ウハ※▽ハ◆□▲〇フ!」(生まれて初めてです!)

索引を見てみよう

さて本題に入ろう。

これまでと同様、お手元に『財務会計講義』がある人は、該当ページを確認していただき、今は手元にないという人は、学習ポイントだけでも眺めていただければ十分である。

「減損処理」は、p.104、p.188にある。まずは、主な内容と学習ポイントを確認していこう。

p.104

【内容】
たとえ有価証券の価値に下落が生じていても、取得原価や償却原価で評価された場合、および時価評価しても差額を純資産直入した場合には、損益計算書に評価損が計上されることはない。しかしそのような有価証券についても、次の2つの場合には評価損を認識して損益計算書に計上することが強制される。日本公認会計士協会が定めた「金融商品会計に関する実務指針」では、この強制評価減を有価証券の減損処理とよんでいる。

【学習ポイント】
「2つの場合」とは、どのような場合をいうのか。評価損の計上処理は、第1回で学習した「切放し方式」なのか、それとも「洗い替え方式」なのか。

p.188(実際はp.187) 

【内容】
固定資産の収益性の低下により、投資額の完全な回収が見込めなくなった状態を減損という。そのような状態が生じた場合は、固定資産からの回収可能価額の低下を反映させるように、帳簿価額を減額する減損処理を行わなければならない。

【学習ポイント】
固定資産の減損処理は、有価証券の減損処理と何が共通していて、何が相違しているのか。資産の評価に「割引現在価値」が採用されていることにも留意する。

次ページ「有価証券の減損処理とは何か?」


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