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平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)
突然ですが、日商簿記3級というと、なんだか初心者向けといったイメージをもたれる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、3級では、簿記の原理から帳簿組織の流れを学習でき、簿記学習において重要なことは、すべて3級に入っているのです。
そのため、今後、2級や1級、さらには税理士や公認会計士を目指そうとしている方は、まずは3級の内容をしっかりと押さえておきましょう。
私は、大学生のときに3級を受験したのですが、甘く見て勉強を疎かにした結果、その後の1級や公認会計士試験で苦労しました。
そこで、2021年2月28日に実施された第157回日商簿記検定の3級を振り返りつつ、3級からステップアップを狙う受験生が、今後どのように勉強していけばよいか、お話しさせていただきます。
「仕訳力」を身につけよう
第157回では、第1問(仕訳)で以下の論点が出題されました。
① 備品の売却 ② 建物の修繕 ③ 収入印紙・切手の購入 ④ 約束手形による借入 ⑤ 納品書兼請求書から取引を読み取る(消費税の処理あり) |
難易度としては、基本的なテキストレベル。しっかりと満点近くはとっておきたい問題でした。
これから3級より上を目指すのであれば、基本的な仕訳問題は確実に得点できるように、今後もしっかりと「仕訳力」を身につける練習をしていきましょう。
記帳の流れを頭に入れておこう
第157回の第2問では、商品有高帳の推定問題が出題されました。仕入帳と売上帳も合わせて示され、補助簿同士のつながりの理解が必要なパズル的な問題でしたが、難易度は基本レベル。できれば満点がとりたい問題でした。
そして、今後さらに上を目指したいのであれば、「単一仕訳帳補助簿併用制による帳簿組織」を理解しておく必要があります。
なんだか難しそうな言葉ですが、話は簡単です。たとえば、商品を掛けで仕入れた場合、記帳の流れは次のようになります。
① 仕訳帳に記帳(主要簿)
↓
② 総勘定元帳に転記(仕入勘定・買掛金勘定~主要簿)
↓
③ 補助簿に記帳
・商品有高帳
・仕入帳
・買掛金元帳
2級以上を受験するにあたっても、この流れは必ず頭に入れておきましょう。
仕訳と集計をセットで学習しよう
第157回の第3問では、合計試算表の作成問題が出題されました。借方貸方のそれぞれを集計しなければならず、手間はかかりますが、一つひとつの取引は基本的でした。ミスをしなければ、満点も狙える問題です。
この手の問題で問われているのは、「仕訳力」と「集計力」。
まだ2つの力が十分に身についていないという方は、商品売買などの基本的な仕訳はきっちり切れるようになっておくとともに、集計の基本である「T勘定」を用いた集計も練習するようにしましょう。
計算だけでなく理論も重視されるように
第157回の第4問では、理論の穴埋め問題が出題されました。処理や手続きの基本的な内容を問う問題でしたが、空欄をすべて埋めるのは難しかったかもしれません。
近年の日商簿記検定では、理論を問われることも増えています。このような理論問題については、日ごろの学習から、「なぜこの処理をするのか?」を考えるようにするとよいでしょう。
ただし、すべてを解くというのは難しいと思われますので、解けるところだけでも解き、部分点をもぎとるということを意識してください。
決算整理仕訳は「未処理」事項に要注意
第157回の第5問は、決算整理前残高試算表スタートの決算整理型問題でした。解答要求事項としては、決算整理後残高試算表の作成と当期純利益の算定です。決算整理仕訳自体は基本的なものばかりでしたが、「未処理」事項も存在したため、それを適切に処理し、そこから決算整理仕訳を行う点に注意が必要でした。
2級以上を受験するにあたっても、まずは決算整理仕訳における典型論点をマスターできているか確認してください。典型論点は、次の5つです。
① 現金の処理(現金過不足) ② 貸倒引当金の設定 ③ 売上原価の算定 ④ 減価償却 ⑤ 収益・費用の見越し繰延 |
また、第157回のような「決算整理前残高試算表スタートの決算整理型問題」では、メインで問われるのが「決算整理仕訳」です。しかし、単なる処理では試験委員はつまらないので、期中処理をあえて「誤処理」とか「未処理」にする場合もあります。
第157回でも、「売掛金入金の未記帳」が出題されていました。この場合、「売掛金入金処理」→「売掛金の適正な期末残高算定」→「貸倒引当金の処理」というかたちで、「期中仕訳」と「期末の決算整理仕訳」を適切に切れるようになっておきましょう。
3級のうちから“考える”学習を!
3級より上の試験にも対応できるようになるためには、ただ問題集を解いて解法に慣れるだけではいけません。まずは、3級のうちから、
・複式簿記の原理とはどんなものなのか? 単式簿記と何が違うのか?
・取引があったらどの帳簿に記帳していくのか?
・決算整理仕訳はなぜ必要なのか?
・決算振替仕訳は何をやっているのか?
・収益と費用、収入と支出は何が違うのか?
といったことを、しっかり考えながら学習していきましょう。