AIに負けないために会計事務所が今後注力すべき仕事とは?


本Webをご覧いただいている税理士受験生の皆さんのなかには、会計事務所に勤めている方も多いと思います。

また、現在勤めていない方も、多くはいずれはと考えていることでしょう。

さらに、会計士受験生の皆さんも将来的には自分の会計事務所をつくって独立することを構想している方もいますね。

そんな皆さんの気になることの1つが、一部報道で言われている「会計事務所の仕事はAIに代替される」だと思われます。

本当に会計事務所の仕事に未来はないのでしょうか?

ここでは、中小企業の直面する問題点と会計事務所の仕事とのかかわりからみていきます。

日本の多くの中小企業が直面している問題

現在、日本の中小企業の多くは、

① 円滑な事業承継

② 企業の収益性の向上

③ 自社に合った経営管理の仕組み作り

の3つの経営課題に直面しているといわれています。

経営管理の仕組みをつくって、トップの強いリーダーシップのもとで全社員が共同体意識をもって日々の業務に励めば、自ずと企業の収益性は向上し、その結果、これらの問題は解決できるでしょう。

しかし、経営資源に限りのある中小企業がこれらを自社だけで完結させるのは容易ではありません。

そこで、経営者の最も身近な専門家である会計事務所=税理士・公認会計士(経営会計専門家)の支援が不可欠なのです。

よく

税理士=「税務」の専門家

会計士=「監査」の専門家

といわれますが、今こそ、すべての経営会計専門家は、「税務」「監査」といった独占業務の専業から経営支援業務へも軸足を拡張して、中小企業を支援することにより地域経済の活性化に貢献することが求められているといえるでしょう。

では、具体的に何をすべきか? その仕事とノウハウを実践的に解説した書籍がこちらです。

『会計事務所の経営支援』


著 者:澤邉紀生・吉永 茂
価 格:本体2,600円+税
発行日:2020年10月29日
頁 数:256頁

『会計事務所の経営支援』の内容と読み方

本書の目次は、以下のとおりです。

第1章 経営者に寄り添う経営会計専門家という職業

第2章 経営計画策定能力の向上による中小企業の成長:建設業の事例

第3章 外部環境の変化を捉えた企業の自己変革:食肉加工卸売業の事例

第4章 任せる経営:フランチャイジーの事例

第5章 努力と成果の「見える化」:食肉冷凍加工食品卸小売業N社の事例

第6章 中小企業のブランディング:美容室の事例

第7章 企業再生(オーナーシップの交代):スポーツクラブの事例

第8章 事業承継の準備:診療所の事例

第9章 経営者の突然の逝去に対応したダメージコントロール:造園業の事例

第10章 中小企業のガバナンス:建築業の事例

本書は、実務家と研究者によるコラボレーションにより、企業のわかりやすい実例を通じて、実践的なノウハウだけでなく理論的な考え方の基礎も学べる構成になっています。

まず第1章では、今なぜ会計事務所に経営支援が求められているか、さまざまなデータや研究の知見をもとに解説しています。

第2章から第10章では、各事例企業を会計事務所の担当者がどのように経営者をサポートしたのか、またすべきだったのかを解説しています。

各事例はストーリー仕立てで書かれており、非常に読みやすくなっています。

各事例のなかで、「会計事務所の担当者として、この状況でどのように経営者に助言すべきか」という「問い」が投げかけられる書き方になっており、自分ならばどうしたかを考えながら読んでください。

「問い」に対しては「答え」が記載されている場合と、「答え」がない場合がありますが、「答え」が書かれている場合でも、1つの考え方として受け取ってください。

本書で著者が最も伝えたいメッセージは、経営の悩みに対応するという会計人としての「心構え」です。

「経営支援」を即実践!

たしかに記帳代行を行い、税務申告書を作成するという旧来型の会計事務所の業務はAIの発達により将来的に代替される可能性も高いかもしれません。

しかし、会計事務所が、会計データをもとに、個々の企業の実情とあるべき姿を求めて、経営者とともに悩み、問題を解決していく、という仕事はAIではなかなか代替できる仕事ではないといえます。

コンサルティング業務がAIで代替できない業務の上位にあることもそれを裏付けるものといえるでしょう。

AIには代替できず、かつ顧問先に大きく貢献できる「経営支援」業務こそ、今後まさに会計事務所が注力すべき仕事なのです!

ぜひ本書により、会計事務所が今後注力すべき仕事である「経営支援」のポイントを把握して、顧問先に実践するヒントを掴んでいただければと思います。

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〈著者紹介〉

澤邉 紀生(さわべ・のりお)
京都大学大学院経済学研究科・経営管理大学院教授/博士(経済学)
1990年京都大学経済学部卒業。立命館大学経営学部専任講師、九州大学経済学部助教授を経て、2007年より現職。

[主な著書]
『アメーバ経営学―理論と実証』共編著、KCCSマネジメントコンサルティング、2010年
『次世代管理会計の礎石』共編著、中央経済社、2015年
『アメーバ経営の進化―理論と実践』共編著、中央経済社、2017年
『計算と経営実践―経営学と会計学の邂逅』共編著、有斐閣、2017年
[主要論文]
・Management Controls and Pressure Groups: The Mediation of Overflows, Accounting, Auditing & Accountability Journal, 31(6), 2018, pp. 1644-1667, co-authored with Stephen Jollands and Chris Akroyd.
・Core Values as a Management Control in the Construction of ‘Sustainable Development,’ Qualitative Research in Accounting & Management, 12(2), 2015, pp. 127 – 152, co-authored with Stephen Jollands and Chris Akroyd.

吉永 茂(よしなが・しげる)
公認会計士・税理士/京都大学経営管理大学院特命教授
1967年中央大学第一商学部会計学科卒業。2009年より熊本学園大学会計専門職大学院専任教授(2012年まで)。現在、一般社団法人コンサル技連代表理事を務める。

[主な著書]
『中小建設業これで会社は立ち直る-経営再建の基礎知識』日刊建設工業新聞社、2003年
『改正経営事項審査のポイントと対策』日刊建設工業新聞社、2008年


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