一般商品売買のポイント


この記事は、『会計人コース』7月号の特集「出題の可能性「大」!? 得点源にする要チェック4論点」のなかから、編集部が再構成して紹介しています。

税理士試験の簿記論では、第一問や第二問に一般商品売買についての問題が頻繁に出題される。一般商品売買とは何かと問われると、商業における一般的な商品の仕入と販売の流れを問う問題であり、その基本はどのように商品売買を帳簿に記録するかである。

過去の簿記論の出題ポイントによると、第69回では売上原価対立法と分記法、第68回では総記法と小売棚卸法、第67回では記帳方法の違いによる決算整理仕訳の有無、第66回では総記法、三分法と売上原価対立法、が出題されている。

各処理方法の詳細は解説しないが、記帳方法によって、①何の勘定科目を用いるか、②決算整理の有無、③収益、費用、利益の算定方法、を理解する必要がある。

  三分法 売上原価対立法 分記法 総記法 小売棚卸法
繰越商品、仕入、売上 商品、売上原価、売上 商品、商品販売益 商品、商品販売益 商品、商品販売益、繰越販売益
期首商品残高を仕入に含め、期末商品残高を仕入から除く処理 無し 無し 帳簿上の商品残高を実際の残高にし、差額を商品販売益で処理 仕入時に処理した商品販売益の未実現分を繰延販売益に振替
売上から決算整理後仕入を控除して利益を算出 売上から売上原価を控除して利益を算出 商品販売益が利益を示す 決算整理後の商品販売益が利益を示す 決算整理後の商品販売益が利益を示す

上記方法における値引き、返品、割戻しの処理も問われる。この点、商品有高帳にどのように記録されるかという点でも出題の可能性があるので、確認しておく必要がある。

また、商品の売買であることから、その払出単価の算定も論点となる。簿記論では上記記帳方法と同時に、第69回では先入先出法、第68回では先入先出法と移動平均法、第66回では先入先出法、後入先出法、総平均法、最終仕入原価法が出題されている。

そのため、払出単価の算定についても、その特徴を理解する必要がある。

  先入先出法 移動平均法 総平均法 後入先出法 最終仕入原価法
特徴 期末帳簿上、決算日に近い時点に仕入れた商品単価で構成 仕入のつど、商品平均単価が変動する 一定期間経過後にならないと商品平均単価が決まらない 直近の仕入商品から払出するため、残高が現在の相場と不一致 期末帳簿上、すべての商品単価が、最後の仕入単価で構成

そして、商品は期末評価を行う必要があり、数量、単価の面で確認を行う。数量では棚卸減耗損、単価では商品評価損が生じる。この場合、払出単価の算定との関係上、どの単価の商品が減ったのか、仕入単価が異なる商品がある場合には各々の評価損を算定する必要がある。


【編集部より】
本誌では本試験で出題が予想される問題を取り上げて解説しているので、ぜひご覧になっていただきたい。

【著者紹介】
村上翔一(むらかみ・しょういち)
敬愛大学経済学部専任講師、2017年3月明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。2017年4月明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師を経て、2018年4月よろ現職。主たる研究テーマはポイント、電子マネー、暗号資産の会計処理。


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