
新山高一(東京CPA会計学院講師)
【編集部より】
2026年8月4日(火)〜6日(木)の3日間にわたり、令和8年度(第76回)税理士試験が実施されました。
そこで、本企画では、「簿記論」・「財務諸表論」・「法人税法」・「相続税法」・「消費税法」について、各科目に精通した実務家・講師の方々に本試験の分析と今後の学習アドバイスをご執筆いただきました(掲載順不同)。ぜひ参考にしてください!
問題の感想や難易度
受験生の皆さん、本試験お疲れさまでした。
今年も、全体的に難易度は高くなく、落ち着いて解いていけば、十分に合格点が取れる問題だったと思います。理論については、法的な理由となる根拠規定をしっかりと解答し、計算については、ケアレスミスをしないことがポイントだったかと思います。
早速、問題の感想や難易度について振り返ってみます。
第一問
問1
低額譲渡に関する取扱いを、A社と譲渡先の関係によってどのように変わるのかを問う問題でした。
⑵の必要となる手続きは難しいですが、それ以外は難しい論点はないため、しっかりと取扱い及び根拠規定を解答できるかがポイントかと思います。
問2
人格のない社団等の税務上の取扱いを問う問題でした。
昨年と異なり、総論的な取扱いを問う問題であり、株式会社と異なるところを問われているところもあるため、難易度としてはやや高めの問題でした。
最低限、納税義務関連の規定、税率は解答できるようにし、それ以外のところで、1つでも解答できていれば、十分に合格点が取れているかと思います。
第二問
問1
オーソドックスな3月末決算の中小法人の問題でした。内容自体は、難しくなく、ここ最近の本試験で続いていた、問題をしっかりと読んでいないと間違えてしまう箇所もそれほどないため、いかに処理がこなせるかがポイントかと思います。
問2
賃貸借取引及びリース取引に関する取扱いを問う問題でした。
内容としても、フリーレントの取扱い、リース取引の経過措置、リースバックの取扱いといろいろな取扱いが問われている問題でした。
フリーレントは通達の内容が問われており、少々難しいところもあるため、まずは、それ以外の⑴⑷⑸は、確実に解答できているかがポイントかと思います。
合否を分けたポイント
第一問は、問1は難しくないため、まずは根拠となる規定をしっかりと解答できていることが大事です。問1でいかに取りこぼしをせず、問2でいかに加点できたかがポイントになるかと思います。
第二問は、問1は租税公課、減価償却、受取配当金の取扱いをしっかりと解答できていることがまず大事です。貸倒引当金は、I社の債権が判断に迷う箇所であり、I社の債権の取扱いを間違えると大きな点差がつくため、貸倒引当金で間違えていないかが合否のポイントになるかと思います。そのうえで、問2でいかに加点できたかがポイントになるかと思います。
予想されるボーダーライン
第一問の問1は7割、問2は4割、第二問は問1で6割、問2で5割解けることがボーダーラインかと思われます。
学習のアドバイス
ここ最近の試験は、法人税法の基本的かつ重要な制度を問う傾向や最近改正が行われた制度を問う傾向にあり、この傾向が続いている状態です。そのため、今後の学習に関しては、今まで通り、これらを意識した学習が必要になってくるかと思います。
理論について
法人税法の理論の勉強方法は、今まで通りの学習方法を継続することとなります。そのため、アドバイスも例年と同じになってしまいますが、次の4点を意識して学習するようにしましょう。
① 重要性の高い論点からしっかりと押さえ、時間があれば用語の意義も押さえること
② 押さえる際には、各規定の基本的な考え方もしっかりと理解すること
③ 計算とリンクさせて具体的な金額を計算できるようにすること
④ 最近改正が行われた制度の内容をしっかりと押さえること
「①重要性の高い論点からしっかりと押さえ、時間があれば用語の意義も押さえること」に関しては、重要性の高い論点から押さえることは言うまでもないです。また、本試験における理論問題は、今までいろいろな取扱いが問われてきましたが、どんな内容であれ、必ず1問は、皆が解答できる問題が出題されてきました。そのため、そのような問題は、規定は正確に解答する必要があります。そのためにも、しっかりと押さえることも非常に大事となってきます。
なお、用語の意義に関しては、数年前の本試験では、用語の意義を解答させてから、それに関連する規定の取扱いを問う形式の問題が多かったため、その対策となりますが、最近は、用語の意義をストレートに問う問題は減ったため、やや重要性は低いかと思います。ただし、全く押さえないというわけにもいかないため、理論集に記載されているものは解答できるようにしておきましょう。
続いて、「②押さえる際には、各規定の基本的な考え方もしっかりと理解すること」は、事例形式での出題に対応することができます。事例形式の問題の場合、規定通りの取扱いが出題されるとは限りません。その時に、各規定の基本的な考え方をしっかりと理解していれば、解答を導き出せるようになるため、そういった意味でも、各規定の基本的な考え方をしっかりと理解することは大切です。
「③計算とリンクさせて具体的な金額を計算できるようにすること」に関しては最近よく出題されています。計算と理論をしっかりとリンクさせて押さえることが大事です。また、その取引を誰に対して行ったかで取扱いが変わるものもあります。計算ではよく問われる論点ですが、今回の税理士試験では、理論で問われていることからも、重要性は以前にも増して高いかと思います。
「④最近改正が行われた制度の内容をしっかりと押さえること」に関しては最近の本試験のトレンドです。ただ、改正論点も細かいところを含めるとそれなりにはあるため、まずは重要性の高い論点を押さえることが大事です。
とは言え、基礎がしっかりとしていなければ、問題を解くことはできないため、まずは①及び②を中心に理論の学習は行いましょう。
計算について
計算に関しては、実務において頻出する論点を中心としており、問われている内容も、基本的な部分が中心であることから、難しい取扱いが問われることは減ってきた印象です。
そのため、今後の学習方法については、次の点を意識してほしいと思います。
① 各論点の基本的なところをしっかりと押さえること
② 解答スピードを上げること
③ 最近の改正論点をしっかりと確認すること
「①各論点の基本的なところをしっかりと押さえること」に関しては、本試験対策だけでなく、各論点の細目や応用的な取扱いを押さえるためには、基本的な部分が出来ていることが大事なため、しっかりと基礎を固めることが大事です。そのため、まずは個別問題集をやりこむようにしましょう。それも1回だけではなく、できれば何回も解くことを心掛けたいです。
もちろん、個別問題だけ解けばよいというわけでもなく、各規定とのつながりを理解することも大切であることから、総合問題もしっかりと解くようにしましょう。総合問題に関しては、年内からいきなり難しい総合問題を解くのではなく、基礎をしっかりと確認する意味でも基本的なレベルの取扱いが出題されている総合問題を解くようにしましょう。
また、次の「②解答スピードを上げること」にもつながる話なのですが、基礎がしっかりとできていない場合、取扱いを考えることに時間を要し、解答スピードが遅くなります。そういう意味でも、基礎をしっかりと固めることが大事だと思います。
②に関しては、年によっては、問題量が多い時もあるため、非常に大事です。解答スピードに関しては、総合問題を何度も解いて、スピードを上げる方法になるかと思います。基礎期や応用期で配付される練習問題とかを解いて解答スピードを上げていきましょう。
「③最近の改正論点をしっかりと確認すること」に関しては、理論と同様に、最近の本試験のトレンドです。近年の改正が行われた論点で特に話題性のあるところはしっかりと確認するようにしましょう。第77回税理士試験の場合は、令和9年4月1日開始事業年度から防衛税関係が適用されることから、防衛税関係の取扱いが出題される可能性が十分にあります。それほど取扱い自体は難しくはないので、しっかりと確認しておきましょう。
【プロフィール】
新山 高一(にいやま・こういち)
東京CPA会計学院卒業。卒業年の翌年に税理士試験に合格し、その後、同校の講師として、主に法人税法を中心に指導を行っている。初学者でも法人税法がわかりやすく理解できるように、日々奮闘している。
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