【税理士試験】今年の消費税法はどうだった?  加藤久也先生が予想するボーダーラインと学習アドバイス


加藤久也(税理士/名城大学大学院非常勤講師)

【編集部より】
2026年8月4日(火)〜6日(木)の3日間にわたり、令和8年度(第76回)税理士試験が実施されました。
そこで、本企画では、「簿記論」・「財務諸表論」・「法人税法」・「相続税法」・「消費税法」について、各科目に精通した実務家・講師の方々に本試験の分析と今後の学習アドバイスをご執筆いただきました(掲載順不同)。ぜひ参考にしてください!

はじめに

受験生のみなさん、お疲れ様でした。今年も計算問題のボリュームが多かったため、いかに要領よく解答し、基本論点について正解できたかどうかが合格の決め手になったと思います。では、問題を振り返ってみましょう。

第一問の講評

第一問は、問1と問2の2問が出題されました。問1は(1)消費税の納税義務に関して取引等の事例ごとに、納税義務が免除されないこととなる期間又は課税期間を述べる問題と(2)消費税の納税義務者及び納税義務の成立時期を問う問題が出題されました。問2は4つの事例について正誤を判断し、その正誤についての理由を法令に沿って説明する問題が出題されました。各問題についてみていきましょう。

問1(配点30点)

(1)この問に解答するにあたってのポイントは次のとおりです。
①法9条1項以外の規定により納税義務が免除されない期間又は課税期間について問われていること、②(注1)から法9条4項(課税事業者の選択)が除外されること、③(注2)から法9条の2(特定期間の特例)、法11条(合併があった場合の特例)、法12条(分割等があった場合の特例)が除外されることを前提として検討したかです。

これらの点を踏まえると、解答範囲はおのずと、法10条(相続があった場合の特例)→ニ、法12条の2(新設法人の特例)・法12条の3(特定新規設立法人の特例)→イ・ロ、法12条の4(高額特定資産の特例)→ハであることがわかります。また、用語の意義及び施行令の内容について触れる必要がないと指示していますので、これらについて記載する必要がないことにも注意しましょう。

イ 新たに内国法人を設立した場合については、新設法人に該当する場合(法12条の2)及び特定新規設立法人に該当する場合(法12条の3)の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間を解答することになります。また、外国法人が国内で事業を開始した場合についても、これらの特例が適用されること(法12条の2③、法12条の3⑤)を指摘する必要がありました。

ロ 問題文中の「設立2期目」とは、基準期間がない事業年度を意味するものと考えられます。したがって、新設法人又は特定新規設立法人が、基準期間がない事業年度に含まれる課税期間中に、調整対象固定資産の仕入れ等をした場合に、いわゆる3年縛りとなる規定(法12条の2②、法12条の3③)について指摘し、「機械装置」が調整対象固定資産に該当することを示す必要がありました。

ハ 問題文中の「設立10期目」とは、基準期間がある事業年度を意味するものと考えられます。したがって、本問では、高額特定資産の仕入れ等をした場合に、いわゆる3年縛りとなる規定(法12条の4)の適用について指摘し、「機械装置」が高額特定資産に該当することを示す必要がありました。

ニ 相続により事業を承継していることから、相続があった場合の特例(法10条)の適用について指摘する必要があります。

また、被相続人が適格請求書発行事業者であったことから、みなし登録期間について、事業を承継した相続人は適格請求書発行事業者とみなされる規定(法57条の3)により、納税義務は免除されないことになることを指摘する必要があります。ただし、厳密には法9条1項カッコ書きにより納税義務が免除されないこととなるため、解答範囲から除外されていると考えることもできますが、あえて「適格請求書発行事業者の登録を受けている」と記載されていることから、出題者は、解答範囲に含めているものと考えられます。

(2)消費税の納税義務者については法5条により、消費税の納税義務の成立時期については、国税通則法15条2項七号により解答します。納税義務の成立時期については、解答できると有利になります。なお、国税通則法は税理士試験の出題範囲に含まれています。

問2(配点20点)

(1)適格返還請求書の交付義務について問う問題でした。適格請求書発行事業者は、「適格請求書の交付を求められたときは、……交付しなければならない」とされている(法57条の4①)に対し、適格返還請求書についてはそのような条件はなく(同条③)「適格返還請求書を交付しなければならない」とされていることから、特段の申し出がないとしても適格返還請求書を交付しなかったことは誤りとなります。
なお、売上げに係る対価の返還等の金額が少額(税込価額1万円未満)である場合には、交付義務が免除されますが、本問では、該当しないことを指摘する必要がありました。

(2)課税事業者が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に税抜200万円以上の金地金等の仕入れ等を行った場合には、いわゆる3年縛りとなります(法12条の4③、令25条の5④)。令和6年7月31日にした「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出は、なかったものとみなされ(法37条④)、令和6年10月1日から令和7年9月30日までの課税期間について簡易税制度は適用されない(同条③五)ため、簡易課税制度を適用した確定申告は誤りとなります。
また、令和7年10月1日から令和8年9月30日までの課税期間については、納税義務は免除されないため、確定申告を行わなかったことも誤りとなります。
本問の設定は、2年以上も誤った状態となった事例ですが、納税者も課税庁も気づかないまま、後日の税務調査で発覚することがあることへの警鐘ではないかと思えます。

(3)国外事業者C社は、国内において電気通信利用役務の提供をデジタルプラットフォームを介して行い、その対価を特定プラットフォーム事業者を介して収受しているため、C社が行った電気通信利用役務の提供は、その特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなされます(法15条の2)。したがって、その特定プラットフォーム事業者に申告義務があり、C社が確定申告したことは誤りとなります。

(4)事業者が、外国の大使等に対し、課税資産の譲渡等を行った場合において、その大使等が、外交等の任務を遂行するために必要なものとして一定の方法によりその課税資産の譲渡等に係る資産を譲り受けるときは、その課税資産の譲渡等については、消費税を免除することとされています(措法86条①)。本問では、大使が一定の方法により購入しているようなことがうかがえるため免税とされるように見えますが、免税とされるのは、国税庁長官の指定を受けた事業者に限られる(措令45条の4①)ため、免税販売を行ったことは誤りとなります。問題文のまた書については、措法86条①ただし書に対応するもので、相互条件を満たすことを示しています。本問は、解答できなくても合否には影響しないと考えられます。

第二問の講評

第二問(配点50点)は、見た目は1問ですが、被相続人と相続人の2人分の納付税額を解答させる問題でした。被相続人は簡易課税、相続人は原則課税(全額控除)であり、調整対象固定資産の調整のない出題のため、難易度は高くないものの、ボリュームが多いため、時間との戦いになっただろうと思います。

では、ポイントとなる項目についてみていきましょう。

(1)【資料】(1)【事業所得の損益計算書に関する付記事項】

イ「売上金額」(イ)新車の売上高

「販売に当たって運送の利便のため分解されている部品等を組み立てた作業工賃」については、仕入商品の組み立て販売と認められるものは第一種事業又は第二種事業に該当し、仕入商品の組み立て販売と認められないものは第五種事業に該当することとなります。文意から判然としないため、どちらも正解とされる可能性があります(国税庁質疑応答事例/消費税/日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-I卸売業、小売業)/中分類「機械器具小売業[59]/自転車小売業[592]/留意事項及び具体的な取扱い」)。

(2)【資料】(1)【事業所得の損益計算書に関する付記事項】

イ「売上金額」(ニ)修理の売上高 A事業者に対するもの B消費者に対するもの

a「摩耗した消耗品を交換しその実費のみを請求したもの」は、取付費が無償(サービス)であると認められるため、全体が第一種事業又は第二種事業に該当します。

(3)【資料】(1)【事業所得の損益計算書に関する付記事項】

イ「売上金額」(ニ)修理の売上高 B消費者に対するもの

f「顧客が持ち込んだ車両に部品を仕入れて改造する場合の部品の代金」及びg「fの改造工賃」は、他の者の製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供にあたるため、第四種事業に該当することとなります(消基通13-2-7)。

(4)【資料】(3)【事業所得の損益計算書に含まれる取引の状況に関する付記事項】イ「売上金額」(チ)売上返品・値引

「令和8年9月30日に乙が販売した車両が……返品されたもの」については、販売時において乙は免税事業者だったため、売上返還等対価に係る税額控除の対象とはなりません。

(5)【資料】(3)【事業所得の損益計算書に含まれる取引の状況に関する付記事項】ロ「家事消費等」

「乙の友人に対し、プレゼントしたキーホルダー5個の合計額である。」については、棚卸資産を家事のために消費したと考えられるため、みなし譲渡となります。キーホルダーは棚卸資産に該当するため、売上金額として計上すべき金額は、仕入金額と通常販売価格の50%の大きい金額とされます。なお、事業所得の損益計算書に計上されている金額3,500円は所得税法の規定により計算された金額(通常販売価格1,000円×70%×5個)と思われます。

(6)【資料】(3)【事業所得の損益計算書に含まれる取引の状況に関する付記事項】ホ「仕入金額」(ハ)部品・タイヤ・オイルの購入代金(ニ)飲食料品の購入代金 ほか

「適格請求書発行事業者以外の者に支払った金額」については、課税仕入れ等の税額の50%が仕入税額控除の対象となります(平成28年法改正附則53条)。今回の試験は、令和8年4月3日現在の施行法令により解答することとされているため令和8年改正後の70%ではなく、同改正前の50%で計算する必要がありました。

ボーダーラインの予想

つぎにボーダーラインについて考えてみましょう。各設問の配点をつぎのように予想しました。

(1)配点予想

〔第一問〕50点

問1(1)24点、(2)6点とし、計30点
問2(1)~(4)各5点とし、計20点

〔第二問〕50点

内訳 甲の計算 25点、乙の計算 25点

上記の配点予想を前提にボーダーラインを検討します。

(2)ボーダーライン

〔第一問〕

問1は、配点30点中21点
問2は、配点20点中12点

両問とも、条文を記述せず、端的に解答したとした場合の予想得点です。
第一問のボーダーラインは、50点中33点と予想します。

〔第二問〕

甲の計算は、配点25点中16点
乙の計算は、配点25点中15点

両問とも納税額の計算まではたどり着かないものの、基本的な項目について解答できたことを想定した得点です。
第二問のボーダーラインは、50点中31点と予想します。

したがいまして、第一問、第二問合計で64点をボーダーラインと予想します。

おわりに

本年度の試験問題は、第一問は、問1(2)のみ規定そのものを解答する問題でしたが、問1(1)と問2は事例から規定を解答する問題が出題されました。特に問1の(1)と(2)は関連性がなく、なぜ問1としてまとめられているのか、疑問でした。解答すべき規定が多岐にわたり、短時間で解答するのは酷な問題だったと感じます。多くの規定について習熟度合いを測りたい意図は理解できますが、一つの事例について多角的に検討できる能力があるかどうかじっくり考えて解答させる問題の出題を望みたいと思います。

第二問は、個人事業者2人の計算問題が出題され、問題文に読み取りが難しい個所もあることで、簡易課税と原則課税(全額控除)の問題ながら、納付税額まで解答を終えることが困難な分量の出題でした。特に第二問の作問において、実務上迷う項目について積極的に出題する意図はうかがえるものの、昨年に引き続き、問題文を一意に理解できない箇所があったことは残念でした。

第一問は、規定を書かず解答を端的に解答することにより、最大45分程度で手早く切り上げ、残りの時間を第二問に配分できたかどうかが、合格の決め手となったと思います。特に理論の解答においては、模擬試験で培った「捨てる勇気」を持てたかどうかがカギになったのではないでしょうか。

ここまで、本試験の問題について講評し、合格の決め手について考えてきました。しかし、税理士試験の正解及び詳細な配点は公表されないため、あくまでも私個人の検討に過ぎないことをお含みの上お読みください。大手専門学校からは模範解答と詳細な予想配点が公表されるものの、受験生のみなさん自身が答案用紙に書いた答案を正確に復元することは難しく、自信のない箇所を不正解として保守的に自己採点すると、実際の得点よりも低い点数となります。その結果、合格予想得点やボーダーラインに届かず、がっかりされることも多いと思います。

では、模範解答を確認すること、自己採点することは無意味なのでしょうか。合格確実ラインやボーダーラインに届いていなくても、どの程度の点数が取れたかと、講評や模範解答で「基本的な項目」「簡単な内容」とされた箇所について正解できたかどうかで、次の行動すなわち次の科目へ進むのか、同じ科目の勉強を再度行うのかが変わります。税理士試験の合格するためには、現実をしっかり受け止め、次の行動に活かすことが大切です。

最後になりましたが、受験されたみなさんに吉報が届くことを願っています。本当にお疲れ様でした。

<執筆者紹介>
加藤 久也
(かとう・ひさや)
税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒業。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。


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