わたしの独立開業日誌 #行政書士・川原辰也
- 2025/7/10
- 独立開業日誌

想いをカタチに──夢破れて、開業を選んだ私の物語
はじめまして。
大阪でドローン関連法務を専門として活動する川原辰也と申します。
「もう、この資格でやるしかない」
それが、私が行政書士として開業を決めたときの正直な心境でした。
私の体験記が、どなたかの励みになれば幸いです。

弁護士を目指していた私が、行政書士になった理由
もともと、私は弁護士を目指して司法試験の勉強をしていました。
大学卒業後も専業受験生として過ごし、人生をかけて本気で挑戦していました。
でも、現実は甘くありませんでした。何年も頑張ったけれど、司法試験の壁は高く、ついにその夢を断念することに。
そのとき、目の前にあったのが「行政書士試験」でした。法律系の試験として関連性もあり、ちょっとした“腕試し”のつもりで受験したんです。実は、行政書士試験当日は「受験せんとこかなぁ」と考えていたほどに後ろ向きでした。
結果は――合格。
正直、驚きました。でも、気持ちはすぐに切り替わっていました。
「もうこれでいくしかない。ここから先の人生を切り拓くのは、自分しかいない」
開業を決めた。だけど、社会経験ゼロのスタート
合格してすぐに行政書士登録を行い、そのまま開業しました。
会社勤めの経験もなければ、人脈も実績もゼロ。
まさに“裸一貫”での出発でした。
それでも、心のどこかに「なんとかなるやろう」という妙な楽観があったのを覚えています。
そうでも思わなきゃ、一歩踏み出せなかったかもしれません。
開業準備で早くも壁にぶつかる
開業準備で一番大変だったのは、意外にも「登録手続き」でした。
行政書士登録の際に必要な書類が想像以上に多く、経歴書から事務所の間取り図、誓約書に至るまで、「なんじゃこれ…」と思うほど煩雑でした。
まだ何も実務経験がなかった私には、事務所の形も想像がつかず、準備だけで何度も心が折れそうに。でも、「ここでやめたらまたゼロに戻る」と思い、踏ん張りました。
想いをカタチに──事務所のコンセプトと出会った分野
開業後、私は「想いをカタチにする事務所」という理念を掲げました。
行政書士の仕事を調べる中で、建設業や宅建業の許可申請といった業務が「依頼者の事業のスタートを支える仕事」だと知ったからです。
つまり、その人の“はじまり”を、書類という形で実現していく。
それって、すごく意味のあることだと思ったんです。
でも私は、やがて自分の原点に立ち返ることになります。
好きだった“映画”が、仕事になるなんて
実は私、昔から映画が大好きで。
その中でドローンという機材に出会ったとき、「これ、空飛ぶカメラやん」と衝撃を受けました。
自分でドローンを買って、映像を撮って、編集して。まるで映画のワンシーンのような景色が、個人でも撮れてしまう。
そのワクワクが止まらなくて、どんどんのめり込んでいきました。
ただ同時に、ドローンの使用には法律の知識や飛行許可が必要だと知りました。
「じゃあ自分が行政書士としてやればええやん」
その直感から、私の事務所はドローン分野に特化していくことになります。
予測した“法制度の未来”と、戦略的な営業展開
当時、ドローンの法改正案を見ていて、「これ、将来は自動車のようになるな」と感じました。
登録制度、飛行免許、ナンバープレートのような識別番号…。
つまり、自動車と同じように、制度化=行政手続きの需要増という未来が見えたんです。
自動車の登録代行が行政書士の専門分野であるなら、ドローンも“次の柱”になるはずだと、私は確信しました。
そこからは戦略的に動きました。
・専門性を前面に押し出したホームページを制作
・ドローン講習会の開催
・ドローン法に関するセミナー登壇
・地元企業やメーカーへの直接のご挨拶
こうした積み重ねが、やがて新聞取材や講演依頼へとつながり、今の事務所の信頼と実績の基盤になっています。
実績ゼロからのスタート、それでも「誰かの助けになれている」
独立して最初に感じたのは、「実績がないことの重み」でした。
誰も私のことを知らない。案件もない。相談も来ない。
でも、だからこそ一件一件を丁寧に、大切に対応しようと決めました。
「川原さんに頼んでよかった」
そう言ってもらえたときの喜びは、今でもずっと心に残っています。
最初の一件目、二件目の重みは、何件こなしても忘れられません。
依頼者の存在が、今も私を動かし続けている
私がこの仕事を続けてこられたのは、間違いなく依頼者の皆さまのおかげです。
「川原さんだからお願いする」「ありがとう」
――その一言で何度も救われました。
その言葉に応えたくて、何度も勉強をし直し、「この人のやりたいことを、どうにか実現したい」と必死に考え、走り続けてきました。
この想いは、開業して4年、5年が経った今も何ら変わっていません。
取引先や顧問先が増え、大変なことも増えました。
それでも、尊敬してやまない依頼者様と、事業を通して支え合えるこの仕事に、私は心から誇りを持っています。
最後に──これから開業するあなたへ
今、もしあなたが不安の中で勉強していたり、「将来に希望が持てない」と感じていたりしても、大丈夫です。
私もかつては、道に迷ってばかりでした。
でも、ひとつの資格が人生を変えることがある。
そして、資格は“ゴール”ではなく、“スタート”です。
行政書士という資格には、無限の可能性があります。
あなたの経験や興味を掛け合わせれば、きっと「あなたにしかできない業務」が見えてくるはずです。
どうか、焦らず、自分を信じて進んでください。
そしていつか、開業を志すあなたのストーリーを、今度は誰かに届けてください。
プロフィール
川原辰也(行政書士・川原行政書士事務所代表)
資格取得後すぐに独立開業。「想いをカタチに」を理念に、ドローン関連法務を専門に活動。ドローンの実務経験と法制度への深い理解を活かし、大阪行政書士会にてセミナー講師を務めるほか、『日本経済新聞』をはじめとする多数のメディアに掲載実績を持つ。依頼者と共に事業を支え合う実務を信条とする。
ホームページ:https://kawa-gyosyo.com/
X(Twitter):@kawahara_gyosyo