【連載・最終回】大野修平先生に聞く! 会計事務所におけるChatGPT「超」活用術~組織としてどのように取り入れていけばよいか


大野修平(公認会計士・税理士)

【編集部より】
ChatGPTの登場以来、ビジネス誌などでも頻繁に特集が組まれ、仕事への活かし方や注意点、課題などが取り上げられるようになるにつれ、得体の知れない未知のものではなくなってきているのではないでしょうか。その一方で、やはりまだどことなく活用しきれず、距離を感じたままということもあるでしょう。特に、新しい技術ゆえにアップデートも早く、追いつくことさえ難しい面もあります。
そこで、本連載では、税理士・会計士・会計事務所でどのようにChatGPTを活用すればよいかについて、ChatGPTに関する情報発信も多くされている大野修平先生(公認会計士・税理士)にご紹介いただきます!(毎月1回掲載予定)

みなさんこんにちは。セブンセンス税理士法人で公認会計士・税理士をしております、大野修平です。

半年ほど前に始まった本連載もついに最終回となりました。連載当初はChatGPTの基本的な使い方から、プロンプトの作り方などをお話していましたが、その間にOpenAI社によりDevDayが開催され、ChatGPTが大きく進化しました。

慌ててGPTsという特定の目的のためのGPTを解説するとともに、私の作ったGPTsである「びじねすもでるんβ」もご紹介しました。

GPTの大幅な発展に対する脅威を感じている方も多いのではないかという想定で、これくらいの時期から、生成AIとの協業の仕方をお話しし、生成AI時代に必要なスキルをお伝えしたのが前回となります。

たった数ヵ月の連載の間に、あれよあれよとChatGPTが進化するため、当初想定していた連載内容は投げ捨てて、ChatGPTの進化とその影響度に合わせて記事の内容を変化させて来ました。

最終回となる今回は、個人レベルではなく組織としてどのようにChatGPTを取り入れていけばよいかについて少しでもヒントとなることがお伝えできれば思います。

どうすれば職場に浸透しますか?

ChatGPTのセミナーや研修を行っていますと、参加者の方から「どうすれば会社(や部署、チーム)にChatGPTが浸透しますか?」、「職場のメンバーの利用度を上げるにはどうしたら良いですか?」という質問をかなりの頻度でいただきます。

それに対する私の答えは「まずは、アーリーアダプターである皆さんが楽しんでChatGPTを使っている姿を見せること。そして、なにか一つChatGPTを使って問題を解決した事例を伝えて「これはすごい!」と思ってもらうこと」とお伝えしています。「楽しいんだよ」ということと「すごいんだよ」ということを伝えることが大切だと思っています。

間違ってもChatGPTの利用を強制してはいけません。私がよく例えに出すのは「ガラケーからスマホに移行するときも、「絶対ガラケーを使い続ける!」と言っていた人っているじゃないですか」という話です。

確かに当時、ガラケーには様々な優位性がありました。おサイフ携帯やワンセグなど、当時のスマホにはなかった機能がありました。その便利さを失うのは嫌だとスマホには乗り換えないと言っていた人がたくさんいたのです。

ところが、スマホ用のアプリがたくさん開発され、スマホユーザーが増え、あらゆる商品・サービスがスマホを前提としたものになると、自然にガラケーユーザーは減っていきました。

職場における生成AIもこれと同じだと思います。今後間違いなく仕事は生成AIとの協働が前提となると思います。したがって、どんなに生成AIを仕事で使うことに反対している人も、最終的には生成AIなしでは仕事をすることができなくなります。したがって、いわゆる「生成AI反対派」の人たちを説得する必要はないのです。

職場への生成AIの浸透で対応すべきは「反対ではないけど、どう使えば良いかわからない」、「ChatGPTで生産性が上がるかどうかわからないのに無駄に試行錯誤したくない」という人たちです。このような中立派だけども生成AIを使うことのメリットをまだ感じられていない人たちに向けて「楽しいんだよ」と「すごいんだよ」を伝えることが重要なのです。

「楽しいんだよ」「すごいんだよ」の伝え方

では、「楽しいんだよ」「すごいんだよ」をどの様に伝えればよいのでしょうか。

まずは「楽しいんだよ」の伝え方から考えていきましょう。

じつは「楽しいんだよ」の伝え方は簡単です。みなさんが実際にChatGPTを使って楽しかったことや面白いと思った機能を、様々な場面で社内に発信すればよいのです。いきなり業務に関連している必要もないと思いますし、オフィシャルな場で発信する必要もないと思います。

例えば上司や部下とランチを食べているときなどに「こないだ忙しかったときに、家族へのLINEの返信をChatGPTに考えてもらった」とか、「同窓会の企画をChatGPTと一緒に考えた」とか「ChatGPTの音声会話機能で英会話の練習をしている」とか。みなさん自身が楽しんで使っていることを伝えるだけで、多くの人に興味を持ってもらえます。

興味さえ持ってもらえれば、そこから「だったら自分のお店の口コミの返信もできるのではないか」とか、「次の社内イベントの企画もChatGPTと考えられるのではないか」、「音声入力を活用して議事録作成を手助けしてもらえるのでは」といったアイデアに発展させるのは難しくないでしょう。

まさにこれが「すごいんだよ」を伝えるチャンスです。

周囲の興味が高まったタイミングで「実はそれGPTsで作ってみたんだよね」といってデモを見せることができれば最高です。

そこで「すごい」と思ってもらえれば、社内浸透の8割は終わったと言えるでしょう。おそらくアーリーアダプターである皆さんに、数名のメンバーから使い方を教えてほしいと依頼がくるでしょう。

あとは、入力するデータの制限やアウトプットの活用制限などを社内で検討し、生成AIの利用規程を作成すれば良いと思います。

最近リリースされたChatGPTのチームプランであれば、入力データが学習に利用されず、チームメンバーで共有できるワークスペースが使えますので、チームプラン導入も視野に入るかもしれません。

生成AIを中心にオペレーションを組み直す

こうして生成AIに関心が高まり、ある程度の規程も整い、一部の業務においてChatGPTが使われ始めたら、オペレーション自体を見直すチャンスです。

これまでの業務オペレーションは、どうしても人間中心になっていたと思います。それは仕方ないことですが、人間中心の業務オペレーションに生成AIを付け足しても、生成AIのパワーを最大限享受することができません。

人間の業務を生成AIがサポートするのではなく、生成AIの業務を人間がサポートするように、オペレーション自体を変更する必要があります。

つまり、仕事を進める順番や必要な資料の入手の仕方、成果物のフォーマットなどを生成AIが受け取りやすくアウトプットしやすい形に変化させるのです。もしかするとそれに対応できる顧客の選別なども必要になってくるかもしれません。

これは決して人間より生成AIを重視しているということではありません。むしろ、人間の柔軟さを信じて、まだまだ不器用な生成AIに人間が合わせる必要があるということです。

そのためには、どのようなオペレーションなら生成AIがその力を発揮できるか、そのために人間はどのようなサポートができるのか、を考える必要があります。

実際に私の職場では、事業計画の作成支援において、ヒアリングシートのフォーマットを生成AIが処理しやすい形に刷新し、アウトプットである事業計画書のフォーマットも生成AIが作りやすい形に変更しました。それにより大幅な業務効率化が達成されたのです。

おわりに

今回が最終回ということで、少し足早に進めすぎてしまったかもしれません。特に、生成AIを中心に業務オペレーションまで見直さなければならないというのはハードルが高く感じられたかもしれません。

しかし、第4回でもお伝えしたとおり「仕事を奪うのはAIを使いこなす人間」であり、「今、AIを使って誰かの仕事を奪っているのでなければ、すでに仕事を奪われる側に回っている可能性が高い」のです。

これはつまり、ハードルが高いとか、大変だとか、そんな言い訳ができる状況ではないということです。生成AIを中心にオペレーションを考えることが全ての組織で迫られているのです。

これを「生成AIが働きやすい職場づくり」と呼びたいと思います。「人間が」ではなく「生成AIが」というのが重要です。

そして「生成AIが働きやすい職場づくり」を達成できるのは人間です。人間の柔軟さがなければ生成AIが活躍できません。生成AIを活かすも殺すも人間次第なのです。私達はその分岐点に立っているのだと思います。

本連載で多くの方が危機感を感じるとともに、AIを使いこなす人間になれることを願っています。
半年間のお付き合い、ありがとうございました!

(連載おわり)

<執筆者紹介>

大野修平(おおの・しゅうへい)

公認会計士・税理士
セブンセンス税理士法人 ディレクター
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験がある。また、スタートアップ企業の育成・支援にも力を入れており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。
・Xアカウント(@Shuhei_Ohno

<連載バックナンバー>
第1回:検索ではなく、やりとりしよう
第2回:パーソナライズした文章の作成
第3回:さらに進化した「GPTs」で何ができる?
第4回:テクノロジーへの向き合い方についてマインドセットを変える
第5回:実際にどのようなスキルが求められるのか


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