【財務諸表論】 税理士試験・合格発表までの1ヵ月をどう勉強する?


加茂川悠介(税理士)

【編集部より】
きたる11月30日(木)に税理士試験の合格発表が予定されています。今年度、財務諸表論を受験した人の中には、合格発表までなかなか勉強に集中できない状況もあるかもしれません。また、税理士試験の受験勉強においては「年内の基礎固め」が重要だとよく言われます。
そこで、合格発表1ヵ月前というこの時期に意識したい財務諸表論の勉強法を、加茂川悠介先生(税理士)にアドバイスいただきます!

勉強はできていますか?

今年の税理士試験合格発表まで、早いものであと1か月となりました。皆さん、ドキドキされていることでしょう。私もそうですが、人間というのは基本的に「良いように、ポジティブに考える」生き物です。税理士試験の結果についても、そうなのではないでしょうか。

特に、今年の税理士試験は受験資格撤廃後、初めての実施となりました。また、多くの専門学校などで合格予想ライン等が割れており、受講生の様子を見ていても「合格発表までは、本腰を入れて勉強できていないな」といった様子です。

そのような気持ちは痛いほどよくわかります。しかし、実質的には競争試験である限り、「みんなが勉強できないときに勉強する」のが最も効果的です。「合格を期待しながら」も「財務諸表論の実力を高める」ことはとても大変なことですが、ライバルたちが手を抜いている「今」が絶好のチャンスだろうと思います。
このチャンスを活かして、これからの1ヵ月を過ごしていただきたいと思います。

何から手をつけるのか?

今年の本試験を受験して、個々人で「課題」や「弱点」がわかったかもしれません。そのような受験生は、それらの課題等を克服するために、課題のある箇所についてテキストや問題集を読んだり、解き直したりしてほしいと思います。

また、一般的にいわれることですが、財務諸表論に合格するためには、第三問の「計算問題」で高得点が求められます。具体的には、50点中40点程度を取れるとよいでしょう。

これは全体の8割程度を正答することになりますから、かなり高いハードルだと思います。そのためには、「計算の正確さ」と「計算スピード」が求められます。

財務諸表論は、理論問題と計算問題を合わせて2時間で解答する試験です。ですから、難しい理論問題で時間をかけすぎて、計算問題を解く時間が短くなってしまうこともよくあります。

これは「時間管理」の問題でもありますが、「計算スピード」が身についている受験生ならば克服できるケースもあるのです。

また、昨年の本試験のように、例年よりもボリュームのある計算問題が出題されることもありますから、ここからの1ヵ月間では、まず第三問の「計算問題」対策をしましょう。

今のうちに、総合問題(計算)を解き直し、周辺知識まで復習する

具体的には、本試験まで使っていた80分程度の総合問題(計算)を解き直しましょう。時間を計って解くことによって、「集計方法に工夫が必要だな」とか、「しばらく解いていなかったので、ずいぶん計算に時間がかかってしまったなぁ」といったことに気づくことができるかもしれません。

これらを克服するためには、やはり「繰り返し解き直すこと」が効果的です。繰り返し解き直すことで、計算問題に慣れてきて「計算スピード」が上がるでしょうし、「自分なりの集計方法」が確立できるようになります。

また、間違えた箇所は解答解説を見て終わりとするのではなく、「テキスト」に立ち戻って確認することが大切です。問題を解いたときに間違えるというのは多くの場合、「その問題だけができない」のではなくて「その問題の周辺知識がおろそかになっている」可能性が高いのです。

そのため、少し角度を変えて出題されると、また間違ってしまうことも想定されます。間違えた箇所を「テキスト」で確認し、その周辺知識まで復習しておくとよいでしょう。少なくとも週に1回は80分程度の総合問題を解いて、間違えた箇所を「テキスト」でしっかりと確認しましょう。

加えて、理論についても、通勤・通学などスキマ時間を利用しながら、「理論テキスト」を読むのが良いと思います。全く触れないよりも、少しでも読んでおくことによって、経験者で再度覚える時にも覚えやすくなるはずです。ただ読むだけでは眠くなることもあるので、声を出せる環境であれば、理論テキストを「音読」するのも効果的です。
ぜひ、ここから合格発表までの1ヵ月間を有意義な時間にしてほしいと思います。

【執筆者紹介】
加茂川悠介(かもがわ・ゆうすけ)

税理士、CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務や河合塾ライセンススクール講師を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACのほか芦屋大学や大阪経済法科大学、大阪産業大学、近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。
著書に『ストーリーとまとめ問題でよくわかる! かけるくんの簿記入門』(Parade Books)がある。


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