【連載】実力チェック!消費税課税判定クイズ:第2回


税理士
川上悠季

こんにちは! 税理士の川上悠季です。
税理士試験の勉強も直前期に突入し、難易度の高い問題をこなす機会が多くなってきたと思います。

そこで今回は、消費税法の直前期レベルの応用論点の理解度チェックのために、〇×問題を9問出題します!

本連載では、消費税法の基礎論点の理解度チェックのために、〇×問題を出題します(全4回・毎月下旬掲載予定)。各回の難易度は次のように設定しています(出題数は各回により異なります)。

<連載の難易度(予定)>
第1回:初学者レベルの基本問題
第2回:直前期レベルの応用問題(今回)
第3回:本試験レベルの発展問題
第4回:基礎~発展まで万遍なく出題

それでは早速、今の時点での学習到達度を測るために、今月の9問にぜひ挑戦してみてください!

問題(全9問)

解答後、「送信」ボタンを押すと、ページ上部に「スコアを表示」ボタンが表示され、解答結果をご確認いただくことができます。

解答・解説

問1.×

特許権の譲渡に係る国内取引の判定は、登録機関の所在地(2以上の国で登録されている場合は、権利の譲渡を行う者の住所地)が国内にあるかどうかにより行います。したがって、イギリスのみで登録されている特許権の譲渡は国内取引の要件を満たさず不課税取引となります。

問2.×

従業員に支給した通勤手当は、通勤のために通常必要と認められる範囲内の金額であれば、所得税法上の非課税限度額を超えている場合であっても課税仕入れに該当します。

問3.〇

週2回以上発行される定期購読契約に基づく新聞の譲渡は軽減税率の適用対象となりますが、小売店舗等で即売されている新聞は定期購読契約に基づいて販売されるものではないため軽減税率の対象となりません。

問4.〇

農林水産業のうち消費税の軽減税率が適用される飲食料品の譲渡を行う事業は第二種事業となります。

問5.〇

免税事業者から課税事業者となる場合、前課税期間中に仕入れた商品に係る消費税額について棚卸資産に係る消費税額の調整の適用を受け、当課税期間の課税仕入れ等の税額とみなされます。当該商品につき値引きを受けた場合は、仕入れに係る対価の返還等の処理を行う必要があります。

問6.×

特定課税仕入れ(事業者向け電気通信利用役務の提供又は特定役務の提供)を行った国内事業者は、リバースチャージ方式による納税義務を負います。事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいいます。本問のオンラインビデオ通話アプリのように誰でも利用できるものは事業者向け電気通信利用役務の提供に該当せず、いわゆる消費者向け電気通信利用役務の提供に該当するため、リバースチャージ方式による納税義務は負いません。

問7.〇

再生計画認可の決定により債権の切捨てがあった場合は「貸倒れの事実」に該当するため、貸倒れに係る消費税額の控除の適用があります。

問8.×

相続があった年の納税義務の免除の特例では、被相続人の基準期間における課税売上高のみを用いて1,000万円を超えているかどうかの判定を行います。本問の場合、乙の基準期間における課税売上高は1,000万円以下なので、甲の令和5年の納税義務は免除されます。なお、相続年の翌年・翌々年については、相続人の基準期間における課税売上高と被相続人の基準期間における課税売上高を合算して納税義務判定を行うことに注意しましょう。

問9.〇

国内における課税資産の譲渡等(消費税が免除されるものを除く。)及び特定課税仕入れがなく、かつ、差引税額がない場合は、消費税の確定申告義務はありません。なお、その場合でも、控除不足税額又は中間納付還付税額がある場合は還付を受けるための申告書を提出することができます。

学習到達度とアドバイス

いかがでしたか?

問5・6・9は少し考えさせる難しい問題だったと思います。

今回の問題の得点に応じた学習到達度・アドバイスは次のようになります。

8~9点:現時点でも十分合格ボーダーラインに差し掛かっているほどの実力に達しているといえます。このペースで本試験まで学習を進めましょう!

6~7点:応用論点の理解はある程度できているといえます。ただし、土台となる基礎論点の復習や条文等の細かい言葉尻の正確な暗記も怠らないようにしましょう。

5点以下:現時点では、応用論点をやみくもに学習するよりも、その土台となる基礎論点の復習や重要理論の正確な暗記を優先する方が良いでしょう。

基礎論点の復習と理論の正確な暗記を心がけよう

今回のような応用的な問題を解けるようになるためには、①基礎論点の復習と②理論の正確な暗記の2つが重要となります。

例えば、本問の問5に関しては、「免税事業者が課税事業者となる場合、期首棚卸資産について調整を行う」という基礎論点と、「課税仕入れにつき値引きを受けた場合は仕入れに係る対価の返還等が適用される」という基礎論点の組み合わせの問題になります。このような問題は、基礎論点をしっかりと理解していなければ正答できません。

また、問9については、理論を正確に暗記していなければ正答できない問題でした。税理士試験では、「なんとなく」のふわっとした理解だけでは太刀打ちできないような問題がよく出題されるため、理論暗記を通じて、条文等の細かい言葉尻までしっかり理解することが重要となります。

今回の問題の出来にかかわらず、基礎論点の復習と理論の正確な暗記は、本試験直前まで常に怠らないよう心がけましょう!

第1回:初学者レベルの基本問題も合わせて復習しましょう!

【執筆者紹介】

川上 悠季(かわかみ・ゆうき)
税理士
慶應義塾大学卒業。23歳で税理士試験官報合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、事業税)。税理士受験生のときにアプリ「消費税法 無敵の一問一答」を開発。資格の学校TAC税理士講座において講師を務めた経験もあり、現在は教材制作を担当。第45回(令和4年度)日税研究賞・税理士の部において研究論文「現物出資が行われた場合の消費税の課税標準に関する一考察」が史上最年少で入選。「楽しく学ぶ」をモットーに、アプリやウェブサイト、SNSなどを通じて消費税法をクイズゲームのように楽しんでもらえるよう尽力している。
・Twitter(@YukiKawa_Tax 本人アカウント)
・Twitter(@mutekishouhizei 消費税法一問一答アプリアカウント)
「消費税法 一問一答アプリ」公式ホームページ

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