税理士
川上悠季
こんにちは! 税理士の川上悠季です。
暖かく過ごしやすい季節になってきましたね。
会計事務所で勤務されている税理士受験生にとっては、確定申告シーズンの繁忙期が終了し、ようやくほっと一息つける時期になったといえるでしょう。
その一方で、繁忙期にあまり勉強時間が確保できず、このまま直前期の応用論点の学習に進んでも大丈夫なのだろうかと不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本連載では、消費税法の基礎論点の理解度チェックのために、〇×問題を出題します(全4回・毎月下旬掲載予定)。各回の難易度は次のように設定しています(出題数は各回により異なります)。
<連載の難易度(予定)>
第1回:初学者レベルの基本問題(今回)
第2回:直前期レベルの応用問題
第3回:本試験レベルの発展問題
第4回:基礎~発展まで万遍なく出題
それでは早速、今の時点での学習到達度を測るために、今月の10問にぜひ挑戦してみてください!
問題(全10問)
解答・解説
問1.×
資産の譲渡に係る国内取引の判定は、譲渡が行われる時におけるその資産の所在場所が国内にあるかどうかにより行います。したがって、国外に所在する土地の売却は国内取引の要件を満たさず不課税取引となります。
問2.〇
「所得税法に規定する給与等を対価とする役務の提供」は課税仕入れの範囲から除かれているため、給与所得となる役員賞与の支給額は課税仕入れに該当しません。
問3.×
土地の譲渡・貸付けは非課税取引とされていますが、貸付期間が1月未満の場合は非課税となりません。したがって、本問の賃貸収入は課税売上げとなります。
問4.×
自己の製造した製品を販売した場合は、相手先が事業者であるか消費者であるかにかかわらず第三種事業となります。
問5.×
信用の保証としての役務の提供は非課税取引とされているため、信用保証料の支払いは課税仕入れとなりません。
問6.〇
保険金の受け取りは、一定の保険事故の発生に伴い収受するものであり、モノやサービスを提供した対価として受け取るものではないため、対価性のない取引として不課税取引となります。
問7.×
建物Dの税抜支払対価の額は1,000万円未満(1,045万円×100/110=950万円)なので高額特定資産に該当しません。仕入税額控除が認められない居住用賃貸建物とは、非課税とされる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産(又は調整対象自己建設高額資産)に該当するものをいうため、建物Dは居住用賃貸建物に該当せず、仕入税額控除の制限は受けません。
問8.×
納税義務が免除されないこととなるのは、基準期間における課税売上高が1,000万円を「超える」場合です。
問9.〇
基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、特定期間における課税売上高又は特定期間中に支払った給与等の合計額のいずれかが1,000万円以下であるときは免税事業者となることができます。
問10.×
事業を開始した日の属する課税期間から課税事業者の選択の適用を受けようとする場合は、その課税期間中に「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
学習到達度とアドバイス
いかがでしたか?
問7・9・10はやや深掘りした問題だったため難しかったかもしれません。しかし、いずれも重要度のかなり高い論点からの出題のため、しっかりと得点したいところです。
今回の問題の得点に応じた学習到達度・アドバイスは次のようになります。
9~10点:基礎論点の定着はバッチリです! 自信を持って応用論点の学習に進みましょう。
7~8点:基礎論点はある程度定着しているので、応用論点の学習に進んで大丈夫です。ただし、応用論点を学習するうえで疑問に感じるところがあった場合は、その都度基礎論点に戻って復習するようにしましょう。
6点以下:今の段階ではまだちょっと基礎があやふやなようです。応用論点の学習に進む前に、基礎論点の復習を徹底するようにしましょう。
消費税法では理論の暗記・理解を重視しよう
財務諸表論では、まずは計算力をしっかり身につけ、そのうえで「なぜこのような仕訳を切るのか」といった理論を理解する「計算→理論」という流れの学習が効率的です。
一方、消費税法は、課否判定や課税仕入れの区分判定、納税義務判定をしっかりできるかが肝となります。そのためには、判定のための土台となる条文等を正確に暗記・理解していなければならないため、「理論→計算」という流れの学習が効率的です。
今回あまり点数を取れなかった方は、やみくもに計算問題をこなすのではなく、テキストや理論暗記教材の読み込みを徹底するようにしましょう!
次回(5月上旬予定)の問題も、ぜひ挑戦してください!
【執筆者紹介】
川上 悠季(かわかみ・ゆうき)
慶應義塾大学卒業。
23歳で税理士試験官報合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、事業税)。
2022年日税研究賞入選。2024年新日本法規財団奨励賞(会計・税制分野 優秀)受賞。
自身が税理士受験生だったときにスマホアプリ「消費税法 無敵の一問一答」を開発。「楽しく学ぶ」をモットーに、アプリやウェブサイト、SNSなどを通じて消費税法の知識を広く発信している。
・X(@YukiKawa_Tax 本人アカウント)
・X(@mutekishouhizei 消費税法一問一答アプリアカウント)
・「消費税法 一問一答アプリ」公式ホームページ
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