【会計士試験】12月短答終了! 合格ライン超え?ギリギリ? 「次」に向けてどう進む?


【編集部より】
公認会計士試験の12月短答式試験が終了し、各専門学校も解答速報や合格ライン予想などの情報を発信しています。
1月の合格発表まではそれらの情報を基に自己採点で判断し、今後の受験計画を考える人も多いのではないでしょうか。
そこで、竹内 航先生(TAC講師)に、受験生のタイプ別に当面の学習アドバイスをいただきました。

試験直後に多い受験生の悩み

――先日、12月短答式試験が終了しました。短答式試験の直後に受験生からよく寄せられる相談はどういった内容が多いですか。

竹内先生 例年、試験翌日というよりも、4~5日経ってから相談が増えることが多いですが、その中でももっともよくあるのが、「論文式試験に向けてどういう勉強をするのが効率的ですか」という質問です。

というのも、短答式試験では細かい知識を問われていた一方で、論文式試験では知識の中の理解,本質の部分が問われるというように、試験の形式が大きく異なることから、今後の勉強方針を相談されることが多いですね。

――多くの方が論文式試験に照準を合わせているのですね。

竹内先生 そうですね。ただその中で、短答式試験の自己採点結果が「まだ実力が足りていない」という方に対しては、財務会計論と管理会計論の計算をしっかり固めることが優先だという話になることもあります。

自己採点の結果が合格予想ライン付近や少し届かないという方は、論文式に向けた勉強、特に論文式試験で新しく加わる「租税法」や「経営学」の勉強を始めたほうがいいですね。

実は、受験生には、「どうしても短答式に受かりたい」という人と、「ゴールは8月の論文式だ」と思っている2タイプあるので、僕の場合は、受験生本人の希望も聞きながら答えるようにしています。

――その2つのタイプでは、どちらのほうが最終的に合格しやすい捉え方になりますか。

竹内先生 僕自身は「ゴールは論文だ」と思っているので、論文式に合わせられるといいなとは思います。

ただ、この価値観は本当に人それぞれで、たとえば、両親や家族に受験を続けることを説得しないといけないなど、いろいろな理由から、「まずは短答式に合格したい」という人もいるので、それぞれの環境に合わせてプランニングするといいと思います。

燃え尽きて勉強がなかなか再開できない

――他によくある相談はありますか。

竹内先生 実は僕自身もそうだったのですが、短答式試験の後には、それこそ「燃え尽き症候群」のように「しばらく勉強いいや…」という気持ちになる人が多いんですね。
それでしばらく勉強せずに過ごして、「そろそろまずいな」と思って相談に来る人もいます。

――「そろそろまずいな」と焦り始めるのはいつ頃が多いですか。

竹内先生 2月頃ですね。僕が在籍するTAC早稲田校は大学生の受講生が多いのですが、春休みに入って、「あれ、皆もう模試とか答練とかをガンガン解いているぞ…?!」と。

思ったより長いな、と思われるかもしれませんが、12月に短答式があって、年末年始をゆっくり過ごして、そのあと1月には大学の試験があるので、その勉強をしていたら、あっという間に春休みになるんです。

そこで、「マズイ!」と気づいて、答練とか始まっているのに、まだ講義内容も進められていなくて焦る、という人は例年いらっしゃいますね。

――そうすると、モチベーションをどう維持するかというのも大事になりますね。

竹内先生 僕がモチベーションの相談をされた時によく言うのは、「この試験って勉強しないと一生終わらないよ」「今の状態で心から楽しく遊べないでしょ」ということです。

勉強よりも遊びのほうが楽しいし、ダラダラ過ごしたい気持ちもよくわかるのですが、結局は、勉強しないと一生このループからは抜けられません。

ちょっと厳しい話だとは思いますが、こう言われると「勉強しなきゃな」という気持ちにはなると思うので表現を工夫して伝えるようにしています。

合格ラインギリギリの人はこれからどうする?

――特に合格発表までは結果がはっきりわからない状況で勉強をすることになると思いますが、どういう気持ちで取り組むといいでしょうか。

竹内先生 当然、合格ライン付近の人が一番、結果が気になりながら、論文式の勉強をしていると思います。租税法や経営学のように新しい科目を勉強するので、その新鮮な気持ちを活かしてうまく切り替えられるといいのではないでしょうか。むしろ新しい科目を早くやりたいという人もいます。

ただ、そうはいっても、合格発表の1週間前くらいからは受験生皆がドキドキして待っているので、なかなか集中できないのは仕方ありません。

――ポーダーギリギリの人も、次の目標は「論文」に合わせるとよいということですが、具体的な勉強スケジュールなどはありますか。

竹内先生 やはり、まずは新しい科目である租税法と選択科目の2つについて、講義を進めていくことですね。結果が予想と外れることもあると思いますが、もしダメだったとしても、その後、5(Ⅱ短答)→8(論文)での合格を狙うにあたっては必ず活きてきます。
なので、まずは新しい科目の基礎を固めることですね。

そのうえで、論文式試験の直前期になると、計算に力を入れる時間がほとんどないので、週一ペースで行われるような答練で毎回よい点数が取れるように計算力を強化することです。
また、短答式ではあまり触れていないことから総合問題に慣れていない方もいると思うので、学習した基礎問題の確認のためにも総合問題(TACだと「パワーアップ問題」といいます)に取り組むと良いと思います。

財務計算と管理計算はしばらく触れていないと、すぐに忘れてしまうので、まずは1月の合格発表までにしっかり実力を高めて、その後計算に時間が割けない時期が来てもキープできるように取り組んでほしいです。

――どういうレベルの問題を解くと効果的でしょうか。

竹内先生 テキストのような基本的な教材を使って、その例題を確認していこうという話を最初にします。

忘れてしまっている論点を思い出すところからスタートすると思うので、12月中は何を忘れているかをしらみつぶしにして、1~2月頃でだんだん負荷を上げて、難しい問題を解くようなイメージです。

論文式試験では構造論点の問題が多いので、連結会計や企業結合などの簡単な問題から始めて、だんだん負荷を上げていくといいですね。

――合格発表までは、計算の基礎固めと論文の新しい科目の基礎をマスターすることなのですね。

竹内先生 もし5月短答を受けることになって、短答直前に論文式の対策をしなくなっても、一度、基礎をマスターしていれば、間違いなく思い出すのが楽で、その後の負担が減らせるはずです。

なので、基本的には、3月頃までは短答式と論文式の両方を並行しながら勉強していくようなスケジューリングがお勧めです。

そして、短答式直前期の4〜5月は、論文式試験のことは一旦忘れていいので、短答式に完全にシフトします。

合格ラインを越えられなかった人はこれからどうする?

――一方で、自己採点の結果、現時点で5月短答を目指すことが確実な人もいると思いますが、その場合はどういう勉強を進めていけばいいですか。

竹内先生 5月短答を目指す人には大きく2タイプいて、1つは先ほどのギリギリだった人、もう1つはそもそも間に合っていなかった人です。
そもそも試験に間に合っていなかった人や、もともと来年の5月短答式を目指している人は、いま論文式の勉強に時間を割くのはリスクがあります。

例えば、12月短答式の予想合格ラインが70%として、自己採点で40%や45%しか取れなかったという状態の人は、「基礎力」が足りていません。
そのような場合は、「5月短答式に特化した勉強をしたほうがいい」というアドバイスをします。
具体的には、テキストのような基礎的な教材を中心に「計算力の強化」を最優先に学習計画を立てると良いと思います。

合格ラインを超えた手応えのある人はこれからどうする?

――では、自己採点で合格ラインを超えて、確実に8月論文式を目指せるはずという人は、これからどういった勉強をするといいですか。

竹内先生 まずは、早く次の論文式に切り替えてもらいたいですね。
特に、余裕をもって合格をすると、ちょっと天狗になるというか、安心をしてしまって、「あ、しばらくいいや」という気持ちになりがちなんです。
ですが、その気持ちをいち早く切り替えて、「次を受からないと試験は終わらないんだ」という決意をもってほしいです。

短答式で、ある程度の点数を取れたというのであれば、それまでの勉強方法や勉強計画は間違っていなかったはずです。
なので、その自分の方法や計画の仕方を論文式用に切り替えるといいですね。

――勉強法を論文式用に切り替えるときのポイントはありますか。

竹内先生 短答式は、例えばテキストの注釈までしっかり目を通すような、細かい知識が要求されるのに対して、論文式は王道の論点について「そもそも理解しているか」を試されます。

さらには、短答式の場合は「マークシート」を塗ればよかったですが、論文式の場合は「自分の言葉」で書いて、相手に伝えなければなりません。
そのためには、まずは理屈部分を理解することがファーストステップなので、「理解する勉強法」に切り替えていくこと。
その次に、「自分の言葉で書いて相手に伝えられる」ようにすること。

僕自身が論文式受験生になった時にすごく思ったことは、日本語はたった1文字を変えただけで印象がかなり変わるということです。
だから、日本語を丁寧に扱うというか、その言葉の違いに敏感になることは大事だと思います。
特に採点する試験委員は学者の方もいらっしゃるので、専門用語を疎かにせず、一字一句正確に使えなくてはいけないですね。

――最後に受験生へ向けてメッセージをお願いします。

竹内先生 この試験は、どんなに頭のいい人だとしても、おそらく2,000時間以上は勉強していると思います。それだけ、勉強しないと合格は勝ち取れない試験です。
当然、勉強はすごく大変ですし、誰しもが毎日10時間勉強できる環境にあるわけではありません。

でも、現実的に戦う相手は、毎日10時間以上勉強しているような猛者たちばかりなんです。中にはそこまで時間がとれない方もいらっしゃると思いますが、時間がない中でも工夫して頭を使いながら勉強していきたいですね。

なので、もしやる気が出なくなった時は、そのことを思い出して、「合格したいから机に向かおうかな」という気持ちになってもらいたいです。

ただ、「勉強、勉強…」とばかり言っていては疲れてしまうこともあるでしょうから、そういった時には専門学校に通っているなら講師だったり、あとは合格者の方と話す機会があったりすれば、自分の不安や今後の勉強法を話してもらって、ぜひ頼ってほしいと思います!
講師をしている方は皆、頼ってもらえると嬉しいはずですし、親身になって相談に乗ってくれると思います。

全力でサポートしていきますので、「合格」というゴールに向かってともに頑張っていきましょう!

――ありがとうございました!

<お話をお聞きした人>

竹内 航(たけうち わたる)

早稲田大学商学部卒業。現在は、TAC公認会計士講座財務会計論講師(早稲田校担当)、EY新日本有限責任監査法人、株式会社アクリアに所属。
「受講生により身近な存在に」と考え、Twitter(@TAC_TakeWata)にて多くの質問対応を行っている。


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