わたしの独立開業日誌 #税理士・伴 洋太郎


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

「独立なんてしない」と思っていたのに

愛知県西尾市で税理士事務所を経営している、伴 洋太郎(ばん ようたろう)と申します。この記事では、2018年に独立開業して楽しく過ごしているわたしの、独立開業にまつわるストーリーをお話します。受験生の皆様のモチベーション向上や将来への展望を考える際のヒントとして、お役立ていただければ嬉しいかぎりです。

著者近影

「難関資格に挑んで合格し、自分が本当にやりたい仕事で、その道のプロになりたい」そんな思いで、税理士事務所へ転職したのが2009年。27歳の頃です。
実務経験を積みながら科目合格を重ね、2016年の試験で5科目目の合格を果たしたのち、2017年2月に税理士として登録されました。

登録当時は、独立開業を「無理ゲー(難易度が高くクリアーするのが難しいゲームの意)だ」と思っていました。新規開業した税理士が新たな顧客を獲得するのは容易でないと見立てていためです。

試験勉強から解放された私は、「税理士なるため」に使っていた膨大な時間を「よりよい税理士であるため」に使おうと決めます。

  • 税金や会計の分野に限らず、経営戦略やマーケティングなど、経営に役立つ知識を得られる本を読む。
  • 「税理士としてどうあるべきか」を積極的に発信している、世代の近い税理士の著書やブログを読む。

 そんなことをしていると、ふつふつと自分の中に湧き立つ気持ちを感じるようになります。

  • 経営って、実はとっても楽しいことなんじゃないか。
  • 税理士だって、独立開業したら経営者だよな。

日々大きくなっていく想いは、個人事業主として活躍している同級生や同じ士業の先生方に後押しされ、心の中の大部分を占めるようになります。そして2017年、35歳の秋に、独立開業を決断しました。

弊所の経営理念「経営をたのしむ人をふやす」には、まずは自分自身が事務所経営をたのしみたいとの想いがこもっています。

やってよかったこと、やっておけばよかったこと

独立を決断して最初にやったことが、事業計画書の作成でした。
勤務が終わって自宅に帰っては、パソコンに向かって計画書を作成する日々。これはやっておいてよかったと心底思っています。

  • 自分のなにが強みでなにが弱みか。
  • すでに市場にいる税理士と自分とではなにが異なるのか。
  • お客様はなにを決め手にして税理士を選んでいるのか。
  • その上で、自分はどんな税理士でいなければならないのか。

そんなことを日々考えて方針を明確にできたことが、独立後の不安や迷いを軽減してくれました。

その逆で、やらなかったけどやっておけばよかったのが、創業融資。
事業用のまとまった資金があれば、創業当初からホームページの整備やブランディングに投資する余力をもてたはずだからです。

幸いにも勤務中に貯めたお金がそれなりにあったのと、当初は自宅開業で固定費がほとんどかからなかったので、生活費にはそこまで不安がありませんでした。
反面、独立当初の売上が少ない段階で事業に大きなお金を投じることに対しては、消極的であったように思います。結局、独立2年目に政策金融公庫の新創業融資を受けました。
もっと早くやっておけばよかった。

見た瞬間にわかる差別化

独立当初から強く意識していたことが「他の税理士とは違うと、一目で分かる」ということです。市場ではすでに、多くの先輩税理士が活躍していらっしゃいます。
そこへ飛び込んでお客様に選んでいただくためには、良くも悪くも違いを身につけ、その違いをお客様に見付けていただかなければならないためです。

  • 競合がホームページにお金かけていなければ、自分はかける。
  • 競合がデザインにお金をかけていなければ、自分はかける。
  • 競合の見た目が堅い感じであれば、自分は柔らかい感じで。
  • 競合が事務所名にアルファベットを使っていなければ、自分は使う。

そんなふうに、見た瞬間に分かる部分で競合がやっていないことをやりました。
おかげさまで、次のような理由でお客様に選んでいただけるようになっています。

  • 人となりが伝わってきて安心できる。
  • コミュニケーションが取りやすそう。
  • ブランディングのことが分かってそう。

サービス業のような形のない業種では、見た目のようなわかりやすい違いが取引の決め手になることも少なくないように感じます。
一方で、税理士という職業に対する世間のイメージはある程度確立されていて、ちょっとした違いを身につけるだけでも目立つことができるようです ヒト・モノ・カネといった経営資源の乏しい独立開業当初だからこそ、「見た目」を競争力の源泉ととらえてみるのも良いのではないでしょうか。

事務所名を改称した際に作り替えた、ホームページのファーストビュー

受験生へのメッセージ

税理士試験に挑戦するような方は、元来チャレンジングな気質をお持ちのはずです。無事に資格を取得されたあとも、新たな挑戦に身を投じられる方が少なくないでしょう。
そうやって積極的にポジションをとって、人生というゲームをより良いものにできる素質があるのです。

そんな皆さんですから、資格取得後の独立開業もきっと楽しめると思います。税理士資格という後ろ盾があれば、なおのことです。
受験中は辛いことも少なくないでしょうが、きっと今の経験が将来を豊にしてくれるはず。皆さんの挑戦を、心より応援しています。

【執筆者紹介】
伴 洋太郎(ばん ようたろう)

業務ではSaaSをたくさん使いながら、PythonとAPIを利用した省人化に取り組んでいて、個人事業主や小規模法人の税務を得意としている。
1982年 愛知県生まれ
2016年 税理士試験合格(簿記・財表・法人・消費・国徴)
2017年 税理士登録
2018年 地元の愛知県西尾市で伴洋太郎税理士事務所を開業
2020年 事務所名をBANZAI税理士事務所に改称
事務所ホームページ
Twitter(@ban_tax240)
Instagram(事務所スタッフが更新)

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