【税理士試験】今年の法人税法はどうだった? 新山高一先生が予想するボーダーラインと学習アドバイス


新山 高一(東京CPA会計学院講師)

受験生の皆さん、法人税法の本試験お疲れさまでした。早速、問題の感想や難易度について振り返ってみます。

問題の感想

第一問

問1は⑴が受取配当金関連の取扱い、⑵がみなし配当関連の取扱いです。受取配当金は、重要性が非常に高い論点であったことから、ほとんどの受験生はしっかりと押さえていたと思います。

内容はそれほど難しくなく、あまり大差がつかない問題だと思います。このような問題では逆に1つのミスが命取りになるため、いかに正確に解答を作成できるかがポイントになります。

また、⑵については前期もみなし配当を行っていることと、外国法人からのものであることにも注意が必要だと思います。

問2は解散・清算の取扱いで、⑴が繰戻し還付に関する取扱い、⑵が清算中の法人の事業年度と確定申告書、中間申告書の提出義務に関する取扱い、⑶は欠損金の引継ぎと株式の評価損、資本金等の額の取扱いです。

これらの論点は各専門学校の講義を通じて学習しているはずですが、答練などで一度解答していないと、なかなか点数が取りづらいです。また、内容としても幅広く問われているため、完答するのは難しく、特に⑴は完答するのは難しいでしょう。まずは、⑵と⑶でしっかりと点数が取れているかがポイントになると思います。

第二問

ここ最近の出題傾向である実務で頻出する論点を中心としており、問われている内容も基本的な部分が中心でした。内容としては租税公課、外貨建取引(期末換算)及び外国税額控除、役員給与、減価償却、暗号資産及び寄附金で、各論点における基本的な理解ができているかを確認する問題でした。

全体的にそれほど難しい問題ではありませんでしたが、量が多いため、いかに正確に問題を解けるかがポイントかと思います。また、事業年度が9月であったり、少額減価償却資産の組み合わせを考えたりと、いろいろと複雑な問題でした。ただ、それでも落ち着いて解けば、十分に点数が取れると思います。

難易度、合否を分けたポイント、予想ボーダーライン

第一問の問1は「普通」、問2は「やや難」、第2問は「普通」です。

第一問の問1と第二問でいかに失点を防げたかが合否のポイントになると思います。

ボーダーラインとしては、第一問の問1が「7割」、問2が「6割」、第二問は「6割」と思われます。

今後の学習アドバイス

理論について

ここ最近の本試験は、法人税法の基本的かつ重要な制度を問う傾向にあり、出題形式についても、用語の意義を述べさせて、その取扱いを問う問題や、それに関連する事例形式での出題が主流になっています。

そのため、法人税法の理論の勉強方法として全般的に言えることは、

① 用語の意義及び取扱いを重要性の高い論点からしっかりと押さえること

② 押さえる際には、各規定の基本的な考え方もしっかりと理解すること

③ 計算とリンクさせてしっかりと押さえること

が重要だということです。

①に関しては言うまでもないですが、「どこまで押さえるか」という問題はあります。用語の意義はきりがないため、まずは、講義で出てきた用語や理論集でも重要性が高いところを中心に押さえることが大事だと思います。

続いて、②により事例形式の出題に対応することができます。事例形式の問題の場合、規定通りの取扱いが出題されるとは限りません。そのときに、各規定の基本的な考え方をしっかりと理解していれば、解答を導き出せるため、その意味でも、各規定の基本的な考え方をしっかりと理解することは大切です。

③に関しても、計算と理論がリンクするような問題が最近は出題されています。今回の本試験のように単なる金額の算定であれば、答練などを通じて出題されますが、以前の本試験では、評価損の計上事由が出題されたり、同族会社及び役員判定をさせる問題が出題されたこともありました。これらは、計算では当たり前のようにできるのに、理論で問われると解答できない受験生が多かったです。それを防ぐためにも、計算と理論をしっかりとリンクさせて押さえることが大事です。

とはいえ、理論に関して基礎が身についていなければ、③のような問題や事例形式の問題に対応することができないので、年内は①および②を中心に理論の学習は行いましょう。

計算について

計算に関しては、ここ最近の出題傾向は、実務で頻出する論点を中心としており、問われている内容も基本的な部分が中心であることから、あまりに難しい取扱いが問われることは減ってきた印象です。しかし、難しくはないものの、少々変わった内容や特殊論点の出題がやや増えている印象があります。

とはいえ、特殊論点の問題(組織再編税制、グループ通算制度、事業年度が1年未満)は、答練などを通じて確認すればよく、今すぐに取り掛かる必要はありません。まずは基礎をしっかりと固めることが大事です。

ここで、自己採点の結果によって来年の再受験を見据えている方へのアドバイスをお伝えします。

今年はじめて受験された方

今年はじめて受験された方は、まずは個別問題集に再度取り組みましょう。それも1回だけではなく、できれば何回もです。

もちろん、個別問題だけ解けばよいというわけでもなく、各規定とのつながりを理解することも大切なので、総合問題もしっかりと解くようにしましょう。とはいえ、年内からいきなり難しい総合問題を解くのではなく、基礎をしっかりと確認する意味でも、基本的なレベルの取扱いが出題されている総合問題を解けば十分です。

さらに理論と同様に、各規定の基本的な考え方をしっかりと理解することも大事です。今回の本試験で出題された暗号資産の交換は、仮に取扱いを知らなくても、法人税法上の考え方(交換=譲渡)を理解していれば解答を導き出せます。

理論と計算は表裏一体であることをしっかり意識してください。

今年すでに2年目以降の受験だった方

2年目以降の受験者に関しては、基本的には11月末の結果発表の後、法人税法を再受験するかを決めることになると思います。

再受験する場合、やはり大事になってくるのは基礎期の内容です。意外に数ヵ月学習しないだけで、今まで学習してきた内容は忘れてしまいます。

応用期の内容は再度学習するため問題ないのですが、基礎期の内容はしっかり復習するタイミングがないため、応用期の練習問題を解いても、基礎期の内容を忘れていることが原因で、思うように解けなかったという声もよく聞きます。

応用期は一般的には年明けからスタートすることが多いため、既受験者は結果発表後の12月をどのように過ごすかを今年は考えなければいけません。となると、少しでも基礎期の知識を取り戻すという意味でも、年内に問題を少しずつ解いておきましょう。

そのため、基礎期の練習問題がまだ手元にあれば、処分せずに置いておくのもよいと思います。また、日々の積み重ねが合格につながるため、個別問題集や練習問題をしっかり解いていくことが大切です。

【プロフィール】
新山 高一(にいやま・こういち)
東京CPA会計学院卒業。卒業年の翌年に税理士試験に合格し、その後、同校の講師として、主に法人税法を中心に指導を行っている。初学者でも法人税法がわかりやすく理解できるように、日々奮闘している。
東京CPA会計学院 税理士講座ホームページ


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