税理士・会計士・日商1級 絶対落とせない財表理論45ー総復習編②:有価証券


村上翔一(敬愛大学准教授)

*総復習編では9回にわたり、本連載の復習を行います。

Q1 有価証券とは、原則として、金融商品取引法に規定される証券を指す。有価証券の取得原価は、購入により取得した場合には、購入代価に付随費用を加算して決定する。
有価証券購入時の資産認識には2つの基準がある。1つは、売買約定日に買手が有価証券の発生を認識する( ア )基準、もう1つは、約定日から有価証券の受渡日までの時価の変動のみを買手が認識する( イ )基準がある。取得した有価証券は保有目的等の観点から区分され、それぞれの区分に応じて、貸借対照表価額、評価差額等の処理が定められている。

A
ア 約定日
イ 修正受渡日

金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)、par.22
契約日と受渡日が異なる金融資産の売買契約は、売買契約そのものを先渡契約として認識し、市場相場の変動に伴う当該契約の権利義務から生じる価値を金融資産又は金融負債として認識することが考えられることから修正受渡日基準が認められる(par.233)。

Q2 時価の変動により利益を得ることを目的とする有価証券を( ア )と呼ぶ。( ア )は( イ )をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。これは、投資家にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での( イ )に求められると考えられるからである。

A
ア 売買目的有価証券
イ 時価

金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)、pars.15、70
独立の専門部署によってトレーディングが行われているという外形的な状況、または、有価証券を短期的に頻繁に売買し、売却益を目的とする大量の取引を行っていると認められる客観的状況を備えている場合で、主として短期間の価格の変動に基づいて利益を獲得するために保有する有価証券を売買目的有価証券とする(金融商品会計に関する実務指針、par.268)。

Q3 満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券を( ア )と呼ぶ。( ア )は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得原価と債券金額との差額の性格が( イ )と認められるときは、( ウ )に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。( ウ )は、有価証券利息をその利息期間にわたって期間配分する方法であり、( エ )と( オ )があり、原則が前者である。なお、時価が算定できるものであっても、( ア )は約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による( カ )を認める必要がないことから、原則として、( ウ )に基づいて期末評価を行う。

A 
ア 満期保有目的の債券
イ 金利の調整
ウ 償却原価法
エ 利息法 
オ 定額法
カ 価格変動のリスク

金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)、pars.16、71-72
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)、pars.70、274
満期保有目的の債券に区分する場合、「満期まで所有する積極的な意思」という主観的な要件だけでなく、「満期まで所有する能力」という外形的な要件も必要とされる(金融商品会計に関する実務指針、par.273)。

Q4 他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を( ア )されている場合における企業を子会社と呼び、子会社以外の他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な( イ )を与えることができる場合における当該子会社以外の他の企業を関連会社と呼ぶ。これら子会社及び関連会社に対する株式は、( ウ )と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方から、取得原価をもって貸借対照表価額とする。

A 
ア 支配
イ 影響
ウ 事業投資

金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)、pars.17、73-74
持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)、par.5
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、par.6
子会社株式及び関連会社株式であっても、時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない(金融商品に関する会計基準、par.20)。有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には、この場合の「著しく下落した」ときに該当する(金融商品会計に関する実務指針、par.91)。

Q5 売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社及び関連会社に対する株式以外の有価証券を( ア )と呼ぶ。その具体例として、長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券や業務提携等の目的で保有する有価証券が含まれ、長期的には売却することが想定される。( ア )は、( イ )をもって貸借対照表価額とし、評価差額は( ウ )方式に基づき、( エ )あるいは( オ )の方法により処理する。前者は評価差額の合計額を純資産の部に計上し、後者は( イ )が取得原価を上回る評価差額は純資産の部に計上し、( イ )が取得原価を下回る評価差額は( カ )として処理する。なお、( ア )についても、取得差額が金利調整差額と認められる場合には( キ )が適用される。

A 
ア その他有価証券
イ 時価
ウ 洗替
エ 全部純資産直入法
オ 部分純資産直入法
カ 当期の損失
キ 償却原価法

金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)、pars.18、75-80
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)、pars.72-74
その他有価証券は、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものとして一括して捉えられており、時価評価が要求される(金融商品に関する会計基準、pars.75-76)。ただし、時価評価するも直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあるとして、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切でないとし、「純資産の部」に計上する方法が採用されている(金融商品に関する会計基準、pars.77-78)。

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総復習① 棚卸資産

【執筆者紹介】
村上 翔一
(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他

*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。


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