税理士・会計士・日商1級 絶対落とせない財表理論45ー総復習編①:棚卸資産


村上翔一(敬愛大学准教授)

*今日から9回にわたり、本連載の復習を行います。

Q1 棚卸資産とは、企業の営業目的を達成するために保有する財・サービスであり、短期のうちに物量が増減する項目である。棚卸資産は、( ア )資産と( イ )資産に分類され、後者は前者の原価構成要素等となる。なお、市場価格の変動により利益を得ることを目的に保有する棚卸資産を( ウ )目的で保有する棚卸資産と呼ぶ。

A 
ア 販売目的
イ 消費目的
ウ トレーディング

棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)、pars.3、28
連続意見書第四 第一・七

Q2 棚卸資産はその物量等が減少することで費用化される。この費用化の手続きを( ア )と呼ぶ。これにより収益獲得に貢献した資産が費用化され、( イ )を行うことが可能となる。棚卸資産の場合、主に販売時に費用化され、数量と単価の側面から把握される。

A
ア 原価配分(費用配分)
イ 適正な期間損益計算

連続意見書第四、第一・二・1
実現収益に対応する費用額を処理することによって適正な期間損益計算を行うことができる。

Q3 棚卸資産の払出数量の把握方法には2種類存在する。棚卸資産の受け入れのつど、その物量を記録し、期末に行った実地棚卸の物量を把握し、期首保有数量と期中受入数量の合計から期末実地棚卸高を控除した物量を払出数量として計算する方法を( ア )と呼ぶ。また、棚卸資産の受け払いのつど、物量を記録し、常に帳簿上の棚卸資産の残高を把握する方法を( イ )と呼ぶ。両方法を用いて、期末帳簿棚卸高と期末実地棚卸高を把握し、その差額から( ウ )を把握する。

A 
ア 棚卸計算法(実地棚卸法)
イ 継続記録法(恒久棚卸法、帳簿棚卸法)
ウ 棚卸減耗

連続意見書第四、第一・六
継続記録法は、資産管理や損益計算等に役立つとされるが手間を要する。そのため、重要性の高い資産に適用され、重要性の低い資産には棚卸計算法のみが適用されると考えられる。

Q4 棚卸資産は金額面も考慮される。売上収益に対応すべき( ア )は、販売した棚卸資産の実際仕入原価が理想だが、商品の受け払いが頻繁に行われる場合、実際仕入原価の把握は困難となる。そのため、過去の実際仕入原価をもとに、先入先出法、平均原価法などの( イ )が認められる。( イ )の結果、( ア )の金額と期末保有の棚卸資産の金額が算定される。
従来、当該( イ )の方法について、後入先出法が認められてきた。後入先出法とは、最も新しく取得されたものから棚卸資産の払出しが行われ、期末棚卸資産は最も古く取得されたものからなるとみなして、期末棚卸資産の価額を算定する方法である。この方法は、棚卸資産が過去に購入した時からの( ウ )を反映しない金額で貸借対照表に繰り越され続けるため、その貸借対照表価額が最近の( エ )の水準と大幅に乖離してしまう可能性がある。また、棚卸資産の期末数量が期首の数量を下回る場合には、期間損益計算から排除されてきた( オ )が当期の損益に計上され、その結果、期間損益が変動することとなる。

A 
ア 売上原価
イ 仮定計算
ウ 価格変動 
エ 再調達原価
オ 保有損益

棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)、pars.34-5-34-12
連続意見書第四、第一・六
後入先出法は、費用額に価格水準を反映しやすい一方、資産額が現在の価格水準と乖離するという特徴がある。

Q5 期中の払出数量と払出単価の計算の結果、期末に保有する棚卸資産の数量と金額が把握されることになるが、物理的な劣化である( ア )、経済的な劣化である( イ )や( ウ )によって、販売目的で保有する棚卸資産の時価が取得原価よりも下落している場合がある。この場合、資産の( エ )が低下したものとみなして、帳簿価額を時価にまで切り下げる。これは、棚卸資産の帳簿価額として将来の収益獲得に有用な原価のみを繰り越し、( オ )を反映させるために行われる。この場合の時価には( カ )が用いられる。

A 
ア 品質低下
イ 陳腐化
ウ 市場の需給の変化
エ 収益性
オ 回収可能性
カ 正味売却価額

棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)、pars.36-39
従来、市場の需給の変化による評価損の計上は容認であったが、現在では回収可能性の反映から評価損の計上は強制となっている。

【執筆者紹介】
村上 翔一
(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他

*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。


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