この春,はじめて簿記を学ぼうと思っている皆さんに学ぶ意義と途中で挫折しない勉強の仕方をアドバイス―『ビジネスセンスが身につく簿記』編著者,成川正晃先生にきく


ビジネスパーソンに必須といわれる「簿記」。
この春,あらたな気持ちで簿記を勉強してみようかなと考えている皆さんも多いと思われます。
そんな皆さんに学習をスタートする際にぜひ知っておきたいポイントを『ビジネスセンスが身につく簿記』の編著者・成川正晃先生(東京経済大学教授)にお話を伺いました。(編集部)

簿記を学ぶメリット

――なぜ簿記を学ぶ必要があるのでしょうか?

成川 簿記により,情報が産み出されます。
 これを簿記情報(あるいは会計情報)といいます。
 この情報によって何が示されるのかというと,組織体,たとえば企業の状況が示されることになります。
 このことから,簿記はビジネス言語と称されることもあります。
 すなわち,「簿記がわかればビジネスがわかる」という意味があります。

 簿記とは,ビジネスを知り,うまく対処するための必須の技術といえます。
 特に変化が激しい現代社会にこそ,簿記の意義,すなわち学習する意義が高まっているといえます。

簿記を学ぶ上で大事なこと

――簿記を学ぶうえで大事なことは何でしょうか?

成川 簿記学習においては,特別な専門用語や,ビジネス技術であるがゆえに,独特の処理方法が出てきます。
 この時に大事なことは,最低限の知識の修得と簿記処理方法に対する理解です。簿記処理方法の理解に関しては,「基本原理」をしっかりと把握することが大事になります(この簿記の「基本原理」を「簿記一巡」といいます)。
 
 『ビジネスセンスが身につく簿記』では,基本原理を押さえておけば,新しい経済事象に直面しても応用できるというスタンスで編纂されています。
 したがって,ある程度学習が進んだ方にこそ,基本に立ち返って簿記学習の軸を正しく持つという意味でも手にとっていただきたい基本書となります。

特に初学者が挫折しないために気をつけるべきこと

――初学者が挫折しないためにどのように勉強をすすめていけばよいでしょうか?

成川 初学者の方は,その学習の背景がさまざまですから,立ちはだかるハードルもそれぞれです。
 しかしながら,1ついえることがあります。
 「あまり,立ち止まらず,学習を前に進め,終えてから,最初の方を見返す」ということです。
 
 これは,ある山を登るときに,登った後で,登ってきた道を俯瞰すると,その行程がよく見えることがある,ということです。
 途中で止まることなく,登り切ってから,再度考えてみると,腑に落ちることは多いものです。

さらに実力をUPさせるために必要なこと

――さらにステップアップするために大事な勉強姿勢は何でしょうか?

成川 ステップアップするための勉強姿勢として求められるのは,ご自身の「興味」,「好奇心」でしょう。
 「あれ?簿記って面白いな」と思えたらしめたものです。
 そのためにも企業や経済に「興味」,「好奇心」を持ちましょう。
 簿記により作り出される情報がさまざまな価値を持っているのに気づかされるはずです。

 資格取得を目指すのは,その時の手段として最適なものでしょう。
 簿記検定を目指すのもよいですし,公認会計士や税理士取得を目指すのも「簿記学習のステップアップ」なしには,語れません。

 簿記により,皆さんの「ビジネスセンス」をぜひ磨いてほしいものです。

―勉強のポイントとして「途中でわからない点があっても立ち止まらず,全体を見通して繰り返す」,「興味・好奇心を持つ」は簿記に限らずすべての学習に通じるお話ですね。
 本日はお忙しい中どうもありがとうございました。

(お話を伺った成川正晃先生のご紹介)

成川 正晃(なりかわ まさてる)
東京経済大学経営学部教授
1959年和歌山県生まれ。明治大学商学部卒業,東京経済大学大学院経営学研究科博士後期課程退学。埼玉女子短期大学助教授,高崎商科大学短期大学部准教授,教授,東北工業大学教授を経て現職。
現在,日本会計研究学会評議員,日本簿記学会理事,日本会計教育学会理事,中小企業会計学会理事,財務会計研究学会理事。
<主要著書等>
『ビジネスセンスが身につく会計学』(編著),中央経済社,2018年
『ビジネスセンスが身につく簿記(第2版)』(編著),中央経済社,2022年
「中小企業会計要領と会計教育」『経理研究』(中央大学経理研究所),2014年(2014年度日本会計教育学会·学会賞受賞)ほか多数

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