【日商簿記】新・出題区分表「キーワード」解説:営業外電子記録債権・債務


渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)

2022年度より日商簿記検定試験の出題範囲が改定され、それに伴い、新しい学習項目が追加されます。

ただ、出題範囲を示した出題区分表や勘定科目表には、新しく登場したり意味がとりづらかったりするワードが見られ、2022年度に受験を検討する人にとっては悩みどころかもしれません。

そこで、そんなワードのうち、受験生からの疑問の声が多い以下の5つについて、簡単な例やイラストに基づいて解説します。

① 契約資産・契約負債
② 出荷基準・着荷基準・検収基準
③ 役務収益・役務原価
④ 変動対価
⑤ 営業外電子記録債権・債務

※ ①・②は3月9日、③・④は3月10日、⑤は3月11日に記事を掲載します。

最後には、出題が考えられる設例も載せておりますので、あわせて挑戦してみてください。

本記事では、「営業外電子記録債権・債務」について取り上げます。

用語のポイント

  • 営業外電子記録債権:営業外受取手形と同じように仕訳する。
  • 営業外電子記録債務:営業外支払手形と同じように仕訳する。

問われる知識

  • 電子記録債権は、ネットワーク環境で管理する手形であることを理解しているか。
  • 営業外取引(固定資産の購入・売却等)により、発生した債権・債務は一年基準が適用されるため、営業取引で発生した債権・債務と区別して会計処理を行うことを理解しているか。

用語解説

情報技術の発達により、新たな金銭債権として「電子記録債権」および「電子記録債務」が誕生しました。

このうち電子記録債権は、電子債権記録機関(でんさいネット等)への電子記録を、その発生・譲渡等の要件とする、既存の売掛債権や手形債権とは異なる金銭債権です。

企業が保有する売掛債権や手形債権等を電子化することで、ペーパレス化による盗難防止や、インターネット上で安全・簡易・迅速な取引ができるようになりました。また、電子記録債権は、決済手段として活用することができます。

※ 全銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)は、電子記録債権法にもとづく電子債権記録機関として、平成22年(2010年)6月に一般社団法人全国銀行協会の100%子会社として設立され、平成25年(2013年)2月18日にサービスの提供を開始しました。(出所:でんさいネットHP

以下に、電子記録債権・債務の発生から代金の入出金が行われるまでの流れを示します。C社とK社で掛けによる商品売買取引があったことを前提とします。

電子記録債権・債務の取引記録(発生・譲渡・消滅)

でんさいネットHPを参考に筆者作成。

C社には売掛金(債権)、K社には買掛金(債務)があり、電子記録債権・債務の発生記録を電子債権記録機関へ請求することで、C社では電子記録債権勘定(資産)、K社では電子記録債務勘定(負債)を増加させ、売掛金勘定と買掛金勘定を減少させます。

C社は、手形のように電子記録債権を取引先に譲渡(裏書譲渡または割引に相当すること)できます。

支払期日に、C社とK社が所有している銀行口座から代金決済が行われて取引完了です。

商品売買取引ではなく、固定資産の購入・売却時に電子記録債権・債務の発生記録をした場合、営業外取引のため「営業外電子記録債権勘定」・「営業外電子記録債務勘定」により記帳します。

設 例

次の取引について仕訳を行いなさい。

⑴ 備品750,000円を購入し、取付費用150,000円とあわせて電子記録債権(債務)の発生記録の請求が行われた。

⑵ 取引銀行から上記⑴の電子記録債権・債務について当座預金口座を通じて精算した。

解 答

⑴ 備品 900,000/営業外電子記録債務 900,000

⑵ 営業外電子記録債務 900,000/当座預金 900,000


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