わたしの独立開業日誌 #税理士・油谷景子


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

4つの事務所を経て「独立開業」へ

こんにちは、名古屋市で開業している税理士の油谷景子です。

22歳から地元の税理士事務所で働き、その後、名古屋の会計事務所へ転職しました。そこでは、国際税務(アウトバウンド)に関わることもあり、もっと知識をつけてより経験を積みたいと思い、東京の四大事務所へ再び転職しました。

この転職後、ご縁を頂き、名古屋の四大事務所へ。そして、「独立するくらいの実力も十分についた」と感じた2019年2月に独立開業をしました。

早いもので、来月の2022年2月で独立して丸3年になります。昨年の秋には、名古屋の中心地に事務所を移転するなど、その3年の間には、さまざまなことがありました。

◆開業後に撮影した写真

「はじめて」は思ったより時間がかかる

私が開業にあたりはじめに準備したものは、ソフトウェア、ホームページ、名刺などのような一般的なものです。

ただ、「ホームページを作る(依頼する)」のも初めて。「自分の名刺を作る」のも初めて。独立開業すると、1つ1つが初めてのことばかりで、検討することも多くあり、思ったより時間がかかりました。

勤務していたときには、「誰かがしてくれていたこと」を、改めて「自分で行う」となると、当然ながら自分で検討することもいろいろと出てきます。

皆さんがいよいよ独立開業をされるときは、「時間がかかるもの」という前提で、早めに着手されるとよいかもしれませんね。

はじめて「名刺」を作る

たとえば、名刺1つとっても、どういう情報を記載するか? 色はどうする? ロゴは? 配置は?…と、意外と考えないといけないことがありますよね。

名刺を作る際には、当然、事務所の住所、電話番号、メールアドレス、事務所の名称もロゴも決まっていないといけないため、「準備をする順番」も大事です。

はじめて「ホームページ」を作る

ホームページは、デザインや作成自体は外部の方に委託できます。しかし、掲載する内容は「自分で考えないと伝わらないこと」もあります。

たとえば、事務所のビジョンとか方針は、「自分で考えるもの」ですよね。そのため、「ホームページを作ろう!」と思っても、結構な時間はかかるため、できれば余裕を持って着手されるほうがよいかもしれません。

さらに、ホームページを作った後は、メンテナンスもしていくほうがよいと思います。

◆事務所ホームページ

はじめて「プロフィール写真」を作る

プロフィール写真は、プロのカメラマンに依頼するのがオススメです。私の場合、「開業時」と「開業した後」に、プロに撮影をしていただきました。

特に、開業した後の撮影では、800枚(!!)も写真を撮ったので驚きました。プロフィール写真の裏には、そんな「隠れた努力があるんだな」と新しい発見でした。

はじめて「ビジネスプラン」を作る

私の場合、開業当初から自分の事務所のビジネスプランも作っていました。

「事業計画書」については、「作ったほうがいい」という考えと、「作っても変わるから意味がない」という考えの方がいますが、私は、「事業計画書」はあったほうがよいと考えています。

それは、「自分の目指すもの」を文章化することによって、より明確にできるからです。

「作っても変わるから意味がない」という考えの方は、もしかしたら「計画通りにいかないのであれば意味がない」と考えているのかもしれません。

しかし、計画通りにいかなくて当たり前。目標と現時点の差を知り、その差を埋めていくという思考なら、やはり事業計画書はあったほうがよいのではないでしょうか。

事業計画書を作るときには、「自分がどういう想いで仕事をしていきたいのか」、「何を提供していくのか」という根っこの部分を考えることにもなります。

そうした本質と、しっかり時間をかけて向き合う時間も、独立前には大事です。

そして、独立した後も、周年などの節目節目で定期的にビジネスプランについてしっかり向き合う時間を持てるとよいですね。

私も、定期的にビジネスモデルや事業計画を考える時間を持つようにしています。

◆開業祝いで贈られた胡蝶蘭

独立開業してから変わった視点

独立開業してからは、税務知識のアップデートはもちろん、事務所運営において「マーケティング」や「市場分析」もしています。

独立をすると、税務業務の「職人」ではなく、「経営をする視点」が必要になるからです。

士業の事務所経営は、少し特有の側面もあるかもしれません。しかし、他の業種と同じように、「マーケティング」や「経営分析」は大事なことだと私は考えています。

半歩だけ先をいく先輩として思うこと

「いつ独立するか」は、将来的に悩む方もきっといるのではないでしょうか。私も、「独立する」と決めていましたが、その時期については少し迷いました。

私自身は2019年に独立し、自分としては「よいタイミングだったのではないか」と思っていますが、「もしかしたら、もう少し早くてもよかったかもしれない」と、ほんの少しだけ感じています。

それは、独立初期はエネルギーがいるからです。また、独立して、実際に動き出してみてから、わかることもあります。

何もかもが完璧なタイミングというのはないのではないでしょうか。

「失敗したくない、完璧なタイミングで独立したい!」

…と、思うかもしれませんが、結局は、自分がベストだと考えるタイミングで独立をする。

そして、そのためにできる準備はしておく。

きっと、不安ゼロの人はいないはずです。

ただ、「不安なのは先が見えないから」なので、先が見えれば不安は減ります。

「どういう問題が起こり得るのか」という見通しを立てることができれば、あらかじめ準備をすることができるからです。

私がかけられた言葉で、心に残っている言葉があります。

「不安なのは先が見えないから。先を見るには知識をつけること。」

これは、本当にそうだなと実感しています。

不安を解消するためにできること。足りない、必要な知識をつけ、学び、行動に移す。これが大事なのではないかと考えています。

中小企業白書によれば、「日本の企業の99%が中小企業。中小企業で働く人は約70%」だそうです。

私たち税理士は、そんな中小企業の支えになれる仕事です。楽しみながらいきましょう!

【執筆者紹介】
油谷 景子(あぶたに けいこ)

名古屋の開業税理士。Big4と言われる四大税理士法人で上場企業・中堅企業及び外資系企業向けの国内税務及び国際税務コンサルティングサービス等に従事したほか、名古屋市及び三重県の会計事務所で中小企業向け税務申告及び税務相談、経営コンサルティング、事業承継支援に従事。
22歳から独立を考え、独立を視野に知識を磨き実務経験を積んだ後、2019年2月に名古屋市で油谷景子税理士事務所を開業。現在は、中小企業向け会計・税務サービスを中心に、相続税業務も対応。ウェブ会議等も積極的に活用。

Twitter(@keiko_taxmgt)  
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