【簿・財 間違いさがしで実力チェック】第20回:自己株式③


ココが間違い!

負のその他資本剰余金残高が期中で発生した場合、その都度、繰越利益剰余金と相殺することはできない。

【間違った解説】

1.期中仕訳および決算振替仕訳

(1) 自己株式の消却

(借) その他資本剰余金 2,000
(貸) 自己株式 2,000
(借) 繰越利益剰余金 500
(貸) その他資本剰余金 500

(省略)

(注2)繰越利益剰余金:
2,000円(消却損)-1,500円(その他資本剰余金の当期首残高)=500円

(省略)

2.B/S繰越利益剰余金(解答の金額)

20,000円(当期首残高)-500円(負のその他資本剰余金の振替)+5,000円(当期純利益)=24,500円

【正しい解説】

1.期中仕訳および決算振替仕訳

(1) 自己株式の消却

(借) その他資本剰余金 2,000
(貸) 自己株式 2,000

(省略)

(注2)期中で発生した負のその他資本剰余金の残高は、その都度、相殺することはできない。

(省略)

2.B/S繰越利益剰余金(解答の金額)

20,000円(当期首残高)+5,000円(当期純利益)=25,000円

チェックポイント

「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」12項において、負のその他資本剰余金残高は、会計期間末において、繰越利益剰余金と相殺してゼロにしなければならないと規定されている。

よって、自己株式を消却した時点で、その他資本剰余金残高が△500円となるが、その後の自己株式の処分により7,000円計上されることにより、その他資本剰余金の当期末残高は6,500円となる

なお、負の残高が発生した場合に、その都度、相殺する方法によると、事業年度において、自己株式処分差益と自己株式処分差損(または自己株式消却損)の発生する順番が相違すると、計算結果が相違してしまうために、この方法は採用されていない(結論の背景42項)。

〈執筆者紹介〉
加藤 大吾(かとう・だいご)
早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師・公認会計士
2003年早稲田大学政治経済学部経済学科卒。2005年公認会計士登録。東京CPA会計学院にて公認会計士講座(簿記)・日商簿記検定講座の講師業務の傍ら、監査法人にて監査業務にも従事。2015年より早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師。著書に『税理士試験 簿記論・財務諸表論 総合問題なるほど解法ナビ』(中央経済社)がある。

本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。


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