令和2年公認会計士論文式試験および令和3年公認会計士試験の実施スケジュール公表―受験生への影響は? そしてどう対応すべきか? 


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加藤大吾(公認会計士、明治大学専門職大学院会計専門職研究科 教育補助講師、早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師)

 本日(令和2年6月26日),公認会計士・監査審査会より,令和2年の公認会計士論文式試験と令和3年の公認会計士試験の実施スケジュールが公表されました。
 
 それによれば,令和2年の論文式試験は令和2年11月14日(土)および15日(日)の2日間に短縮して実施され,合格発表は令和3年2月16日(火)の予定です。
 また,令和3年の短答式試験は令和3年5月23日(日)の1回のみの実施となり,令和2年12月の短答式試験が中止となりました。
 
 これらの公認会計士試験のスケジュールの公表により,受験生にどのような影響が考えられるのか,まとめてみました。

◆ 令和2年11月の論文式試験に与える影響

 論文式試験の日程が3日間から2日間となりましたので,受験生に与える負担感はかなり大きくなるものと思われます。
 
 今後,受験予備校が実施する模擬試験を利用するなど,試験日程に慣れておくことはもちろんですが,自宅から試験会場まで離れている場合には,ホテルなどに宿泊することも検討が必要になると思います。

◆ 令和3年の受験戦略に与える影響

 令和2年12月の短答式試験が中止となり,次回の受験チャンスが令和3年5月と延期され,大きな影響を受けることになります。
 
 短答式試験を合格するまでは,論文式試験のみの科目(租税法および選択科目)の学習をスタートしない受験生が多いものと思われますが,12月の短答式試験が中止により,試験の結果を待って学習をスタートするかどうかを決めることができません。
 かといって,令和3年5月の短答式試験まで,租税法および選択科目について何も対策をしないのは避けるべきです。
 仮に5月で短答式に合格した場合,8月の論文式試験までの期間が僅かですので,令和3年8月の論文式試験が記念受験で終わってしまうことになり,論文式試験の受験回数の1回分を捨ててしまうことになります。
 
 そこで,短答式試験対策と並行して,租税法および選択科目の学習を進める必要がありますので,学習の戦略を練り直す必要が出てくると思います。
 逆に言えば,合格目標が定まった以上,受験生は同じ条件で試験に臨むことになりますので,思い切って,租税法および選択科目の学習を早いうちの始めることができます。
 自分の学習の進捗具合に応じた効果的な受験戦略をいかに講じるかがポイントになってくると思います。

◆ 出題範囲に与える影響

 例年12月の短答式試験と,翌年5月の短答式試験および8月の論文式試験との間には,出題範囲には相違がありましたが,令和3年の試験では,令和2年12月の短答式試験が実施されないことから,令和3年4月1日(ただし,租税法は令和3年1月1日)現在施行(適用)の法令基準等のみが出題範囲となりました。

 このため,特に影響が大きいと思われる科目は,財務会計論です。「収益認識に関する会計基準」が令和3年4月1日以降開始する事業年度より強制適用されることから,同会計基準が適用される以前の出題はなくなることになります。
 これにより,メリットを受けることになるのは,令和2年12月短答式試験を合格目標としていた受験生です。
 
 従前の会計基準(特に計算問題)について,例えば,割賦販売や返品調整引当金など,廃止される予定の会計処理については学習する必要はなくなります
 このほかの科目についても,どのような影響を受けるのか,しっかりと情報を整理しておきましょう。


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