【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
群馬県内のスタートアップ企業をサポート
はじめまして、群馬県高崎市で開業している公認会計士・税理士の長島祐太です。
私は26歳から監査法人で働き、その後、上場会社の経理部に転職しました。
そして、33歳の時に独立開業し、約3年半が経過しました。現在は正社員2名、パート4名の体制で群馬県内のスタートアップ企業の税務顧問業務を中心に事業を展開しています。
今回は、公認会計士を目指してから独立までの経緯についてお話していきたいと思います。少しでも受験生の方々の参考になればうれしく思います。
22歳で会社の倒産を経験
私は学生時代に働いていたカラオケ店で、22歳の時に倒産を経験しました。
この会社は、上場準備中のスタートアップ企業で、私はエリアマネージャーとして千葉県内3店舗の管理を担当しており、大学卒業後も働く予定でした。
しかし、いつの日からか、掛で買えていた食材が現金払いに限定され・・・
給与の支払いがとまり・・・
ついには、家賃や生活費が払えなくなった従業員が店舗に寝泊まりするようになり・・・
数週間して2回目の不渡りを出して、夜逃げに近い状態のまま倒産となりました。
当時は、どうにかこの状況を打破したいと思い、呼び込みをしたり、チラシをまいたり1円でも多く売上をあげることに注力していました。
しかし、結果的には状況を変えることはできず、自分自身の無力さを実感することとなりました。
「企業経営全般の支援がしたい」
倒産という苦い経験から「企業の健全な経営を支援するような仕事がしたい」と考え、企業経営全般に高い専門性を有する公認会計士の資格取得を目指すこととなりました。
そこから受験勉強を始め、運よく2年半で合格することができました。
公認会計士を目指し始めた当初から、企業経営全般の支援ができる専門家像に憧れをもっていました。
といいながらも、戦略的にキャリアプランを考えて動いていたわけではありません。
運よく、最初に就職した監査法人でも、転職した上場会社でも、幅広く業務の経験を積ませてもらいました。
こうした幅広い業務経験を積むうちに、ある程度の自信と覚悟ができてきたため、独立開業することとなりました。
いつ、何に、どう設備投資をしたか
当初は、自宅兼事務所で、ひとり事務所として始めました。
しばらくは、会計コンサル会社や監査法人からの業務委託の仕事が中心だったので、揃えた設備といえばパソコン、Wi-Fi、名刺くらいで、ほとんど手ぶらで独立したような感じです。
開業2年目に税理士登録をしましたが、その頃にはじめてシェアオフィスを借りました。
それをきっかけに、業務用のプリンタやシュレッダー等を購入しました。
開業3年目にはシェアオフィスから事務所を移転。
その時に、机、イス、PC、モニター、スキャナー、本棚、応接用テーブル、ウィンドウサイン等々の大きめな設備投資を行いました。
地味に資金繰りが厳しくなった記憶があります・・・。
現在は、ソフト面の投資を積極的に行うようにしています。
たとえば、クラウド会計ソフトの契約を2社体制にしたり、会計事務所用のグループウェアを導入したり、WEBで見ることのできる実務講座の導入をしたりしています。
現在まで、設備資金・運転資金に関しては借入れを行うことなく、自己資金でやってきました。
仮に、借入れをして人材や設備にガンガン投資をしていれば、もっと早いスピードで事務所規模を成長させることができたかもしれません。
しかし、自分のキャパを考えると、今までくらいのスピード感がちょうどよかったのではないかと考えています。
はじめての採用活動と職員の教育
はじめにぶつかった壁は、はじめて職員を雇用した時です。
税理士登録をして10カ月くらいが過ぎた頃、業務量が多くなってきたので、そのタイミングで未経験のパート職員を雇用することとなりました。
私自身は、採用活動も、部下を教育・管理すること自体も、未経験でした。なので、最初は本当に手探りでやっていました。
また当時は、ひとり事務所で自由気ままにやっていたため、業務内容が定型化されておらず、スケジュール感もあいまいな状態でした。
そのため、職員への業務の引継ぎ、教育にかなり苦労した記憶があります。
この経験から、事務所の管理体制と職員がスキルアップできる環境の整備は、事務所の最重要課題として現在も常に改善に努めています。
事務所の営業戦略をどう考えたか
会計事務所での勤務経験も、営業経験もなかったこともあり、書籍やYouTubeなどで勉強しながら、事務所の営業戦略を作りあげていきました。
また、先輩の公認会計士、税理士にお会いした時には必ず質問し、常に情報収集をするように心がけていました。
今思うとかなりしつこく変わったやつだったと思います。しかし、こういった機会の中で得たことについては、「やれることは何でもやろう!」とひたすらトライしていました。
今では、営業戦略に1つの答えというものはなく、「トライ&エラーでひたすら挑戦し続けること」が答えに近いのではないかと考えています。
人とのつながりが未来を切り開く
私の人生を振り返ると、本当に人とのつながりに助けられていると実感しています。
今、なんとか独立開業してやれているのも、身近な人たちの支えがあってこそだと、心から感謝しています。
これからもいつも私を支え応援してくれている家族、職員、得意先の方々のために、日々頑張っていきます。
この記事を読んでくれた読者の方々も、身近な人を大切にすることは忘れないでいてください。
そうしたら、自然と自分の思い描く明るい未来が切り開けてくることと思います。
【執筆者紹介】
長島祐太(ながしま ゆうた)
公認会計士・税理士
1985年埼玉県生まれ。2008年大学卒業後、公認会計士試験に挑戦し、2011年に合格。試験合格後に監査法人、上場会社での勤務経験を経て、2018年11月に群馬県高崎市で独立開業。群馬県内のスタートアップ企業の税務顧問業務を中心に事業を展開中。目標は群馬で一番楽しく働ける会計事務所を作ること。
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