「仕組みづくり税理士」が教える会計事務所の業務効率化②


【編集部より】
業務をもっと効率的にしたい!と考える会計事務所は多いと思います。本稿では、「仕組みづくり税理士」として活躍する小林先生に業務効率化のコツについてご解説いただきました。
第1回は、概要とメインリストについて、第2回は、繰り返し用のトリガーリスト、顧問先別のトピックリストについて取り上げます。

トリガーリスト

繰り返し用のトリガーリストとは、メインリストを補完するためのサブリストです。

税理士事務所には「毎月1日に通帳の記帳を顧問先にお願いする」のように、定期的に繰り返すタスクが数多くあります。その中には「毎年10月10日にセーフティ共済の年払いを検討する」とか「毎年5月20日に事前確定届出給与の支払をアテンションする」のような、年に1回だけのタスクもあったりします。

これらを全てメインリストに入れていくと、そのタスクの数は膨大なものとなり、逆に全体を把握しづらくなってしまいます。そこで定期的なタスクに関しては、メインリストから外に出してしまうことが望ましいです。

トリガーリストにはタスクの作成予定日を期日として入れておき、二度手間にはなりますが期日が来たらメインリストへと転記する流れになります。

トリガーリストの例

トピックリスト

税理士事務所で私が最も扱いに難しくて悩んでいたもの。それは顧問先ごとの質問の処理をどうするかです。

月次資料の不明点には付箋を貼るルールになっていたのですが、スタッフが付けてくれた付箋はその人まで聞きに行かないと内容が分からなかったり、逆に会計ソフトの仕訳メモに書かれた質問は、どの月次資料とヒモが付いているか分からなかったりという問題を抱えていました。(クラウド会計ならBOX機能で解決できると思いますが)

顧問先に送った質問も「回答をもらっているのか」」「会計ソフトに反映が済んでいるのか」が整理されていないため、そのつど確認する必要があって多大な時間とストレスが生じていました。

これを解決してくれたのがトピックリストです。スタッフに全ての質問や不安な点をここに入力してもらうようにしました。顧問先への質問も「いつ送ったか」「どんな質問だったか」「どんな回答をもらったか」「会計ソフトに反映させたか」など、その顛末を全て反映させるようにしたのです。

トピックリストに上がっている未解決点に対応するだけで済むようになったため、私の生産性は飛躍的に上がりました。「ここまでやれば終わり!」と見えていることが、これほど精神的に楽にしてくれるとは思ってもいませんでした。

また、質問や疑問が可視化されたことで、スタッフも私の回答を参考にして同じように仕訳ができるようになりました。事務所全体の生産性が底上げされたと感じています。

トピックリストの例


おわりに

以上、2回にわたって、税理士事務所でのタスク管理について簡単にまとめてみました。

それでは、なぜこのように有用であるタスク管理が、税理士事務所において導入が進まないのか。ある寓話をお伝えすることで、この稿を締めさせていただきたいと思います。

木こりのジレンマ

ある木こりが一生懸命に木を切っている。通りがかった旅人がその様子を眺めていた。

木こりが斧を振るう勢いはいいものの、なかなか木は切れていかない。よく見ると斧が歯こぼれをしているようなので、旅人は言った。

「斧を研いだほうがいいのでは?」

すると、木こりは言った。

「わかってはいるんだけどね。木を切るのに忙しくて、それどころじゃないよ」

【プロフィール】
小林 雄気(こばやし・ゆうき)

税理士・社会保険労務士

1972年神戸市生まれ。関西大学経済学部卒業。平成16年税理士試験合格。平成17年社会保険労務士試験合格。日商簿記1級・建設業経理士1級・FP技能士1級・ビジネス実務法務検定2級・情報セキュリティアドミニストレータ
税理士事務所勤務を経て、平成21年に独立開業。
事務所拡大を目指すも失敗。その過程で習得したタスク管理やITツールの利用法を伝授することで、全国の税理士さんたちの生産性アップを目指して活動中。

Xアカウント:@zeimu_nagoya
事務所サイト:https://zeimu.nagoya

第1回はこちら


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