「仕組みづくり税理士」が教える会計事務所の業務効率化①


【編集部より】
業務をもっと効率的にしたい!と考える会計事務所は多いと思います。本稿では、「仕組みづくり税理士」として活躍する小林先生に業務効率化のコツについてご解説いただきました。
第1回は、概要とメインリストについて、第2回は、繰り返し用のトリガーリスト、顧問先別のトピックリストについて取り上げます。

はじめに

ここ数年、私はX(旧Twitter)にて「仕組みづくり税理士」の肩書きを使って、作成したツールや税務会計ソフトのチョイテクを公開することで、日本全国の税理士さんたちのお役に立つための活動をしています。

その流れで「事務所を見学させてください」「工夫を見せて欲しいです」と定期的に声を掛けられるようになり、税理士さんたちのお困りごとをヒアリングする機会が増えてきました。

税理士さんたちのお困りごとの第1位は「業務の効率化が進まないこと」です。もちろん、仕組みづくり税理士に相談しているのですから「税務のここが分からないので教えて欲しい」なんて相談が出てこないのは当たり前ですけどね。

どの税理士さんも、顧問先は順調に増えているにも関わらず、マンパワーが不足して自分の業務だけが増えていくツライ状況に陥ってしまっています。

それでは、私に相談したら「その悩みがウソのように消えるのか?」と聞かれると、私は魔法使いではないので「ムーリー」としか答えることができません。

タスク管理の効用

魔法を使う代わりに、私がお伝えしていることがタスク管理のやり方です。

人間の脳というものはコンピュータと違って、同時にいくつものことを処理することができません。脳の中でそのつど切り替えながら処理をしています。ひっきりなしに情報が飛び交う税理士事務所においては、切り替える回数がとんでもなく多くなり、脳に大変な負荷がかかります。

そこでタスク管理システムを第2の脳として活用します。情報を外部にいったん預けてしまうことで、目の前のタスクに専念できるようになります。業務の効率化を考える前に、まずは自分自身の効率化から初めてみてはいかがでしょうか。

税理士事務所に必要な3つのリスト

税理士事務所において、私は次の3つの性格が異なるリストを準備すべきだと考えています。

  1. タスクを管理するためのメインリスト
  2. 繰り返し用のトリガーリスト
  3. 顧問先別のトピックリスト

メインリスト

タスクを管理するためのメインリストとは、その名のとおり、日々生じるタスクを入れていくためのリストです。手帳にタスクをつど書き起こして、終わったら斜線で消していく管理方法と基本は全く同じです。

月次や決算、給与計算のような定番業務だけで無く、届出書や事業計画書の作成といった臨時的な業務もここに集まってきます。このように発生したタスクをどんどん追加していくためのリストのことは、オープンリストと呼ばれています。蓋の開いた箱をイメージしていただけるといいでしょうか。

オープンリストの例

オープンリストには、ここを見ることで全てのタスクが把握できる便利さがありますが、あまりにも量が多すぎるため、実際にタスクをこなしていくときに、どこから手を付けるべきか迷ってしまう問題も出てきます。

また、割り込みタスクの処理をどうするかの問題もあります。顧問先からパッとお願いされたタスクがあると、先に手を付けないといけない気がしませんか。1つだけならまだしも、新しいタスクが次々にやってきてしまって、しっちゃかめっちゃかになった経験は皆さんもあろうかと思います。

そこで出てくるのがクローズリストです。「これは明日やるタスク」「こっちはAさんが担当するタスク」のように、タスクにラベルを付けることでピックアップされたリストのことをいいます。

クローズドリストの例(私が担当のものだけ)

タスクを今日やるものだけに絞り込んでしまえば、優先順位をつけることは簡単です。タスクの開始時刻も設定してやれば、まさに大人の時間割表のできあがりです。

割り込みタスクがやってきても今日の時間割表にねじ込むのではなく、明日の時間割表にセットしてしまえば安心して先送りができます。

アイビーリーメソッド

ちなみにクローズリストの効用の例として、20世紀の始めにコンサルタントのアイビー・リーが提案した「アイビーリーメソッド」と呼ばれるものがあります。

紙に「明日しなければならないこと」を6つメモして、重要と思う順に1から6までの番号を振ります。翌日はそのメモに従って仕事を進めますが、こなせなかったものも含めて6つを新たにメモして、また翌日にメモに従って仕事をするだけの単純な方法です。

ですが、このメソッドを使って会社の生産性を劇的に向上させたことで、アイビー・リーは現在の価値で5,000万円相当の報酬を得たと言われています。

大人の時間割表を作ることで目の前のタスクに集中できるようになれば、5,000万円とまではいかなくても、その効果は何百万円に匹敵するかもしれませんよ。

時間割表の例

次回は残る2つの「トリガーリスト」と「トピックリスト」についてご説明いたします。

【プロフィール】
小林 雄気(こばやし・ゆうき)

税理士・社会保険労務士
1972年神戸市生まれ。関西大学経済学部卒業。平成16年税理士試験合格。平成17年社会保険労務士試験合格。
日商簿記1級・建設業経理士1級・FP技能士1級・ビジネス実務法務検定2級・情報セキュリティアドミニストレータ
税理士事務所勤務を経て、平成21年に独立開業。
事務所拡大を目指すも失敗。その過程で習得したタスク管理やITツールの利用法を伝授することで、全国の税理士さんたちの生産性アップを目指して活動中。

Xアカウント:@zeimu_nagoya
事務所サイト:https://zeimu.nagoya


関連記事

【広告企画】会計大学院(アカウンティングスクール)12校の魅力を探る!

重版出来✨『わかる! 使える! うまくいく! 内部監査 現場の教科書』

【広告のご案内】掲載要領(PDF資料)

ページ上部へ戻る