【簿記論】税理士試験・合格発表までの1ヵ月をどう勉強する?


【編集部より】
きたる11月30日(木)に税理士試験の合格発表が予定されています。今年度、簿記論を受験した人の中には、合格発表までなかなか勉強に集中できない状況にあるかもしれません。また、税理士試験の受験勉強においては「年内の基礎固め」が重要だとよく言われます。
そこで、合格発表1ヵ月前というこの時期に意識したい簿記論の勉強法を、渡邉圭先生(千葉商科大学准教授)にアドバイスいただきます!

渡邉圭(千葉商科大学准教授)

今の時期の受験生は立場がさまざま

税理士試験の合格発表が近づいてきました。9月から簿記論をはじめて学習する受験生、新しい科目を学習し、合格発表の結果次第で再受験を検討する受験生など、立場によって学習方法が異なります。

そこで、本記事では初学者と経験者にタイプを分けて合格発表までの学習方法についてアドバイスをします。皆さんの学習の参考になれば幸いです。

初学者】今年9月から学習スタートした人へ

今年9月から学習を始めた受験生の場合、出題範囲のうち「基礎論点」を中心に学習していると思います。基礎論点は主に「個別問題」と「総合問題」に分けることができ、両者の学習目的は異なります。

本試験では学習した内容が総合的に出題されます。そのため、出題形式別に問題のまとめ方など解答するためのアプローチ方法(アウトプット)を決める必要があります。また、アウトプットを正確に行うためにはインプットの学習が不可欠です。

個別問題はインプットの学習に適しており、「基盤となる知識」をつくりあげるための問題です。総合問題は個別問題で学習した内容を整理して、正確に解答(アウトプット)できるかを確認したいときに適した問題です。

本支店会計を例にすると、個別問題では仕訳を中心に解答する問題が出題されます。しかし、総合問題になると、仕訳、T勘定、仮計算など、解答までのアプローチ方法があります。

そこで、初学者の受験生は、個別問題・総合問題を各論点の理解度とまとめ方を学習し、解答までのアプローチ方法を確立していきましょう。
私の場合は、総合問題はいわゆる仮計算表(大原専門学校で学んだため)を使い、売価還元法や退職給付の問題はT勘定でまとめて解答しています。

【経験者】自己採点でボーダーライン付近 or 超えている人へ

今年度の本試験を受験し、自己採点した結果、各専門学校が公表しているボーダーラインを超えている受験生は合格発表まで次回受験する科目の学習をそのまま進めていきましょう。

仮に合格発表をうけて、再受験+初受験科目の学習になる場合でも、再受験科目は1月から応用問題集で復習を行い、その後、模擬試験問題などで演習をしてください。

簿記論は理論学習がないため、財務諸表論と比べて税法科目と組み合わせて学習しやすいと思います。

【経験者】自己採点でボーダーラインを下回っている人へ

ボーダーラインより5〜10点程度、下回った受験生は、合格発表までの1ヵ月の間で、簿記論の個別問題集や応用問題集1冊を目安に、問題演習をしてください。解答へのアプローチ方法について改善点がないか、今のうちに検討しましょう。

それに加えて、ケアレスミス対策も合格のためには大切です。下記の①~④のうち、自分がどの場面でミスが多いかを分析して弱点を把握します。

ルーズリーフなどに①~④の項目を記入して、具体的なケアレスミスを箇条書きでメモしておくとよいでしょう。さらに、問題を演習する時には、これらのケアレスミスを頭の中で復唱してから解くと効果的です。

自分が得意と思う論点ほど、ケアレスミスを引き起こしやすいため、読み取った問題の解釈が合っているかを再確認するなどの対策が必要です。

<ケアレスミスのメモ例>
① 問題の読み間違い :ソフトウェアの償却年数    
② メモ用紙の記入ミス:退職給付でのT勘定の金額記入ミス
③ 電卓の誤入力による計算ミス:表面利子率と実効利子率の誤入力
④ 解答用紙への誤記入:解答欄の埋め間違え

問題の読み間違い

問題の読み間違いをする要因は、問題を解くスピードを上げたため、読み取りが不十分の場合、問題文の主張と異なる解釈をしてしまった場合などがあげられます。

これらのケアレスミスは「自分の考え方が正しい」・「得意な問題だから合っているはず」と思いながら問題を解いていくことが多いため、本試験でミスに気が付かないことがあります。

そのため、解いている論点について最初から問題文を読み直し確認することでケアレスミスを防止することができます。税理士試験の試験時間は2時間であり、試験時間内に振り返る時間を確保することは難しいです。

しかし、今の時期であれば、減点を加点に変えるための振り返る時間もとれるので、ぜひ普段から心がけて学習しましょう。

②メモ用紙の記入ミス(金額など)

メモ用紙の記入ミスは、例えばT勘定に金額をメモする際に、貸借反対に記入してしまう場合、金額の誤記入などがあげられます。

このようなミスも間違いに気がつかないことがあるので、メモの内容に誤りがないかはしっかり確認する必要があります。

③電卓の誤入力による計算ミス

電卓の誤入力による計算ミスは、問題文の金額・数値の読み取りミスで間違える場合、電卓への打ち間違えの場合などがあげられます。入力の再確認だけでなく、問題文に記載されている金額・数値を正しく読み取れているかも合わせて確認する必要があります。

④解答用紙への誤記入

解答用紙への誤記入は、例えば「121,000円」と記入するところを「112,000円」と誤って書いてしてしまう場合があげられます。どのケアレスミスもそうですが、これらの引き金は受験生の油断、注意力などの他に疲労など、受験生の体力的・精神的な要因からも起こります。

ボーダーラインよりも5~10点以上下回った受験生は、初学者と同じように個別問題と総合問題を解いて理解を深めると同時に、正確に解答できる手法を確立していきましょう。

弱点を発見して課題を解決するスキル

税理士試験の学習は長期かつ膨大な勉強量を要します。学生には日頃から、「苦手あるいは間違った論点を発見して、正答できるようになるための学習」を意識するよう伝えています。

学習量が多いゆえに、自分の課題を見つけて、それを解決するような勉強方法を取り組むことで、効率よく学習を進めることができます。

点数が伸びないということは、まだ伸ばすことができるとも考えられます。点数が伸びない原因を分析して、それを解決することで、さらに知識を深めることができるのです。

一方で、毎回模試で高得点を取っているのに本試験で合格できない受験生もいます。重要なのは自分のレベルを的確に把握して、それに対応した学習方法を行うことです。

持続的に学習を進めるために

合格体験記などを読んで合格者の勉強方法を真似することは悪いことではありませんが、そのまま取り入れるより、それを自身に合うようアレンジしたほうが持続的に学習を進めることができます。

合格発表まで残り約1ヵ月となりました。発表後、すぐに行動できるよう、今後の学習計画を検討しましょう。

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)

千葉商科大学准教授。基盤教育機構・瑞穂会に所属。
2022年3月、千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了、学位取得(政策博士)。
瑞穂会では千葉商科大学学生を対象にした日商簿記検定3級から1級講座、税理士試験講座の運営および学生指導に従事し、2023年6月現在、日商簿記検定1級合格者194名(累計)、税理士試験簿記論合格者59名(累計)・財務諸表論合格者39名(累計)の輩出に貢献している。


関連記事

ページ上部へ戻る