受験生が知っておきたい!税理士登録のための実務経験の積み上げ計算とは?


【編集部より】
来月11月30日(木)に2023年度税理士試験の合格発表を控え、結果によって税理士登録の手続きを進める人もいるのではないでしょうか。また、現役受験生も、登録に関する情報をなんとなくでも知っておくと、実際に手続きするときにスムーズに進められるはず。何より、将来を考えることは勉強のモチベーションアップにもなりますね。
そこで、2021年春に税理士登録し、今年独立開業した定岡佳代先生に、登録に関する当時のエピソードをイラストを交えてご紹介いただきました。実務経験の積み上げ計算については、働きながらの受験生は今から必見です!

税理士試験受験生のみなさん、今年は猛暑の中での受験、本当にお疲れ様でした。今年の試験を最後に、晴れて税理士試験を卒業される方もいらっしゃるでしょう。税理士試験に合格し有資格者になると、いよいよ税理士となる日が近づいてきます。

今まで試験勉強を続けてきて、ようやく合格しホッとしたのも束の間、「税理士になるには何をすればいいんだっけ・・?」と、次のステージへ進むための準備に忙しい日々が始まります。

私がかつてそうだったのですが、登録準備に関してはいったい何から始めればよいのか、最初はまったくわかりませんでした。手探りで情報を集める中、既に税理士登録している方から得られる情報は大変貴重でした。

私は2人の息子を育てながら、約10年かけて税理士になりました。2020年3月に大学院修了を経て、同年の秋に科目免除通知が届いたのを機に登録準備をスタートし、その翌年2021年の春に税理士登録しました。

受験勉強・大学院通学と並行し、育児と両立しながら実務経験を積むために、当時は主に時間の融通が利くパート勤務を選んでいました

今回は、実務経験を積み重ねた方が、税理士登録をするためにぜひ知っておいてほしい情報を、私の実体験をもとにお話させていただきます。

税理士有資格者と税理士の違い

税理士試験に合格し税理士になる資格を得た方は、「税理士有資格者」と呼ばれます。が、この時点ではまだ「税理士」ではありません。

税理士とは、「各地区の税理士会へ所定の書類を提出して登録申請し、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録された者」のことをいいます。

(参考)国税庁ホームページ「税理士の登録」

税理士として登録するには、試験に合格すること等で得られる「資格」に加え、会計事務所等で数年勤務したという「実務経験」が必要です(弁護士や公認会計士であることで税理士有資格者となった者等はこの限りではありません)。

そして、これらの要件をクリアしていることを証する書類を知ることが、税理士登録への初めの一歩となります。

登録に必要な提出書類

ここで、登録に必要な提出書類等を下記に羅列してみましょう。

(参考)日本税理士会連合会ホームページ「登録に必要な提出書類等」

【1】税理士登録申請書(第1号様式)
【2】登録免許税領収証書(6万円)
【3】登録手数料(5万円)
【4】写真 3枚
【5】本籍の記載のある世帯全員の住民票の写し
【6】身分証明書(本籍地の市区町村が発行したもの)
【7】資格を証する書類(原本との照合確認を受ける)
【8】履歴書(第3号様式)
【9】誓約書(第4号様式)
【10】税理士会会長宛の誓約書
【11】直近2年分の確定申告書のコピー
【12】はがき(日本税理士会連合会所定のもの)
13】在職証明書(第2号様式)
【14】在職証明書に係る印鑑登録証明書
【15】源泉徴収票又は確定申告書のコピー
【16】税理士事務所(税理士法人)と会計法人の関係について
【17】職務概要説明書
【18】勤務時間の積上げ計算書
【19】大学院通学状況説明書
【20】税理士(法人)事務所の設置に関する書類
【21】(勤務している又は勤務していた)会社の履歴事項全部証明書
【22】無職期間の事情説明書
【23】退職理由説明書
【24】業務執行に関する誓約書
【25】退職同意書
【26】旧姓使用承認申請書
【27】戸籍抄本又は個人事項証明書
【28】税理士法人の社員資格証明申請書
【29】社員税理士・所属税理士同意書
【30】税理士法人の定款(案)の写し
【31】登録抹消した理由及び再登録する理由書
【32】早期退職の理由説明

スマホで読んでいる方は、スクロールしながら提出書類の多さにさぞ面食らったことでしょう。しかも、括弧書きで「〇万円」という金額があるのが気になりますよね・・。

登録に必要な費用

まず、税理士登録するには、それなりの費用がかかります。

上記提出書類のうち、【2】登録免許税と【3】登録手数料で計11万円、これ以外に税理士会への入会金・年会費で最低10万円程度かかります。税理士登録をするには、合計20~30万円を用意しておく必要があることを心得ておきましょう。

なお、登録時に勤務税理士となる場合には、費用の一部を登録予定の事務所で負担していただける場合もありますので、相談してみるのもよいでしょう。

実務経験に関する留意事項

受験生のみなさんの中には、「税理士登録に必要な実務経験は2年」というのを聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

この「実務経験2年」については、以下の事項に留意しておきましょう。

正社員として週5日、一日あたり7時間以上勤務している場合に、通算で2年勤務していた場合の勤務期間をいいます。

時短勤務やパート勤務をしている場合は、勤務期間を時間単位で積み上げて集計します。そのため、正社員の勤務期間2年と同じ時間数になるためには、必要な勤務期間が2年よりもっと長くなります。

・在籍していた勤務先は必ずしも一箇所である必要はなく、複数の勤務先での勤務期間を合算することも認められます。

・実務経験として認められる仕事内容は、会計事務所での税理士補助業務など、所定の業種・業務に限定されます。

・実務経験は連続して2年間である必要はなく、途中に休職期間や他業種に従事する期間があっても、通算で2年間であれば認められます。

・税理士試験の受験を開始する前に勤務していた期間も認められます。

勤務時間の積み上げ計算

パート勤務など時間単位で勤務する場合は、勤務していた時間を細かく積み上げて集計し、正社員の2年間に相当する勤務期間であることを証明する必要があります。この集計・証明をするための書類が、【18】「勤務時間の積上げ計算書」です。

勤務時間の積み上げ計算書には、確認書類の添付も必要となります。この確認書類とは具体的に、タイムカードの写し・出勤簿の写し・給与支払台帳などです。

月ごとに「〇月〇日、〇時から〇時まで勤務」ということがわかり、集計した月間勤務時間と時給を掛け合わせた金額が、給与支払台帳などの月額給与と一致していれば十分な証明になります。これが一致していない場合は登録申請後に税理士会から問い合わせがくる可能性が高いため、厳密に集計した計算書の数字と、確認書類の示す数字は必ず一致させるようにしましょう。

私の場合は幸い、登録の数年前に退職していた事務所でも十分な資料をご提供くださり助かりました。ただ、当時から積み上げ計算のことを意識して、必要な資料を用意・保存していただくよう伝えておいた方がベターだったと、今だからこそ思います。

また、確認書類を用意してくださる事務所側は、通常の業務の傍ら時間を作って資料を用意してくださるわけですので、十分な御礼をすることも大切と思います。私の場合、登録準備をした2020年はコロナ禍が始まった頃で、直接事務所に赴くことが難しい状況であったため、電話と郵送によって資料作成をお願いしました。無事に資料をそろえてくださったときには大変安堵し、御礼にとっておきの菓子折りをお贈りしたのを覚えています(笑)。

なお、正社員勤務の方でも、【13】「在職証明書(第2号様式)」、【14】「在職証明書に係る印鑑登録証明書」、【17】「職務概要説明書」は勤務先に記入していただく必要がありますので、勤務状況を証明してくださる事務所とは良好な関係を築いておきましょう。

まとめ

税理士登録をするための情報を得るのは、有資格者になってからでも決して遅くはありません。しかし、いざ準備段階になると、経験者が周りにいないとわからないことも多いため、一から調べるとなると大変なこともあります。有資格者となった方には、一日でも早く税理士になって、次のステージを経験してみてほしいと思っております。

この記事が、これから税理士登録をしようと考えている方にとって少しでも参考になればうれしいです。

<著者紹介>

定岡 佳代(さだおか かよ)

税理士
兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。
関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。
硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。

<オススメ書籍>

教えてみき先生! 税法論文ってどう書くの?
本書巻末の座談会「大学院修了者に聞く! 修士論文はどうやって書いた?」には、定岡佳代先生の体験談も掲載されています。大学院ルートを検討中の方はぜひご覧ください。


関連記事

ページ上部へ戻る